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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
六章 Near rulernism~そして支配者はほくそ笑む~                                         
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いかに少女が辛くとも …4

 コンクリートで固められた地面を踏みしめ、階段を一段一段登っていく。

 一歩踏み出すたびに乾いた音が鳴る。


 ……良く考えると、ホラーアクションとかでよくある病院内での戦闘は、人間側にとってはかなり不利な条件が揃っているよな、などと考えてみる。

 リノリウムは底の堅い靴だと音が立つし、病院には曲がり角も多い上に、災害時の安全のためか、建物自体かなり頑丈で、なにより音がよく反響する。

 相手が積極的に攻めて来ないと、ホラー映画の主人公たちはどうしようもないのではだろうか。


 まあ、狙う側にとってはどうでもいいことか。


『しかし響輝よ。貴様、戌海が死ぬまでの時間とは言ったが、それは具体的にいつまでだ?』

「うっ……」


 そういえば。

 あること無い事言って逃れていたが、ここで突かれるか。しかし、結局のところ、人間が生きるのに理由なんて無いぜ?

『それも逃げの一手であろうが』

「うぐ……」


 最近のこいつは痛いところばかり突いてくるな、全く。


 などとくだらないことを考えながら、壁の階表示を見る。

 三階。その上は四階だが、確かここは七階まであるはずだ。


 そう思った時だった。

「くあっ……」

 再び、階段に反響して銃声が響いた。


 くそっ。騒音被害だ。

 しかし、相手が銃を持っていて、俺がその前に立って、はたして交渉など出来るのだろうか。

 仮に仲間を増やして、“支配者”や恐鬼どもに戦いを挑んだとして、だからなんなのだろう。

 俺はどうしてここにいる?


 戌海の代理? 否、それは他愛もないただの戯言だ。逃げ場の無い狂言でしかない。

 ……そうだ。俺は怖がっているのだ。

 昔も今も変わらない。復讐の炎が思考を焼き尽くし、それ以外のことを考えられなくなった。


 そして、その復讐が果たされた後には、その炎のあった空間にぽっかりと穴が空いた。

 炎は消え、後には冷たい風が吹き荒れるだけ。


 俺は人が怖いのだ。もしかすると、あの戌海の偽物以上に。

 ……そうだ。何故気付けなかったのか。

 いや、気付きたくなかったのだ。自らの手で封印していた。


 俺は冷静沈着を越えて冷酷無情の域に達しつつある人間だ。自覚している。

 人を寄せ付けないオーラを放って生きてきた。いや、むしろ死んできた。


 だが、本当は恋しかったのかもしれない。

 姉さんを失ってから、俺は両親にもどこかよそよそしく接するようになった。

 俺は、きっと怖かったのだ。


 化け物に対する恐怖よりも、それはずっと大きい。

 だからこそ、俺は恐鬼にとって異常でイレギュラーなのかもしれなかった。


「……いけないな。柄じゃない」

 何をいまさら考えているのだか。

 俺はそういうものは捨てたのだ。人とはかかわりたくない。

『それは自分を騙しているだけではないのか?』

「そうなのかもな」

 ……全く、こいつはいつもいつも……。

 だが、結局のところ、俺は後悔しているのだ。


 戌海を逃がしたことに。

 仮に再びあいつに会ったとしても、俺は何も言えないだろうな。


 ――六階にさしかかったときだった。


 ぴし……

「?」

 急に壁にひびが入った。

 なんだ? 地震なんか起こってな……。

『響輝! 上だ!』

「ッ!」

 その声にとっさに身体をかわすと、さっきまで俺が居た場所を突きぬけていく“何か”があった。


 何だ……?

 さすがに壁を破るような相手とは戦える自信がないぞ。


 そう思った時、開いていた非常口の向こう、七階の廊下の方から、叫び声が聞こえた。

「どけ! ガキが!」

 否、怒号だった。

 

短い(汗


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