ただ少年は辛みも喰わず …4
ここにいる生き残りは見た目はかなり武装しているように見える。
鈴に全員の紹介をしてもらった時も、ほぼ全員が装備していた。
ウージー、M何とか、俺と同じベレッタやデザートイーグルなど、映画で見たような銃や武器ばかりだった。
それもそうだ。ここに隠れている人々の武装は、3つを除いてすべてが精巧に作られたモデルガンや模造刀。
だが、それらをいくらちらつかせたところで、“恐鬼”どもは臆しない。
ならば、それらの武器は何に対して脅威を発揮するのか。
『すなわち、モデルガンや模造刀を前にして勘違いするような者とは……』
「……人間、だな」
その通りだ。
最悪こうなるだろうとは考えていた。
すべての人間が等しくお互いを尊重しながら戦えるはずがない。
つまり、こうだ。
今ここに立てこもっている人々が今最も恐怖しているのは、化物ではなく、他の人間に対して略奪行為を行っている、人間。
いわゆる悪知恵の働く、不良や暴走族に相当する人々だ。
立てこもっている人の話だと、彼らはこの状況になってすぐに武器を手に入れ、法や規則に縛られない環境を利用して化け物や生き残りに向かって暴虐の限りを尽くした。らしい。
『まあ、定番か』
「ああ。……定番だな。むしろ、いつかこうなるとは思っていた」
むしろ、戌海に逢わなければ俺だって独りで暴れまわる狂人と化していたに違いない。
琴瑟調和……か。
俺にとって、その能力は凶となるか、吉となるか……。