第二部第三話;今日の一日
朝からずっとルナの機嫌がよくない。
どうしたらルナの機嫌がよくなるのかもわからず考えていた。
(はぁ・・・)
「由真ため息ばかりついていないの。幸せが逃げるぞ。」有香が言った。
「だってさ。あんなに怒ってるルナを見るのは初めてでさ。
どうしたらいいのかわからないんだよ。」
「わからないものは、いつも考えないようにしていたんじゃなかったの?」
「それは勉強のお話だよ。何とかならない? 有香。」
「とりあえず私なら様子見しておくかな。何かありそうな気がするから。」
「どういうことだよ。それ?」
「さあね・・・。ひ・み・つ♪」有香も真似しだした。
「そうだな ちょっと放ってみることにするか。
あいつ気になることも言っていたし。」
『由真は有香ちゃんの何を見てるの?有香ちゃんをちゃんと見てるの?』
『1人でいないほうがいいよ。特に有香ちゃんはね。
私達を信じてほしいと思う。』
「ルナの言葉の秘密を見つけなくちゃ解決しないか。」
しばらくルナをそっとしておくことにした。
有香は何か真剣に考え込んだ。
「次の授業なんだったっけ?」
「そんなの私に聞かないでよ。全部の教科を覚えてるわけじゃないんだから!」
「まず普通は授業日程表見ないと普通に覚えることは不可能だわな・・・。」
私立城北第一高校の授業科目として
以下のものをすべて三年間に履修しなくてはいけない。
国語・・・国語表現Ⅰ、国語表現Ⅱ、国語総合、
現代文A、現代文B、古典A、古典B、古典講読
地理歴史・・・世界史A、世界史B、日本史A、日本史B、地理A、地理B
公民・・・現代社会、倫理、政治・経済
数学・・・数学基礎、数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学Ⅲ、
数学A、数学B、数学C、数学活用
理科・・・科学と人間生活、理科基礎、理科総合A、理科総合B、
理科課題研究、
物理基礎、物理Ⅰ、物理Ⅱ、科学基礎、化学Ⅰ、化学Ⅱ、
生物基礎、生物Ⅰ、生物Ⅱ、地学基礎、地学Ⅰ、地学Ⅱ
保健体育・・・体育、保健
外国語・・・オーラルコミュニケーション英語Ⅰ、
オーラルコミュニケーション英語Ⅱ、
オーラルコミュニケーション英語Ⅲ、英語表現Ⅰ、英語表現Ⅱ、
リーディング、ライティング、英語会話
家庭・・・家庭基礎、家庭総合、生活デザイン
情報・・・情報A、情報B、情報C、社会と情報、情報の科学
選択科目;
芸術・・・音楽Ⅰ、音楽Ⅱ、美術Ⅰ、美術Ⅱ、
書道Ⅰ、書道Ⅱ、工芸Ⅰ、工芸Ⅱ
(音楽、美術、書道、工芸の4つの科目の中から2種を選択すること。)
普通の高校ではこういう科目は、
自分で選ぶことができる『選択科目』と言うものがある。
たとえば『世界史A』もしくは『世界史B』のどちらかを選んだり、
『社会と情報』または『情報の科学』のどちらかを選択し、
選択したほうの教科をやるのだが、
この学校の選択教科は芸術のみで
『音楽』『美術』『書道』『工芸』の選択教科しかない。
つまり基本的にこの私立城北第一高校には選択教科が無いに等しい。
全教科必須科目になっているのである。
「日程表みてもこんなのわかる人もいないか・・・。」
「全部詰め込むだけ詰め込んで、
『赤点は絶対に許さない!』っていったいどういうつもりよ。
まったく・・・」
「有香はここに来たこと後悔してるか?」
「私?なんで?こうなればとことんやってやるだけよ。」
「有香、おまえって本当に強くなったな。」
ルナのほうを見ると机に臥せっている。
僕は頭をなでてやって「ルナ、どこか調子が悪いのか?」と言った。
「調子は悪くないよ。なんかちょっとね。」
僕はその先の言葉が知りたかった。
(なんかちょっとって何なんだろう?)
「勉強ばかりで嫌にでもなったのか?」
「勉強は楽しいよ。新しいことが覚えられてすごく好き。」
「僕はそんなに元気の無いルナのことがすごく心配なんだよ。」
「うん それはわかってる。本当にごめんね。ありがとう。」
僕は有香のほうを見た。
有香は黙って首を振って(もうちょっとそっとしておこう。)と言った。
お昼休みになり全員で食堂に移動になった。
本館には教職員、1号館には一年生、2号館には二年生、
3号館には三年生と決まっていて、
全員が一箇所に集まることはとても不可能になってるので、
各建屋には専用の食堂が完備されている。
そして食堂で必ず食事をすると言う決まりにもなっている。
食事は麺類、パン食、定食A、定食Bというものがあり、
自分でメニューが決められ学生証で決済をする。
もちろん自分でお弁当を持ってくることも可能ではあるのだが、
それでも食事は食堂で必ず食べることに決まっている。
「ルナお昼だぞ。一緒に行こう。」
有香も「一緒に食事に行こうよ。」と誘ったが、
ルナは「いらない。」と言って断った。
僕は本当にどうしたらいいのかわからなくなってきたが、
有香がルナのところに行って耳元で何かささやいた。
ルナは驚いて起き上がり、やっぱりという顔をした。
そして立ち上がり一緒に食堂に向かった。
「有香、いまさっきルナに何か言ったろ? 何を言ったんだ?」
「今は答えられないかな。いつか由真にもわかるときが来ると思う。」
「有香自身についての秘密をばらしたと言うことは無いよな?」、
「それはしないよ絶対にね。」
ルナは有香を見つめていた。そしてため息をついて顔を平手でたたいた。
「由真、有香ちゃん、ほんとにごめんね。もう大丈夫だから。
本当に心配してくれてありがとう♪」
急に元気になったルナを見て、僕はびっくりした。
「有香、お前本当に何を言ったんだ?」
「それは秘密です♪」
僕にはとても不思議でしょうがなかった。
女の子同士の秘密の呪文みたいなものがあるのか?
でも、僕にはちょっとでもルナが元気になってくれて、
本当によかったと思った。
食事も食べ終えて教室に戻ってみると、
なにやら教室が騒がしくなっていることに気が付いた。
教室の前でおろおろとしている、
学級委員の田辺がいたので聞いてみた。
「田辺、なんか騒がしくなってるけどどうしたんだ?」
「あ! 由真君、実は哉太君がさっき職員室に行って
部活動のことで聞きに言ったらしいの。」
「部活動のことで? 哉太って天文学部のはずだよな?」
「うん それでね、新しい生徒手帳見た?」
「新しい生徒手帳? そんなの来たっけ?」
「教室の掲示物を読んでいないの?
由真君はちゃんと読んだほうがいいと思う・・・。」
「ごめん、掲示物は読もうと思うんだけど忘れちゃうんだよ。
これから読むようにするよ。それで何があった?」
「その生徒手帳の『生徒の行動、心得』っていう部分あるの知ってる?」
「生徒会規約第3項『生徒の行動と心構え』じゃ無かったか?」
「その第3項の規約が『生徒の行動・心得』に変更されていて、
『夜11時以降の外出を禁ずる』になってるの。」
「なるほど天文学部としては星は夜見るものだから、
真夜中になったり朝までになったりするというわけだな。」
「それで学校に夜間外出を禁止されると言うのはおかしいと
言い出しちゃって・・・。」
「でも部活の行事だからという特例処置は認められるんじゃないの?」
「特例措置が認められるのは『外泊届け』のみで、
朝まで外に出ていると言うのは認められないみたい。」
それは確かにおかしい。たとえば家族でキャンプに行くとして、
キャンプで過ごす場合は外泊届けを提出すればいいことになるのではないか?
行き先もキャンプ場の名前を書けばいいのではないだろうか?
「でも『学校の裏山』というのは、
どう考えても認めるわけにはいかない。と言われたらしいの。」
要するに場所の特定が不特定だとみなされたと言うことか・・・。
「田辺、それで哉太はどのように抗議したいといっているんだ?」
「生徒に夜間外出を認めてほしい。と言っているみたい。」
「はい、不採用確定・・・。」
「天文学部の担当教師は?」
「たしか守口先生じゃないかな・・・。」
「わかった 僕に任せてくれる?」
「哉太、ちょっと落ち着けよ。」
「由真、夜の外出が禁止になっちゃったんだよ・・・。」
「聞いた。とりあえず守口先生に、
これから天文学部の部活動として、夜中の外出は必要だと訴えよう。
部活動の活動としてちゃんと認めてもらおう。」
「うまくいくと思うか?」
「上手くいくかはわからないけど、
『学生の夜間外出を認めろ』よりは、
十分に認められる確立は上がるんじゃないか?」
「わかった。部活動の必要性を放課後になったら
しっかりと先生に訴えていくよ。」
なんとか大事にならずに行きそうだな。ちょっと一安心した。
「有香、ルナ、帰りに新しい生徒手帳をもらいに行こう。」
「さっきの騒ぎの間に取りに行ったよ。これ由真のだよ。」
とルナが渡してきた。
「ありがとう、ルナ。」と言って頭をなでてあげた。
「いいなぁ。お兄ちゃんのいる人は、
しかも妹さん想いだし、なんか焼けちゃうな。」
と有香が言い出した。ルナが顔を赤らめた。
午後の授業の間に新しい生徒手帳を見ていた。
「午後11時以降の外出の禁止。」、
「外出許可証について」、
「外泊の制限(外泊証の提出)」、
「男女間の交友関係について」など、
変更されたところから新しく付け加えられた部分もあった。
「有香 新しい生徒手帳を読んだか?」
「知ってる。外泊制限でしょ。どうしよう。」
「男女間の交友についてのことも読んでおけよ。
ここにもたくさんの規約に引っかかってる。」
「私達っていろいろと違反してるんじゃない?」
「ちょっと考える。ある程度考えたら百合先生に相談に行こう。」
「了解。」
「とりあえず学校が終わったら有香の家に行って荷物を持ってこよう。」
午後の授業も無事に終わり大変な一日になった。
「由真!俺さ今から森口先生のところに行って来る!
頑張ってくるよ!ありがとうな!」
「哉太!部活動、しっかりと頑張れよ!」
「おう!!!」
「由真君。」 声のほうを見ると田辺が立っていた。
「お昼休みのときは本当にありがとう。
学級委員長って言っても私って本当にだめだなあって思った。」
「そうか? 騒ぎを大きくするより賢明な対応だったと思うぞ?」
「そうかな。でも本当にありがとう。本当に助かった。
じゃあねバイバイ!おやすみなさい!」
「うん 田辺もお疲れ様。バイバイ!また明日な!」
「由真、あんたも罪深き男の子だねぇ。
あの田辺って子、由真に惚れたよ。」
有香がいじってきた。
「あれっぽっちのことで惚れられていたら、
学校中が異性交遊だらけで大問題になるぞ。」
「そっかなぁ?あの子のあの表情は絶対に由真に惚れたね。このモテ男が。」
「あのな!俺にはルナと有香が・・・」
(あれ? 僕は何を言おうとしたんだ・・・?)
ルナは驚いて僕のほうを見て固まっていた。
有香も完全停止状態になっていた。
「と・とりあえず今から家に帰ってそれから有香の家にいくぞ!」
一体、僕は何を言おうとしていたんだろう。
確かにルナのことは好きだ、妹として本当に大好きだ。
有香のことも好きだ、元親友で今の本当に信頼できる親友として大好きだ。
俺は本当に二人のことが・・・好きだ・・・。




