In Technomagia…(イン テクノマギア…)
というわけで、新しい章です。
今回、マチアスはどちらの面で動くことになるんでしょうか……
ログレスの一件から、約一か月。
僕はいろいろな街を行き来しながら、その近くにはびこる魔物を倒し、レイダの情報を集めながら旅をしていた。そして僕は今、レグレスの東隣にある国、テクノマギアへと赴いていた。
理由としてはいくつかあるけど、一つは面白い情報を入手したから。
もう一つは……
「あ!マチアスじゃん、久しぶり!!」
「久しぶり、ハナ。」
彼女はハナ・ゾリシィ。僕らが組んでいたパーティーの一員で、職業はアサシン。でも、アサシンのイメージと違って、普段はどこか抜けているというか、天真爛漫なんだよなぁ。
「今日はどうしてここに来たの?テクノマギアなんか、古代遺物売りに来るしかやることないのに。」
「君の古郷ここだろ?そんなこと言っていいの?」
「べつに~?」
テクノマギア。旧人類の残した遺産「古代遺物」を研究、解明することを生業としている「技師」たちが集う街で、これまでの古代遺物の研究成果のうち、およそ8.5割はこのテクノマギアで解明されたものだ。
そのおかげか、各地から有識者がよく集まる、「学問の国」として知られるうえ、この世界で唯一「技師」と「魔術師」、つまるところの、古代の産物と魔法が共存している国だ。そのため町は少しな不思議な感じで、自動車という地上を移動するための機械が、魔法で普通に空を飛んでいたりする。空中浮遊の魔法は割と習得が難しかった覚えがあるから、あらかじめ浮遊魔法のかかった自動車に乗るほうが、移動には楽なんだろう。
「あ、もしかして……学者さんと話しに来たの?」
「違うよ。」
「え~、じゃあなに?」
「一つは王様に会いに来たんだ。どうやら、ログレスの軍勢がアビスキュラに襲われたらしくて。門政公爵が討ち死にされたって。それで、アビスキュラを共に倒すための同盟を、学問の町として有名なテクノマギアと組もうってことになって。もしかしたらそれで、神出鬼没なアビスキュラに対する対抗策が見つかるかもって。」
まあ、対抗策が見つかったとして、僕が彼女らにそれを克服させてあげるだけなんだけど…
「なんか、オルグマークも、ほぼ壊滅まで追いやられたって話だったしねぇ。喧嘩吹っ掛けた相手はログレスなのに、言ってる間にアビスキュラに襲われるって、気の毒だね~。で、話し方的に、毛筆暗い理由がありそうだったけど。」
「うん。それが、この前ログレスの一件の後、もう一度レイダに会う機会があったんだけど…」
「へぇ~、どうだった?調子よさそうだった?」
「それはわからないよ。で、その時に言ってたんだけど、どうやらこのあたりの魔力が変に集結してきているみたいなことを言ってて。」
「…」
「しかもその近くにあるのは古代遺物の国テクノマギア。さっき様子を見てきたけど、もしかしたら魔王クラスが生まれるかも。」
「先に魔力消せないの?」
「魔物になったら、倒せば魔力は一緒に消滅するけど、先に消すのは難しいんだよね。何せ、形の決まっていない魔力だけの状態は、どんな形にも適応するからね。それを消滅させるためには、結局、この町を半壊させるぐらいの勢いの魔法を使わないといけない。それよりは、生まれてしまった魔王を速攻で倒して法が、まだいいかない。幸いテクノギアは魔法以外に、古代遺物の武器があるし。レーザー砲とか。」
「なるほどねぇ。でも、やさしいねレイダ。普通そんなことを敵の前でこぼすことなんてないのに。」
「この前戦った時も、二番目に強い技を放ってきたし。何かしら思惑があるのかもね。」
「それを聞くためにも、マチアスは頑張ってね~」
「じゃ、またね。」
「うん。言ってたのが出てきたら、その時は手伝うから~!」
そういって、ハナは向こうのほうにかけていった。それを見送ってから、僕も目的の場所に進もうとすると………
「お?裏切った勇者殿の連れじゃねえか。よくこんなのこのこと歩けてんなぁ?」
「そちらこそ、また問題を起こしたらしいね。勇者様は忙しいね。」
「裏切るよりましだろぉ?」
声をかけてきたのは、「5人の勇者」のうちの一角で、裏切ったレイダを執拗に追いかけている、「憤怒の勇者」、ゼルガ・レッドヴェインだ。割と問題を起こしやすく、この間も、何かしらの問題を起こしたと聞いた。
ゼルガはレイダの仲間である僕らにもその怒りを向けていて、ゼルガの仲間の3人も、言わずもがなである。
「それより、君たちはどうしたの?」
「お前に教える義理はねぇよ。」
そういって、ゼルガはどこかへいってしまう。
『気を付けておいたほうがいいな。』
そう思って、僕は誰もいない物陰に隠れて……
「リリス、セレナ。」
「はい、主様。」
「……」
「あの勇者を尾行してほしい。」
「……?」
「セレナが、理由をお聞かせ願いたいと。」
「いつも通り、といえばいつも通りなんだけど、なんとなく嫌な予感がしてね。何か不審な動きをしたら、すぐに伝えて。」
「了解いたしました。」
「……(コクっ)」
実際、アビスキュラの子たちも、何度か危ない目に合わせている。それを踏まえてか、僕の説明を聞くと、二人は何も言わずに闇に消えていく。リリスはもともと諜報が得意だし、氷結魔法が得意だから、足止めはできる。セレナのほうも、尾行とか追尾とかは得意で洞察力も高い。加えて二人ともあまりしゃべらないから、ばれることはないだろう。
「さて、僕ももうそろそろ行くかな。」
幸い、さっきまでの会話を聞いた者はいないようだ。
『この予感が当たらなければ、幸せなんだけどな…』
というわけで、いかがだったでしょうか。今回若干ボリューム少なめです。
あと、豆知識はあとがきで書くことにします。というよりは、12人のアビスキュラに関する豆知識は、ですけど。
そんなわけで今回は、一番最初に出てきたアビスキュラ、イヴと、アビスキュラについてです。
まずアビスキュラは、マチアスがゼロから作ったのではなく、死にかけだったり、様々な理由で追い詰められていたりする子をマチアスがアビスキュラにするとともに保護している形です。何かに襲われたりしていた場合、マチアスは徹底的な報復措置を取ります。全員、アビスキュラになりマチアスに使えるというのは了承済みです。(何ならそれを望んでいる子も。)
イヴの本名は、イヴ・ブラッドローズ。
元ドライアドで、魔物たちに安全な場所を提供していたのですが、人間にその森が焼き尽くされそうになっているところでマチアスに会いました。マチアスが裏で暗躍し始めたのもこのころで、イヴはレイダともう一つのトリガーになっています。
イヴの主な能力はその名の通り「血の薔薇」。殺した相手を真っ赤な薔薇にするので、たくさんの敵と戦った後は、そのあとに大量の薔薇が咲き乱れています。
マチアスの築く城での職業は「メイド長」。ドライアドのころからの正確な指示と状況判断能力は、ほかのメイドたちから、マチアスの次に信頼されています。マチアスの仕事を手伝うことも。
戦闘の際は、前回の話に出てきたネフィラとタッグを組んで軍師的ポジションで動くことが多いです。
さて、今日は何本の薔薇が咲くでしょう……?