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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
六章 Near rulernism~そして支配者はほくそ笑む~                                         
109/261

いかに少女が辛くとも …5

 怒号のした方を振り向くと、そこには一人の男が立っていた。


「どけっつってんだろうが! 死にてえのか!」

 黒っぽい緑っぽい……ロングコートを着ているその男は、腰だめにショット(・・・・)ガン(・・)を構えていた。


 猟銃、軍において近接銃撃戦で最強とも言えるショットガンを持ってんのかよ。

 逆らったら俺も蜂の巣だ。


 そう考え、急いで男の方へ駆け、後ろに回る。


「くたばれ!!」

 方向転換してこちらに突っ込んでくる“それ”に向かい、男が引き金を引いた。


「ぐあっ」

 耳も押さえてないのに近距離でショットガンの銃声を聞いてしまった。

 くそっ。音が聞こえない。


 続いて、銃の側面のレバーを引いた男が、減速した“それ”に向かって再び銃を放つ。


「っ」

 今度は耳を塞いでいたが、しかし、この男、手に入れたばかりであろうこんな凶器をいとも簡単に使いこなしているとは……。

 何者だ?


 二回、何十個もの鉛玉に引き裂かれた“それ”は飛んでくる勢いのまま、俺と男のすぐ横を吹っ飛んで行き、後ろの壁にぐちゃっと嫌な音を立てて激突した。


「…………」

 なんとも荒々しい戦い方だ。

 慣れてるなんてもんじゃないぞ。この男、完全に要領を分かってやがる。


「おい、ガキ」

「何だ」

 ショットガンを(今見れば銃身と銃底を切り落としてあった)懐にしまったらしい男がこちらを振り向いた。

 かなりの長身である。


「お前、“逸れ者”か?」

「な……」

 何……!?


 俺はとっさに数歩分退いた。


 足が血だまりを踏む。


 振り向くと、さっき斃された恐鬼の遺骸が見えた。

 その瞬間、戦慄する。


 こいつ、“街”が閉ざされる前に俺が見た、空を飛ぶ深海魚だ。

 まだいたのかこいつ。

 お互い不憫だな、本当に。


 と、俺が勝手な同情を死んだ“深海魚”に与えていると、男がいら立ったように言った。

「おい、お前、戌海琴音の……今回の“鍵”の逸れ者だな」

「なんで……」

 こいつ、戌海のことを……。


 あいつは誰にも遭遇させずにこの街から逃がしたはずなのに。

 こいつ……。

「なぜ戌海のことを知っている!!」


 ……我ながら馬鹿で信じられない行為だったな。

 いや、俺は早く戌海の事を忘れたかった。だから、条件反射的に身体が動いたのだ。


「……ずいぶんとあの娘にご執心だな、クソ餓鬼」

「くっ……」

 なぜか頭に走った激情に、俺は懐のベレッタを男の眉間に当てていた。


 同時に、俺の腹にも男の持つショットガンの銃口が押し当てられている。


「どうした? 俺の予想では、今回の“鍵”の“逸れ者”はかなり性格の歪んだ奴だと思っていたんだが、熱血漢だったとはな」

「……違えよ」


 俺がベレッタを下ろすのと同時に、男もショットガンをしまった。


「あんたは何だ? この“街”に取り残された人……じゃないな」

「そうだ。俺はこの“街”に外から入ってきた」


 何……?

 この街に外から(・・・)入ってきただと?


 そんなこと、可能なはずは……。

「不可能じゃない。俺は“狩り人”だ。お前らとはまた違う存在だからな」

 そう言うと、男は廊下を歩きだした。


「この先に生き残って立てこもっていた人達が居る。手伝えクソ餓鬼。目的が同じなら文句は無い」

 ガキガキ言うな。俺にはちゃんと巽野という名前がある。


「そうか。俺は“狩り人”、浅滅燎次。以後、よろしく頼むぞ」

 男はそう言い、コートを翻した。

浅滅さん合流です。そろそろ佳境ですね。

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