かくて少年は破滅に向かう …5
「ふざけるなッ!!」
ソウ、かすレルヨウナ声で、今一度、祗園鈴が叫ンダ。
「リン……俺ハ、フザケルナンテコト……」
何故お前マデ現レル。
お前モ俺ヲ否定スルノカ。
「さっきそこの“魔弾”が言っていた事を聞いていなかったのですか! 辛いのはあなただけじゃない! 皆、みんなが全てを投げ出して、自由になりたいと思っている!」
「御託ハ、聞キ飽キタ……」
「でもッ!」
ソコデ鈴ハ、どんっ、と鎌ノ柄ヲ地面ニ叩キツケタ。
「でも、あなたが今、ここで諦めたらどうするんです!? 一体誰が“鍵”を……戌海琴音を救うというんですか!!」
ナニヲ……言ウ……
戌海ハ、今サッキ、“支配者”ニ首ヲ……。
「この……強情者がぁぁぁぁ!!」
「グハッ!」
瞬時ニ、距離ヲ詰メタ、鈴ノ拳ガ、大鎌ノ峰ガ、腹ニ当タル。
「あなたはっ!」
がんっ
「どうしてっ! そんなにもっ!」
がすっ ばきっ
「歪んで不信でめんどくさくて!」
「グッウウ……」
何度モ殴ラレテイルノニ、身体ノ、ドコニモ痛ミヲ感ジナイ。
「冷静になって、よく考えなおしてみてください! “支配者”にとっての勝利は!」
邪魔者ヲ消シ、戌海ノ……“力”ヲ取リ込ムコト……
「私達にとっての勝利は!」
戌海ヲ奪還シ、街ヲ救済スルコト……
「では、“支配者”の言う“試合”とは何ですかッ!」
「ソレラガ、戦ッテ勝敗ヲ……」
「では、後半戦とは……はあ、何です、はあっ……か……」
後半戦……。
……………………………………マサカ……。
「……そう、です。試合はまだ、終わっていない」
「あの、戌海の折殺劇は……俺を錯乱させるための……茶番……?」
「……その、通りです……。いわば、集団幻覚のようなもの。心の揺らいでいた、隙間。“支配者”は響さんの隙間につけ込んだ」
……罠? 間接的に、いやむしろ直接的に、俺達側が自滅するように……。
「わかりましたか?」
「……ああ」
だが、この、身体……。
“漆黒化”という現象で真っ黒な炭のようになってしまった俺の身体は……。
「現時点では、漆黒化を解く方法は、解っていない」
浅滅がよろけながら言った。
「そもそも、漆黒化が途中で止まっているの光景自体、初めて見た。どれだけイレギュラーなのだ、お前は」
「……知るかよ」
そう答えながら、俺は、礼を言おうと鈴の方を向いた。
……のだが。
「……ぐすっ……、ううっ……」
「……」
「うう……ぐすん、…………」
「…………」
簡単に言おう。
“恐鬼”との歴戦の猛者、大鎌使いの少女、祗園鈴は、今、俺の目の前で、嗚咽をもらしながら、
……泣いていた。