また、少女は黒に出逢う …1
―――――――――――――――――――――――KOTONE SIDE
……なんだろう。
この眠気は。
何だかずっとこうしてこのまどろみの中にいたい……。
「ん……」
身体を起こす。
「ここは……」
なんだろう。物凄く高いところにいる気がする。
見ると、どうやら私のいるところは、かなりの高度で、かつ小さい密室であるらしい。
「何だろう……ここ……」
向かい合わせの小さな席に、横や前後に外の見える窓。
「ここは……」
観覧車の部屋の内の一つ……だ。
「どうして……こんなところに……」
私は確か、浅滅さんに会って、龍ヶ峰市に戻ったはず……。
「でも……ここは……」
竜ヶ峰市の中央部。
個々の自治区と化している北、南、西、東の四区が共同で管理す中央区の、龍ヶ峰市唯一のテーマパーク、ロストランドの目玉アトラクション、大観覧車だ。
どうして私はこんなところに……。
確か“街”との境界である教会に行って、そのあと……。
「うう……」
思い出せない。
覚えのない場所に居るということは……私は敵に連れ去られたのだろうか……。
そう思いながら、赤い雲の浮かぶ黒い空を見上げていると、視界に一つ、黒い物が入った。
「あれは……」
シルクハット……。
それも、真っ黒な。
でもここは、ほとんど観覧車の頂上近くに値している。
こんな高さに、ふよふよとただのシルクハットが浮いているはずがない。