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ただ少年は辛みも喰わず …1
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夢を見た。
暗く、暗く、深い場所で一人、膝を抱いて座っている夢。
右も左も真っ暗で何も見えない。
手を伸ばしても、何も掴むことができない。
「で? これから何をするの?」
声が聞こえた。
前を見ると、さらっと髪を揺らしてこちらを見る、戌海琴音。
「……お前か」
の姿をした、異常な“恐鬼”。
「そう、私でーす。久しぶりだね、響輝君、偽物です。紛い物の被れ者でーす」
“偽魔女”がこちらを見てにやりと笑う。
しかも既に偽物であると大言壮語してやがる。
「でもさ。私も思うんだけど、どうせ死ぬなら今死んだらどうなの?」
「…………」
しかしなあ。
何だか、死ぬ気も最近薄れがちなんだよな。
別に、生きてても死んでてもいいかな、と。
「はっきりしてよ、ほんとにさ。私も面倒なんだよね。響輝君が何を恐怖しているか、最近分かんないんだよ」
分からなくていい。分からなくていい。
「いや、私もターゲットを仕留めてこその“恐鬼”なわけだし」
何言ってんだこいつ。
人の夢にまで出てきて何を吹っかけてきやがんだ。