12.作戦会議(下)
さっそく、感想、ブクマ、評価などいただきありがとうございます!
この三連休中に、区切りのいいところまで投稿いたします。
そんなわけで、俺たちはより奥まったところへと移動することにした。冒険者パーティのメンバーでも、ある程度経験を積まないと行かせてもらえない範囲だ。とはいえ俺も何度か入ったことがある領域なので、まだ本当の意味で危険な領域ではない。
まあ、勝手知ったる安全な山でマノクマと出くわすのだから、絶対はないのだけど。
山道があるとはいえ、徐々にそれは細くなっていき、左右から木々が我が物顔で枝を張り出し、葉を垂らすようになってくる。一方で、山奥に行けば行くほど流れる水は清らかになり、空気は澄み、鳥の歌声は耳をくすぐる。ああ、自然っていいなぁ……
『あるじ様~現実逃避しても、何もいいことはないんだからね?』
イムちゃんに鋭いツッコミを入れられてしまう。そう言われたって、仕方ないじゃないか……前にこのあたりに来たときは、依頼の達成に忙しくて、ろくに自然を満喫することもできなかったんだから。
『ううん……まあ、確かにイムもいいところだと思うけれど……』
もういっそのこと、この辺りで三人力を合わせて生きてみるかぁ……
『いやいやいやいや、だからこの辺りの安全も絶対じゃないし!人間が来るかもしれないし、マノクマの群れが現れるかもしれないし、だいたいポルクはそんなに人里から離れて過ごせないでしょ!?ちゃんと場所を変えたんだから、もっといろいろ考えてよ!!』
うー、ごめん、ベアル。
今のは俺が悪かった。
ちゃんと考えないと、だ。
俺たちは適当に開けた場所で歩みを止める。手近な岩に腰掛けて、頭をひねってみるも、やはり名案は浮かばない。要は大衆に安全な魔物としてベアルを認識してもらう、というただそれだけのことなのに、それを達成することが圧倒的に難しい。
問題点は大きく分けて三つ。
一つ、ベアルが山から下りてきたその瞬間に、攻撃される危険性。
二つ、仮にその危険を回避できたとして、人々の中に不信感が残らないか。ベアルに対する疑いの気持ちがあれば、闇討ちされてしまう危険もある。
三つ、逆に受け入れられたとして、ベアルを武器などとして利用されないか、という懸念。
これらの点を同時に解決する方法が見つからなければ、ベアルはずっと人間に怯えて暮らさなければならなくなる。
いったい、どうすればいいのだろうか……
山あり谷あり、人生経験豊富な大人なら、何かいい案を思いつくのかもしれないが、こちとら、ようやく16になったばかりの身にとっては、悩ましすぎる問題だった。
『心配しなくてもいいよベアル、いざとなったら、イムが飲み込んで隠してあげるから』
『イムちゃんの気持ちは嬉しいけど、それはちょっと怖いなあ……』
イムちゃん、そんなこと実際にできるのだろうか。俺の知る限り、そこまで大きい存在を飲み込んだことはないはずだけど……そしてちゃんと消化されないでいてられるのかも気になる。
そしてそんなことを考えている間に、徐々に太陽は西へ傾いてきた。このままでは、何も案が出ないまま今日も終わってしまう。またベアルに安全なところへ潜んでもらって、俺たちは街に戻るしかないのだろうか。
それでいつか、解決案が見つかるならいいが――
「きゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺たちの思考は、鋭い悲鳴によって中断させられた。




