かくて少年は破滅に向かう …4
やっぱり、どんな人でも、孤独は辛いものです。
「巽野!!」
浅滅がすぐとなりでさけんでいる。
うる……さい。
「ああ……いつ見ても素晴らしいなぁ、人が堕ちる瞬間は。……ふふははは、“狩り人”浅滅燎次、“はぐれ者”巽野響輝。もっと私を楽しませてくれ!」
“支配者”の、ちのそこからひびくような、わらいごえがうるさい。
くびから、せんけつをほとばしらせている戌海をひきずりながら、やつは、ろうかのかどからすがたをけした。
「待……て」
からだが、うごかない。
ふとしせんをしたにむけると、俺のりょううでが、すみのように、まっくろにそまっていくのが、みえた。
「不味い、巽野! そのまま“漆黒化”が続けば人でなくなってしまう。早く抵抗しろ!」
ていこう……?
おかしなことをいう。
俺は戌海をころしたあいつを、殺さないといけないんだ。いますぐ、おいかけないと……。
おいかけ……な……いと。
……あれ?
からだのぜんぶが、まっくろになっている。からだが、うごかない。
「うごか、な……イ、イいイイ、イイいイイぃイいイ……」
「チッ……堕ちたか。……戌海琴音には悪いが、こいつはここで狩らせてもらう……」
チャキッ
「アサケシ……コレハ……」
「“漆黒化”。恐鬼や鍵の存在を知る人間が、感情を暴走させると起こる世界の自浄作用だ」
俺は……ヤはリ、マキこマレタ、ただのニンゲンに、スギなイのカ……。
所詮、タダのブガいシャなのカ……。
「そうだ。実際はそうなのかもな。だが、お前は今までこの死んだ街にいながら生きてきたじゃないか! 何故今になって暴走する!」
ナゼ……?
ソレは、戌海ガ、殺サレたカラ。モウ、俺ガ生キル必要がナイかラ。
“街”が歴史カラ消エ、ソこにスンでいタ人々は、外ノ人の記憶カラは『いなかった』コトにナッテイルのダロウ? 浅滅、お前ガ、ソウ言ったンダ。
ジャア、母さんのノ記憶カラモ、俺の存在ハ、消エテ亡くナッテイルノダ。
……つまり、モウ俺に帰ル場所は、無い。
もう何モ、何モカも……!
「だから、暴走すると? ふざけんな!! よく見れば分かったはずだ。あの戌海琴音は……」
「嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
モウ誰モ俺ノ味方ナドイナイ否モトカラ居ナカッタノカモ知レナイ
タダ俺ダッテ普通ニ生キテイタカッタタダソレダケダッタノニ
「止まれ! 巽野、もう止めろ。それ以上まで踏み込めば、本当にお前を斃さないといけなくなる!」
嗚呼、視界ガ真ッ暗ニ染マッテ行ク……
モウ、堕チヨウ。モウ、還ロウ。
モウコンナ世界ハイヤダ。
独リボッチハ嫌ダ。
ダカラ、俺ハ――――――――――――――――
「甘ったれるっ、なああああああああああ!!!」
「なっ!?」
「ニィッ!?」
酷く、乱暴に。
大仰に、乱雑に。
大胆にも、階下から天井をぶち破るという手法を取り、俺の目の前に現れたのは、
「甘ったれないで下さい!! ……いや、ふざけるな!!」
よろけながら大鎌を携え、体中を瓦礫と血に染めた、
「……祗園、鈴……」
だった。
ウイルスが入り込み、深刻なエラーが発生しました。
でも、ウイルスには絶対、ワクチンがあるものなのですよ。