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第三十話・・トヨの暦・・完結編

第三十話 ・・トヨの暦・・・完結編



続石に別れを告げて、

レンタカーで国道283号線を花巻方面へ向かい、

新花巻駅から東京へ戻ることにした。


さっきまでの夢のような時間を

それぞれが思い出しているようで、

車内では自然に口数が少なくなっていた。

窓の外には少しずつ遠ざかっていく

遠野の郷の景色が広がっていた。

私はきっとこれからも

この遠野の郷で過ごした時間を忘れない。

ありがとう遠野の郷の不思議な神々様。


「一人と福ちゃんは、

ハヤチネの神様からどんな言葉を頂いたの?

よかったら教えてくれないかな、

あの夢の謎解きのヒントがあるように思うの」

東京へ向かう新幹線の車内で、私は聞いてみた。


「続石はつづくいし」

福ちゃんが教えてくれた。

「何か深い意味がありそうね」

私の問いかけに福ちゃんは深く頷いた。


「一人はどんなメッセージだったんだい」

福ちゃんの問いかけに、一人は

何かを探すように宙を目で追いながら

「俺には言葉じゃなかったんだ」

「言葉じゃない?じゃあ何かの映像でも見せられたのかい」

「うん、そうなんだ」

「どんな?よかったら話してくれないか」

一人は福ちゃんの言葉に頷きながら

「石の板に必死になって

文字と数字を刻みつけている

男の背中を見えたんだ、

最初顔が見えなかったから

誰かはわからなかったんだけど

振り向いた顔は、まさに俺自身だったんだ」


「え!一人だったの」

思わず口から出た私の言葉に一人が

「うん、確かに俺だった」

そう答えながら自分を納得させるように頷いていた。


「それで、その刻みつけていた文字や

数字の意味はわかったのかい?」

福ちゃんが問いかけている

「ああ、トヨのカレンダーだよ」

窓の外を見ながら一人が答えた。

「私が前にハヤチネの神様から見せていただいた

あのカレンダーのこと?」

「ああ、きっと同じものだよ。

信じる、信じないは勝手だけど、

あの石板に確かに俺は刻みつけていたんだ、

それが俺の仕事だったんだよ」

一人はそう言いながら深いため息をした。

「私は信じるよ。

理由なんてないけど一人なら

あの壮大なカレンダーを造る一員になっていても

おかしくないもの。

あのトヨの本だって一人のものだったんだから」

そう言いながら私は

一人から借りたトヨの本を、

たっちゃんに渡して

あの窪みにはめたことを思い出していた。

そして、もしかしてあの本も

戻ってきているのではないかと思い

鞄の中を探してみた。

トヨの本が入っていた紙のケースだけが

鞄の中にあるだけで、

トヨの占いの書の姿はなかった。

「あ・・・・・あれ」

鞄の中からケースを取り出してみると、

ケースの中に朴木の葉で包まれたものがあり、

取り出して恐る恐る包みを解いてみると、

中には小さな石が入っていた。

「続石そっくりね」

取り出した石の形は、あの続石そっくりだった。

「たっちゃんからの贈りものかな?」

福ちゃんが言った。

私もそう思った、

そして心の中でたっちゃんにありがとうと呟いた。


「ところではなちゃんは

どんなメッセージだったの?」

私は覚えている限りの事を話し、

あの夢の答えを教えてほしいとお願いしたことを伝えた。


すると福ちゃんは、

ハヤチネの神様が私たち三人に

それぞれ伝えた言葉や事柄に、

何か大切なメッセージが込められているはずだと、

メモ帳を取り出して考え始めた。


私と一人は、福ちゃんの考えが纏まるまで

邪魔をしないように、

静かに窓の外の景色を見ていた。


「俺、はなちゃんと今度は二人っきりで遠野を訪ねてみたいな」

車中の雑音に紛れて一人の声で確かにそう聞こえた。

一人は相変わらず窓の外を見ている

(なんだ・・・・気のせいか・・・・)


「はなちゃん!」

どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。

福ちゃんの声で目が覚めた、

あと一時間で東京に到着するという辺りだった。


「わかったんだよ」

どうやら福ちゃんの謎解きが終わったらしい。

「ハヤチネの神様が俺たち三人に託した

メッセージの意味がやっとわかったんだよ」

一人も目を覚ましていた。

「はなちゃん、ヒダリマワリの祭りの時に、

遠野の郷の神様の呼び名に、

トヨの神さまの名前がついていたと教えてくれたよね。

それが大きなヒントになったんだけど、

トヨの暦は2025年で終わり

その先は刻まれていないから、

この世の終わりが近いと騒がれているよね、

僕はその大きな鍵となるのが

これからの数年間にあると考えたんだ。

確か、はなちゃんが以前話してくれた

ハヤチネの神様の元で見たカレンダーには

2025年から先は

赤い色で数字が刻みつけられていたんだよね。」

「ええ。そうよ。

その後で蒼色に輝く丸い球を渡して下さったの」

「つまり、2010年から2025年までの15年間のうちに、

一人、一人が自分を大切に、

恐怖の気持ちでことを始めないで

愛の気持ちで他と自分自身との絆を築く事。

意乗り(祈り)を大切にする事。

そうすることで、この世が続く意志が生まれると言う事だと思うんだ」


「俺の考えも言っていいかな」

一人が言った。私と福ちゃんは静かに頷いた。

「自分がトヨのカレンダーを刻んでいた事を思い出したわけなんだけど、

福山、確かトヨ文明は大きな国家を造らずに、

小さな共同体のような小国が

強いネットワークで結びついていた社会だったよね」

福ちゃんが頷いた。

「遠野の郷に来て、言葉や理屈抜きに、

魂にじかに響いてくる感覚って、

昔話の中に隠されていることを知ったよね。

それって誰もが持っている、

人間としての根源にある

共同意識みたいなものを

思い出させてくれる働きがあるってね。

つまり、他の人との繋がりの大切さを知る事だし、

個の力が増していく事だよね。

ごく一部の権力者が

リーダーとして権力を振りかざすスタイルは

近年破城してきているのがいい例だし、

一人が突出して全体を支配するのではなく、

個々が持つ最高の力が集まって

一つの世界を作り上げていく。

それが大切なことなんだって

トヨのカレンダーは教えているように思うんだ。

トヨ文明の大都市は徐々に衰退していったけれど、

それでも小国は生き延びて、

トヨの末裔として暮らし続け、

ナユグ国に滅ぼされるまで二千年も続いた大国だった。

そのことも俺たちに伝えて欲しかったんじゃないのかな」


三人それぞれに違うメッセージを伝えて下さった、

遠野の郷のハヤチネの神様。

そこには神様たちだけに

流れている不思議な時の中で

地球の平和と浄化を願いながら

祈り歌い続ける神々様たちの

暖かな思いが溢れていた。


私は、遠くの方で、

あの呼吸するエメラルド色の

ハヤチネの神様が微笑んでいるように感じていた。


私たちの謎解きは正しかったのかはわからない。

ただ一つ言えることは、

ハヤチネの神様が渡してくれた

藍色の珠=地球。

それを守れるのはこの地球に住んでいる

私たち一人一人の力なのだと、

そう、ハヤチネの神様は伝えたかったんだと思った。


後日

福ちゃんが制作した

「遠野物語百年記念」のパンフレットが仕上がってきた。


その表紙には

一人が撮影した続石の写真と

共にこんな言葉が添えられていた。


精霊の護る郷・・・トーノ・・・

     今と昔、  そして未来へ続く意志














参考文献

『柳田国男』  1991第一刷~2004第六刷  遠野物語 集英社文庫


「鈴木サツ昔話集」平成2年初版 続・遠野むかしばなし 株式会社熊谷印刷出版部

     笛吹峠    

     遠野三山   

     母也明神   

     天人子    

「正部家ミヤ昔話集」 平成7年初版  第四集遠野むかしばなし 株式会社熊谷印刷出版部

     続石の泣石・ 

「鈴木サツ自選50話」昭和62年初版 遠野むかしばなし 株式会社熊谷印刷出版部

     寒戸の婆様  

     天狗の衣   

     愛宕様    

     卯子酉さん  

     オシラサマ  

     竜神のお告げ 

「檄文」2023年第1版発行 斎藤一人 舛岡はなゑ著 マキノ出版


遠野市観光協会カッパ捕獲証明書


遠野市観光協会発行パンフレット / 道の駅遠野風の丘/伝承園/常堅寺 かっぱ淵/遠野市立博物館/早池嶺神社/法門山福泉寺/


遠野ふるさと村/遠野昔話村/遠野七観音・松崎観音


神拝祝詞 神道大祓全集/


感謝しています。

これにて完結となります。

お読みいただき

ありがとうございました。

面白かったら

ブックマーク・評価をおねがいいたします。

ありがとうございます。

感謝しています。

貴方に雪崩のごとくに雪事が起こります。

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