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第二十九話・・続石・・⑤

第二十九話・・・続石⑤・・・



一人はドームの床にあぐらを書いて座り、

福ちゃんと私は続石の形の椅子に座り、

たっちゃんはまるで、

SPのように私たちの後ろで仁王立ちして見守ってくれている。

「たっちゃんと呼んでいいのかな?」

福ちゃんが言った。

「はい、お願いします」

「たっちゃんはどうして大人の姿になったり、

子供の姿になったりできるんだい。」

「私たちは自分のなりたい姿に変化できます。

例えばそれは、初めてお会いした時のような姿だったり、

腰が曲がった老婆だったり、

自転車に乗った案内人だったり」

そい言いながらたっちゃんは、私の方を見てウインクしてみせた。

「どうして変化する必要があるんだい」

「同じ姿のままではあなたたちに、

キズキを起こさせる事が出来ないからです。

ハヤチネの神様は再生と浄化を司っています。

貴方達一人一人の魂には

真心が存在しています。

その真心は大いなる元神様からの分け御霊と言い

あなたたち一人一人が

大いなる元神様と共にあることがわかると

信じられないような奇跡が起こり

誠の心が導く世界が現実化していきます。」

福ちゃんはしばらく考え込んだ後、

ポンと一つ膝を叩きながら

「そういうことか!」

と呟いて笑った。

「・・・・・・?」

私は意味が全くわからず

二人のやり取りを見ていたが、

福ちゃんはたっちゃんと並んで見せて

こちらを見て笑っている。

「・・・・・!そういうことか!」

(福ちゃんの身長が伸びている。

そういえば一人ともほぼ同じ背の高さだった。)


ドームの外では、

キラキラ輝く浄化の道を通り、

新しい魂が旅立っていく。

遠くの方からすっかり輝きを無くした魂が戻ってくる。

戻った魂は、ハヤチネの神様の前にある鳥居が、

スーッと開き中へ入っていく。

歌声は絶えることなく相変わらず辺りに響いていた。


「さあ時間です。」

たっちゃんが私たち三人に言った。

「どうぞ前へお進みください。

ハヤチネの神様から貴方たちにお言葉がございます。」

たっちゃんの突然の改まった言い方に、

ハヤチネの神様への尊敬の気持ちが溢れている。

ここに来て初めて緊張している自分に気がついた。

「はなゑ。リラックスしてください。

大丈夫です。福山さんも斎田さんも安心してください。」

笑顔のたっちゃんが言った。

「たっちゃん、ありがとう」

たっちゃんは、私の手を取り鳥居の前へ案内してくれた。

福ちゃんと一人も後に続きき、

四人で鳥居の前で一礼し中へ進んだ。


あの夢の中と同じ鱗状になっている木の肌が

一つ一つ違う生き物のように呼吸している。

すると、ハヤチネの神様の遥か上の方から

三本のキラキラ輝く白い糸が降りてきて、

まるで人間の手のように

私たち一人一人と握手を促すように、

それぞれの手のひらに向けて伸びてきた。


まずは福ちゃんと握手し、

続いて一人が握手して、

最後に私の前に白い糸が降りてきてくれた。


私はその白い糸に触れた瞬間に、

精一杯の感謝の気持ちを込めて握り返しながら

(ハヤチネの神様、

ここまで私たちを導いていただきありがとうございます。

私が見たあの夢に意味を教えてください。お願いします。)

と心の中で強く願った。

すると

「自分を大切に、

恐怖の気持ちで事を始めないで、

愛の気持ちで

他人と自分自身との絆を築く事。

意乗り(祈り)を大切に」

とまるで球を転がしたような美しい言葉が、

やさしい響きと共に私の心の中に広がり

言葉の響きが終わると同時に

白くキラキラと輝く糸は、

私の頬を優しく撫でてくれた。

極上の安心感の中にいて

私はうっとりとした気持ちに満ち溢れていた。

白いキラキラの糸は

私が幸せに満ち溢れている姿を確認すると、

スルスルと元の高い位置へ戻って行った。


一人と福ちゃんも同じように言葉をいただけたようで、

とても穏やかな幸せな笑顔をしていた。


三礼三拍手一礼の後鳥居を抜け、

続石の形の椅子に座るように促された。

ハヤチネの神様の優しい声と言葉、

そしてあの不思議な白い糸の感触がまだ頬に残っている。

私は手でそっと頬を手で押さえてみた。


「みなさんとこうしてお逢いできた事は、

大変嬉しく楽しいひと時でした。

どうかお元気で、

私たちはいつも、いつでも貴方たちのそばにいます。」

たっちゃんはそう言いながら、

私たちそれぞれと握手を交わした。

「たっちゃん、ありがとう」

たくさんの言葉が浮かんでは消えていく、

けれど口から出て行ったのは、

ありきたりな言葉だけだった。


今となり、たっちゃんが

私たちをどんなにか支えてくれていたかがわかる。

ありがとうたっちゃん。

またいつか必ず会いましょう。

「さよなら」

たっちゃんは笑顔のままそう言うと、

スーッと外へ消えていった。


雉がけたたましい声で鳴き、

私たちの周りを一瞬眩しい光が覆った。

気がついた時には、

私たち三人は続石へと続く山道の鳥居の前に立っていた。

「あれ?・・・・・」

福ちゃんがそう言ったまま周りを見回している。


「俺たちなんでここにいるんだ?

さっきまでドームの中に居たよな」

一人がそう言いながら

さっきまで着ていた白い衣装ではなく、

緑色の皮膚だったことも跡形もなく消えて、

続石へ向かう時に身につけていた、

Gパンとパーカー姿に戻っていることに驚いている。

「夢だったのかしら?」

私自身も、登山する前の姿にもちろん戻っていて、

キラキラ輝くティアラも消えていた。

「三人で同じ夢を見るわけないだろう。」

一人が言う。

「そうよね、たっちゃんに挨拶したものね」

夢にしてはあまりにも現実的で、

切り返しの速さに驚くばかりで、

およそ人智の及ぶ話ではないことは、

重々わかってはいるけれど、どう解釈したら良いのか・・・

その気持ちはきっと三人が同じ気持ちだったのだと思う。


「あれ!福山、いつ子供に戻った!」

「うるさい!」

確かドームの中では福ちゃんは

一人と同じ身長になっていたはずだが、

目の前の福ちゃんは元の身長に戻っていた。

「あれ?変だな、時間が全く変わっていない!

俺たちが続石に着いて、

下山を始めたのがちょうど午後一時だったはず・・」

福ちゃんが時計を見ながら言った。

「え・・・・・どう言うこと?」

一人が驚いて福ちゃんに聞き返している。

「あっ・・・もしかして、

私たち時間と時間の狭間に居たんじゃないかしら。

私が福泉寺で体験したみたいに・・・」

その言葉に福ちゃんと一人が驚いたような、

納得したような不思議な顔をしてこちらを見ていた。

「神様の時間・・・・だったよね。

はなちゃんだけが動くことができて、

僕と一人は時間が止まったままだったってやつだろう、

確かにありうるかもしれないね。

そうか・・・そうか・・・・これが・・・・」

福ちゃんが自身を納得させるように、

今さっき体験した事実を振り返っているようだった。


一人もまた同じように信じられない、

という顔と、それでも自身が実際に体験した感触を

楽しんでいるように私には見えた。


当の私といえば、ハヤチネの神様から、

夢の答えを聞くことができた喜びで、

胸の中がなんともいえない幸せに満ちていた。


頬を撫でる柔らかな風。

優しい春の草花の香りが辺り一面に香り、

空には抜けるような青空に白い雲がポッカリと浮かび、

枯れたススキがちょっぴ寂しそうに風に揺れていた。



感謝しています。

お読みいただきありがとうございます。

おもしろかったら

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ありがとうございます。

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