Return of the Sage(リターン・オブ・ザ・セイジ)
というわけで、双狐炎狼伝とは別のお話です。
とりあえず読んでみてください。
この世界において、自然とは神だ。
そして、神は万物に平等だ。
人類が一度滅びかけ、新たな力を手に入れたのは、もう数百年昔のことになるだろうか。
自然という名の神は進みすぎた人類文明の創造物を一部を残して消し去り、これまで辛抱強く、人類の仕打ちに耐えてきた動物たちに新たな能力を与え、”魔物”に昇格させた。
人類は一時衰退したが、新たに創生された世界で生きる中で、魔物に対抗するための「魔法」を使うもの”魔法士”と、かつての人類が残した遺産を研究、利用しようとする”技師”に分かれた。
これは、そんな世界の表と裏を同時に見つめる、一人の男の物語だ。
「お~い!そろそろ売り切れだぞ!かうやつぁさっさと買いにこ~い!」
ある町の一角で、威勢のいい店番の声が近くの通りに響く。
空には翼の四枚生えたカラスが飛び、地面には小さく火を噴くヤモリが這っている。
あちこちの店が閉店5分前を知らせる鐘を鳴らし、とおりは一見祭りのようだ。
その通りを、ある少年が駆け抜けていった。
背には大きな袋を抱え、全体的に緑がかったオーバーオールを着ている。
「は~、重い。でも、さっさと届けなきゃ…ってうぉ!」
あまり前も見ずにに走っていると、少年は鍛冶屋の中にいる一人の男にぶつかった。
「おっと、大丈夫?ケガは?」
「だ、大丈夫ですって、その服…白に青と金の模様、もしかしてkー」
「おい、あまり人の職業を言いふらすなよ、チポル。悪いな、それは俺んとこのお得意様なんだ。」
「はぁ、まあいいですよ。あ、これお届け物です。」
「了解。」
鍛冶屋の店主に、何やら大きな細長い箱を届けると、少年は次の届け先へと走っていった。
「—な?この町も随分と変わっただろ?」
「だね。ま、この夕方の雰囲気は、僕が生まれてから一度も変わってはなさそうだけど。あ、でも、鐘の音色は変わったかも。」
「ああ。この前鐘が壊れかけだってことで回収したんだよ。お前さんがよくいる中央教会のパイプオルガンは変わってねえから、安心しろ。」
「別の僕聖職者じゃないよ?中央教会にいるのも、もともとあそこにある大図書館の総秘書だっただけで…」
「だけで、じゃねえよ。それでもなれる奴は少ないんだぞ。」
「ハハ…それで、その箱は?だいぶ重そうだけど。」
「お宅に頼まれて杖だよ。宝石とか白樺とかで作れっていうやつは多いが、古代遺物の残骸で杖を作れって言われたのは初めてだぜ。」
「いろんなところを回っていたら、自然と増えるんだよ。」
「いいのか?これを”技師”たちに売りゃ、それなりの値は張ると思うんだが。」
「いいよ。あいつらはこだわりが強いからね。渡す用のは、渡すように持ってるさ。」
「ほぇ~。ま、そんなわけで、これが杖だ。」
「さすが。これが一番しっくりくる。」
「そりゃどうも。それより、ここに来た理由は何か理由があるんじゃ?」
「うん。もうそろそろ来ると思うんだけどー」
「おーい!」
「きたきた。」
「誰が来たかと思えば、国の騎士団長様じゃねえか。やっぱり人脈が広いんだな。」
「いや、もともと一緒のパーティーだったからね。」
「よ!久しぶりだな。」
「久しぶり。王国騎士団長様。」
「これはお初にお目にかかります。トルナス様。」
「トルナスでいい。気軽に読んでもらって結構。じゃ、行こうか。」
「うん。じゃあまた来るよ。今日言ったの頼むよ。」
「了解。」
それからしばらく。
僕と騎士団長…もとい、トルナス・L・ガラハットは、町の中心にそびえる城に向かっていた。
「この町も、前に来た時よりだいぶ変わったような気がする。特に町の外の外壁とか。」
「この頃魔物も増えてきたし、攻撃だけじゃなく防御面も増強するかってこうなった。」
「へえ、いつも「攻撃は最大の防御」、て言ってるトルナスが」
そんなことを話していると、いつの間にか城門の前に立っていた。
中に入ると、壁や天井に掘られた荘厳な装飾が目を引く。
「おや、このようなところで会うとは。今回は何の御用ですかな?」
トルナスと一緒に久方ぶりの城の内部を眺めていると、後ろから聞きなれた声が聞こえた。
年老いていても、まだそこに強い意志を感じる不思議な声。
その主は、国王の下で国の行く末を決める「四公爵」が一人、ロバスト・チャームズ・フォルド公爵だ。
人当たりがよく物分かりもいい。四公爵の中で民たちの評判も良く、実際僕たちのパーティーにも多く協力してくれた、なじみの深い人だ。
「今日は近況報告に。」
「俺はこいつの付き添いだぜ。」
「ほう、ほかの三人が騒がしかったのはそれが理由か。王はいつもの御前の間で待っておられる。あまり時間をかけると、ほかのものが何というかわからん。なるべく急いでくるといいぞ。」
そういうと、フォルド公爵は一回の両端にある曲線状の階段のうち左側の一つに手をかけ、一つ上の階にある、ひときわ大きな扉がある部屋に入っていった。
「さて、僕たちも行こうか。」
「だな。」
そして僕たちも、後に続いて、その扉の向こうへと、足を踏み込んだのだった。
「して、今度はあの国に攻めるのか。」
「はい。」
「せいぜい頑張るといい…最強の”勇者”よ。」
どうでしたか?
正直好みは分かれると思いますが、どちらか好きなほうを読んでいただけると嬉しいです。