The King and His 12 Servants(ザ キング アンド ヒズ トゥウェンティ サーヴァンツ)
「あれ、新章は?」と思った方もいるでしょう。この次の話からが新章です。この話は、次の将にもだいぶ関係してくる話だと思うので、そのあたり予想してしてみていただけると、面白いかもしれません。
オルグマーク。正式名称は「オルグマーク帝国」といい、「グラニム族」という岩にや炎に深く精通している戦闘民族が統治している。
魔物の中にも、吸血鬼や悪魔、グラニム族のように、知能が高く国家を持っているものも存在する。グラニム族はその中でも、特に好戦的な種族と知られている。
「………」
「どうされました?」
「グラニム族だから、もう少しやるかとは思ったんだけどね。」
僕たちの目の前に広がるのは、燃えて崩れゆくオルグマークの城と街。小1時間前の栄華を誇る姿はどこへやら。その姿は、見るも無残な、凄惨な光景だった。
「俺たちも行こうか、イヴ。みんなが気を使ってか、一番いい獲物は残してくれてるみたいだし。」
「はい。」
「その仮面……アビスキュラか。」
「仮面だけで気づくとは、俺たちも有名になったね。」
僕は人間の勇者としての立場もあるから、アビスキュラとして出るときは、顔は仮面で隠してある。
ちなみにアビスキュラの時の僕は、服の色が変わる以外に、額の左側に長い角が生え、背からは、ほかのアビスキュラたちにあるような翼が生えている。髪の毛も逆立ち気味になるから、仮面を外さない限り、ほとんど面影はないだろう。
「だがまさか、わしらが襲われることになろうとは。」
「まあ、君たちは俺たちにとっても脅威だったからね。アビスキュラは数が少ないし。」
アビスキュラは、僕がいろいろあって作り出したものたちだ。半分子供みたいなものだろう。目的のために利用していることに関しては罪悪感がないわけではないが、その代わり、できる限りのことはしているつもりだ。
「主様。」
「どうしたの?」
「幹部は、全員殲滅しました。」
「そっか。ありがとう。」
「なんと、うちの幹部が全滅とは。よもや…」
「イヴ一人でだよ。さすがだね。」
僕がそういうと、イヴは何も言わずそっぽを向いて一歩下がる。実際グラニムの幹部を一人で全滅させるのは至難の業で、僕も援軍を出すつもりだったから、もっと胸を張ってもいいんだけどな…
「では、死ぬ目に、一つ良いか?」
「イイよ。遺言か何か?」
「いや、わしが望むのは、お前さんのその仮面の下だ。」
「………イヴ」
「承知。」
僕が名前しか呼んでいないにもかかわらず、イヴはすぐに返事をしたのち、王がいる部屋の周りに外からは見えない結界を張る。
そして僕はそれに合わせて仮面を外し…
「………………そうか。賢者殿も大変であるな。表と裏から世界を見るなど、わしには到底思いつかぬ。して、その目的は?」
「王様なら、言わずもがなじゃない?」
「ハハハッ……じゃな。が、最後に置き土産はしていくとするかな?」
そういうと、王様は玉座の近くに隠してあったレバーを引く。
「…!」
「向こうから見ておるぞ、賢者殿。」
「全員防御態勢!くっ、『星霊結界・改』!!!!!」
僕は僕らアビスキュラにしか伝わらない脳波でこの国にいる全員に支持を飛ばしたのち、意識を集中し、半径10メートルの大結界を展開する。
そのおかげで、王が最後にはなった大爆発の影響は、アビスキュラは受けなかったようだ。まあ、もともとあらゆる攻撃に対する体制は強くしているから、あの程度ではかすり傷程度だろうけど。
「イヴ」
「はい、ここに。」
「うちの被害は?」
「全員の生体反応を検知しているので、おそらくないと思われます。この国も、後はないでしょう。確実に破壊しますか?」
「いや、別にここまで壊滅しているのなら、もう残しておいていいだろ。ログレスにもケンカを売っているんだ。もうじき、向こうの軍も来るはずさ。」
「主様。」
「どうしたの?ネフィラ。」
「北のほうからログレスの軍が。それも、だいぶ殺気立っているようで。」
「どういたしますか?最悪の場合は……」
「いや、大丈夫だ。まずまず、僕が何でこんなことやってるかは知ってるだろ?」
「はい。」
「みんな、撤退だ。一人も欠けるなよ。襲われそうになったら言って…て、なんでもう襲われてるの⁉前でるなって言ったでしょ?わかった。すぐ行く。イヴ。」
「はい。後はお任せを。」
「ありがとう。頼んだよ。」
「貴公がこの国を滅ぼした首謀者か。」
どうやら、グラニム族はログレスに大分深くかみついたらしい。そのおかげか、ログレスの軍を率いているのは、ログレスの王であるプロメスだった。
「ほんと、俺たちも有名になったもんだね。グラニム族だけじゃなくて、ログレスのほうにまで知られてるって。カーミラ。前に出るなっていたでしょ?だからこうなるんだよ?」
「…でも……先に献花撃ったのは向こうから…だし…ヒック…」
「アビスキュラも魔物だ。ケンカを売ったものと、勝手に介入してきたもの。どちらも倒せるなら一石二鳥だろ?」
「……………………へぇ、そうか。自国の国民にしか優しくないんだね。カーミラ。けがは?」
「けがはしてないけど……」
「まあ、怖いよな。」
もともと気の強いカーミラがここまで弱気になるということは、プロメスは王家しか使えない魔法でも使ったのだろうか。僕は魔力量を視覚化した「覇気」を体の周りにまとわせ、プロメスたちを威嚇する。そしてそのまま手を掲げると、僕の周りに、すべてのアビスキュラが集結し、オーラを解き放つ。一人一人が、僕の半分程度の力を持った強者だ。アビスキュラは総勢12人。要は、ちょっと本気を出した僕が12人いるのと同義だ。
「今すぐ立ち去れ。これは警告だ。さもなくば、ここにいるアビスキュラ全員で迎撃する。」
僕の言葉に合わせ、後ろのイヴたちの放つ殺気とオーラが一層強くなるのを感じる。普段はそこまで仲良くないように見えるが、実際はとても仲がいい12人だ。1人でも傷つけられれば、傷つけた相手に対する恨みは深い。
「今のうちに逃げるなら、この子たちは俺がいさめてあげるよ。それとも、俺たちと全面戦争したい?いつでも受けてあげるけど。」
「っ……」
「王よ、ここは私に。」
そう言って前に進み出るのは、提督であるガヴォ・門政公爵だ。
「…」
「公爵…」
「100の大きな損失より、1の小さな損失です。王はお逃げn…」
「そのような茶番に、わが主は興味などない。今お前たちに求めているの質問に対する応答のみ。それとも、この哀れの男のような死者を増やすだけか?」
そういって、言葉を発するより早く門政公爵の首を斬るイヴ。停滞しているこの状況に、だいぶんイライラしているのだろう。本来、思い入れのある人を殺されれば、今のプロメスのように怒るのだろうが、あいにく、僕は慣れてしまった。もう、今更だ。
「………チっ。わかった。すまないな、門政公。貴様ら、この借り、必ず返すぞ!」
「返せるものなら、返してはいかがですか?」
「いつでもかかってこいやぁ!」
「こちらこそ、カーミラをいじめた罪は、その首一つでは足りませんよ。」
上から順番に、イヴ、カーミラ、ネフィラが、一国の王に対して啖呵を切る。ここら辺に関しては、主である僕に全く似ていないところだろう。
「撤退するぞ。覚えていろ。」
「こっちこそ覚えておいてね、ログレスの王様。僕らは、必要とあらば、敵にも味方にもなるから。」
どうでしたか?読んでいたらわかると思いますが、もちろんこの話は前の将とつながっているため、普通に前までの話に出てきた人物も出てきます。マチアスのチートぶりは、どちらかといえば、こっちのアビスキュラストーリーのほうがわかりやすいかも。実際今回の話でも、割と重要なことを簡単にやってのけてるし。
次からは本格的に新しい章に入るので、楽しみにしておいてください!
ちなみに、イヴたちアビスキュラを創ったというのは、DNAの合成的な感じだと考えていただけるとわかりやすいと思います。まあでも、人間(?)関係的には、マチアス的には「家族」、アビスキュラ12人的には「家族以上恋人未満」といったところです。
これからもよろしくお願いします。もしかしたら、イヴたちの画像も上げるかもしれません。