一撃必殺ってロマンだと思う
ダンジョンの一部屋。
武器を構えた二人が向かい合う。
「「おおおぉっ!」」
咆哮。
互いの武器が唸りを上げる。
長剣の袈裟斬りを右手のダガーでいなす。
そのまま身体を回転させて、逆手に持った左手のダガーが襲いかかる。
しかし、いなされた長剣の勢いに逆らわず、そのまま身体を回転させ、裏拳気味に回したバックラーで弾くように防ぐ。
そして、そのままくるくると回り、へたりこむ。
「め…目が、回った…」
「何やってんだか…、ほい、これで、一本」
「あちゃー」
へたりこむ少女の頭に、ポスンとダガーを当てる少年。
「うむ。二人ともずいぶん動きが良くなったな」
年配の男性が、二人に声をかける。
二人は姿勢を正して年配男性に身体を向ける。
「「ありがとうございます」」
その姿にニコリと微笑む年配男性。
「踏み込む際の恐怖感はどうだ?」
年配男性の言葉に、少年少女は笑顔で答える。
「流石にコレに恐怖は感じないぜ、先生」
「ねー」
そう言って、手に持つ剣とダガーをフニフニと弄る。
見た目を裏切る柔らかさ。
ここ、ダンジョン訓練場で貸し出されている専用武器、ダンジョンシリーズと銘打たれた物である。
先日、ユーキがダンジョンマスター・ヨーコから貸し出されたダンジョンハリセンと同じ性能を持つ武器で、どのような攻撃であろうと、その武器を介しての攻撃はこのダンジョン内に限り1ダメージになってしまう能力を持つ。
ちなみにダンジョン外に持ち出すと、途端にボロボロの土くれに変わってしまう。
「それは何より。まずは相手の懐に飛び込む思い切り。そして恐れず自身の最大攻撃を打ち込む。へっぴり腰では変なクセがつくからな」
「でも、フェイントとかも必要と思います」
少女の言葉にうんうんとうなづく。
「確かにな。それも大事だがな。まずはまともな一撃を入れれてからだ。それにな」
年配男性は剣を構え、斬撃を放つ。
先程、少女の放った袈裟斬りと同じ軌道を描いて振り下ろされるソレは、スピードは言わずもがな、動きの滑らかさ、ブレない剣筋、まさに段違い。
「圧倒的な初撃で勝つ。一撃必殺、というやつだな」
剣をしまい、年配男性はニカっと笑う。
「フェイントとか駆け引きを駆使して、相手に与えるダメージが脅威にならなければ、話にならん。まずはどんな時でも、その時出せる最大威力を出せるようにするんだ。駆け引きはその後でいい。」
男は少年達の頭をグリグリと撫でる。
「ここじゃ、それが好きなだけ鍛えられる。なぁに、時間はたっぷりある。お前達はまだまだ強くなれるさ。慌てることはない」
「「はい!」」
そして二人は、また武器を構えて模擬戦を繰り返す。
そんな光景が、このダンジョン訓練場のそこかしこで見られている。
年配男性はその様子を微笑ましく見つめる。
王都の冒険者は、今、空前の修行ブームに沸いている。