↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
emperor of dead  作者: ルーク
PR
1/8

1巡目 

現在までの登場人物の簡単なプロフィールを掲載します。



黒瀬(くろせ) 駿二(しゅんじ)

189cm 81kg 趣味:読書、ネット 異名:卓上の死神

大柄な体系と無愛想な面、若干ではあるが強面なせいで人から

恐れられる事がたまにあるが基本穏やかな性格。

物事や人間に興味が薄く、他人は他人、自分は自分と割り切って

生活をしていたが「ある事件」をきっかけに太一を始め

他人とある程度触れ合うようになる。

メンタル面が少々弱く、想定外の出来事には露骨に動揺する事も多い。


渋沢(しぶさわ) 太一(たいち)

182cm 68kg 趣味:仲間と遊ぶ、買い物 異名:不殺の皇帝

駿二と同じマンションの隣人だが最近までそれを知らなかった。

明るい性格で友人も多く、またその輪の中心にいる事が多い。

他人を惹きつけ導いていく事に長けるがそれに独善的な面や

強引な面が全くない頼れるリーダー気質。

ややおめでたく甘い部分を見せる事も多いが、それは本人の

人徳により「優しい性格」となっている。


香川(かがわ) 歩(あゆむ)

180cm 69kg 趣味:ファッション、酒と煙草 異名:なし

東亜の街のとある連盟に所属する麻雀プロ。見た目は軽く悪く言えば

バカっぽいが内面は見た目から想像がつかないほど思慮深く慎重な性格。

やたらと多趣味で必要以上に色々仕事を引き受けあちこちに出没する。

人間関係は広く浅くがモットーだが興味のある事や人には

自ら積極的に関わっていく。妙な知識にも色々精通しており時折他人を驚かせる。


生駒(いこま) 龍太(りゅうた)

176cm 64kg 趣味:ペットの猫と遊ぶ、ブログ(見るのも書くのも)

東亜のとあるテレビ局のアナウンサー。老若男女問わず受けがよい

という理由で本職のニュース以外にも引っ張りだこ。

性格は典型的生真面目で麻雀のスタイルも確率重視のガチガチのデジタル打ち。それの度が過ぎ頑固な面を見せたり喧嘩売りスレスレの

物の言い方になるのが玉に瑕。

「ロン」

高くもなく低くもない男の声が静かな部屋に響き渡った。男の向いに座る男は出していた

手を引っ込め次の挙動を見守った。

「裏も1つ乗って40符4翻。満貫で8000」

その言葉に振り込んだ側の男は点棒を取り出して差し出した。

この街ではありふれた麻雀大会。それがたった今、終結した。会場が割れんばかりの拍手に包まれ、

戦いを繰り広げていた男たちは互いの健闘をたたえ合う。時刻はもう夜8時を周り

優勝者インタビューだ後片付けの準備だと大わらわ。少々の時間をおいてお茶の間のテレビや

街頭ビジョンには優勝者、渋沢太一の端正な顔立ちの満面の笑みが映し出されていた。


「不殺の皇帝、渋沢選手は卓上の死神の黒瀬駿二選手を退けての優勝でしたね。結局本当に決勝の

半荘10回で1度もトビは出ませんでしたが、香川プロはこれをどうお思いでしょうか」

「やっぱり渋沢選手は異常者なんだなあ、と改めて思いました。あの黒瀬選手を相手に

半荘10回で周囲含めてトビ0なんて前代未聞っす。途中雲行きが怪しくなったと思ったら

ラスの選手の配牌が急によくなったりとか、場の支配紛いの事までやってましたしね。

これは渋沢選手が同席していないと1度も起こっていないんですよね」

「半荘10回でトビが1度も出ないという事は、決して珍しい現象ではないと思いますが」

先ほどまでこの大会の解説を勤めていた香川歩(あゆむ)のその言葉に、スーツ姿のアナウンサーは

怪訝な顔をした。歩は首を振りアナウンサーの言葉を無視するように口を開いた。

「黒瀬選手は伊達に死神と呼ばれちゃいませんよ。1日目の半荘12回は9回でトビを出している。

自分が飛んだのも1回だけありましたけど、そんな人が決勝の10回でいきなりトビ0とか変っすよ」

「それは、確率の偏りが収束してるだけであって黒瀬選手がどうとか言う問題では…」

「確率の問題ではありませんよ。俺が言いたいのは、黒瀬選手以上に、渋沢選手が異常だという

事っす。不殺の皇帝の名に偽りはないっすよ」

「…それは仮にもプロが、オカルトを認めるという事でよろしいのですか」

「オカルトじゃないっす。これが現実です」

そう言って歩はアナウンサーをその細い目で睨んだ。アナウンサーも何故か負けじと睨み返す。

場の空気が段々と空気が険悪になり始めていた。確率の偏りで済む現象と済まない現象の

境目を2人の男が争っていた。互いに一歩も譲らず、段々見ている側を不安に陥れる程に

議論は白熱する。特にアナウンサーの方が頑固だ。後半はほとんど言い争いに近い物があった。

「あーもうアンタは相変わらずっすね!いい加減現実を見てください!」

ほとんど怒鳴るようにして歩は解説を打ち切り席を立った。アナウンサーになど目もくれず

実況ブースを出る。歩を怒らせたアナウンサーは呆気に取られていたがすぐ慌てて後を追った。

次の仕事、優勝者インタビューへと向かったのだ。

2日間に渡るこの大会を見守ってきた実況席。実況のアナウンサーと解説の麻雀プロという

ありふれた組み合わせの男たちがつい先ほどまでその場所に陣取っていた。

気だるげに解説をしていた男の黒いカットソーには派手な柄が刻まれ。

ジャケットに濃い藍色のジーンズやブーツ、あちこち付けられたアクセサリーなど全体的に

ラフな服装で合わせている出で立ち。系統で言えばお兄系、見る人が見れば

いわゆるチャラ男以外の何者でもない服装に身を包んだ歩。

そんな歩とは対照的に黒のスーツにきっちりと身を包んでいるのは生駒龍太。

ガチガチのデジタル打ち雀士として有名で、性格もそのスタイルを体現しているかのように

生真面目で実直。たまにそれが過ぎて頑固の次元に達したりするのはご愛嬌の範囲内。

この大会でも、「異常者」の存在をほとんど認めようとせず、ある意味で我が道を貫き通した

実況をし続けたのだった。





麻雀の実力が全てを支配する街、東亜。生活に必要な金の全てを麻雀で奪い合うという

一風変わったどころでは済まされない日常がこの街での常識だ。人口のほぼ全てが若い男性で

構成される見る者によっては楽園とも地獄とも取れる人口比率。その全員が

そうして今日までを生きてきた。街で行われるほぼすべての試合に正式な牌譜が

取られ、その気になれば簡単に結果を閲覧する事が出来る。トップ率、上がった役の割合、

鳴きの平均回数、その他諸々。大体は半荘1000回でその数値の大まかな基準が出る。

その中で明らかに、誰が見てもおかしいと分かる数値を叩き出した人間は能力者、異常者と

呼ばれる。ドラの数が多い、平均和了点数が異常に高い、極端なまでに一発を引くなど

それは枚挙に暇がない。今回の大会では第2位を収めた男、黒瀬駿二の牌譜もそれに該当する。

半荘1000回のうち誰かがいわゆるトビ、持ち点マイナスで試合が終了となる

回数が実に750回を超えていた。その確率実に75%。

そのあまりに異常な数字に研究好きの人間が彼の牌譜をこぞって解析し、ネット上がちょっとした

炎上状態になった事もあった。しかし街に様々な異常者が溢れるにつれ人々は彼から興味を無くし

また別の者にその対象を移していった。今ではその名は知る人ぞ知る、といった有様だ。

時折大会に出てはその異常性を発揮し世間を賑わせるが、またすぐに忘れられる。

それを繰り返すのが黒瀬駿二という男だった。


そしてこの大会の優勝者、渋沢太一も負けてはいない。彼と対戦した場合に限り

卓の全員の箱下が0回という見方によっては駿二以上に奇っ怪な数字を叩き出し、

彼と時を同じくしてネット上を騒がせた。この大会を含め過去6回実現している駿二との対戦では

その全ての半荘でトビが全く発生していない。トップ率も常に30%前後をキープし、大会でも

結構な数の上位入賞を果たしている。容姿も端正でそのルックスには男女問わずファンが相当な数

つき、ライブ後のアーティストよろしく出待ちが現れる程。

そんな彼にはいつしか死神をも押さえつけた異常者として「不殺の皇帝」という通り名がついた。

誰も殺さず、己も死なない。それでいて上に立ち続ける彼にピッタリな名だと多くの者が

その通り名に納得をした。

そんな彼は今は優勝者インタビューを受けている。カメラのフラッシュと多くのマイク攻勢を

そつなく受ける太一。その輪の中には龍太の姿もある。歩の方はと言うとマスコミの輪から少し

距離を置き壁に背をあずけてぼんやりとその光景を眺めていた。しかし、輪全体を眺めている

ように見せかけてその目はしっかりと太一の姿だけを追っていた。

「渋沢選手、第12回鳳凰杯優勝おめでとうございます!宿命のライバルである

卓上の死神、黒瀬選手との勝負には今回も勝利しましたね!」

「今回もたまたま勝利出来ただけですよ。実力だけで言えば彼の方が圧倒的に上なはずです。

次があればどちらが勝つかなんてわかりません。でも、彼とは何度でも戦ってみたいですね。

今日は彼のおかげで楽しい1日を過ごす事が出来ました」

「それは黒瀬選手を、生涯のライバルと認めたという発言と取ってもよろしいのでしょうか!?」

「僕は彼とはそんな関係じゃありませんよ。確かに彼は面白い戦い方をしますし、

僕のスタイルが彼と対比されるのも分かります。でも、彼はきっと僕に興味なんて持っていない

と思いますよ?」

「それは黒瀬選手に直接聞いてみないと分かりませんね」

その龍太の言葉に太一は含みのある笑みを見せた。

「僕も正直よく分かりません。ただ、彼がどんな方向に向かっていようと、僕は彼の背中を

追い続けます」

「いつかその答えが聞けるといいですね」

太一はええ、と一言だけ返す。顔は相変わらずの笑顔。しかしその表情にはどこか戦う男特有の

強さが宿っていた。その光に龍太もマスコミも気づかない。ただ1人、歩だけがそれを捉えた。

「優勝賞金の使い道なんかは、考えていますか?」

「そうですね、今日は楽しかったけどとても疲れてもいるので、どこかで美味しい物でも

食べてこようかな、なんて思ってます。出来れば友達も呼べたらいいけど、こんな時間に

人なんて捕まるかなー」

後半は流石に苦笑混じりだった。その後もああだこうだとインタビューは続く。太一はその全てに

嫌な顔1つせず答えていく。人当たりのいい、完璧なマスコミ対応。

それがまた彼の人気を向上させる大きな要因の1つだった。


それとは対照的に駿二はほとんどインタビュー攻めを受けずに控え室にたどり着いていた。

夜の闇と白熱灯の明かりが相まって必要以上に明るくもある室内で駿二は部屋の片隅に設置

されているロッカーからコートを取り出した。189cmという長身を包む黒いロングコート。

髪の色からブーツの先に至るまでほとんど黒一色で統一されたその服装はまさに死神のローブを

彷彿とさせる。彼の異名、死神はメディアに露出する時ですら貫き通されるその服装からも

取られている事を彼は知らない。

駿二はそのまま部屋の中央にあるソファーに腰掛けた。そのソファーに囲まれるように置かれている

テーブルに、戻る途中自販機で買った缶コーヒーを置く。それを済ませ駿二はその大きな上半身を

完全にソファーにあずけた。白熱灯の方を力ない目で見上げ、手足は脱力しきったかのように

下に落ちている。ふう、と小さなため息も1つおまけについた。

また、勝てなかった。彼を相手にするといつもこうだ。己のスタイルを満足に貫く事が出来ず、

最後にはおいしい所をすべて持っていかれる。いい具合に沈めた相手には次に必ず和了られ、

特技とするトドメの一撃を決める事ができない。試合を決定づける1打を放とうとすると、

ほとんど妨害と言っていいタイミングで彼が動き出すのだ。最下位への差し込み、

ツモ順ずらし、和了しての親番流しその他諸々。そうなればこちらも相手を沈めまいと

躍起になる。そうなればそのタイミングを見計らっていたかのように今度は彼の方が

高い手を出す。多少のバリエーションはあれど、ほぼ毎回こういった形で自分と彼との勝負は

進んでいた。それが最後まで、誰も死ぬ事なく続くのだ。

気が狂いそうだった。当たり前のように出来ている事が、急に出来なくなる。

それがどんなに異常な事であろうと、自分の中のセオリーが崩されるのが我慢ならなかった。

卓の上で誰かを殺す事しか生き残る方法を思いつかない駿二に取って「不殺の皇帝」の存在は

ただただ脅威にしか感じなかった。

初めて卓を囲んだあの日から繰り返されてきた事が今日もまた起こった、そう割り切れば

いくらか楽になれたであろう。しかし、そこまで都合良く自分の精神は作られていないらしい。

ほんのわずかな偶然が重なって起こったあの出来事以降、彼が極端なまでに「死」を恐れる

ようになったのを知ってしまったからだ。牌にはその人の思いが出る。いつか聞いた言葉が蘇った。

もしその言葉が真実だとするなら、彼の気持ちも痛いほどに分かってしまう。

死神の自分などとは道を違えて生きていけばいい。そう言い放った事もあった。

だが彼はそれを拒んだ。俺がみんなを守って生きていく。そんな少年漫画の主人公のような

台詞を吐いて、彼は前だけを向いて生きていた。


不意に聞こえたドアをノックする音で駿二は現実に戻った。どうやらここに訪れる予定の客人が

現れたようだ。声に出して開いてる、とだけ返した。視線は相変わらず空中。ノックの

相手は「分かった」と言いながらドアを開けた。

ギイ、と音を立てて控え室の扉が開いた。一応と思いその正体を確認する。ほんの少しだけ金色に

近い栗色の髪に、目立った隙の見当たらない整った顔立ち。赤と白のチャックのネルシャツに

白地に黒い文字、金のラメが入ったカットソー。正体は言わずもがな。

今日1日自分を散々苦しめた男、渋沢太一が入ってきた。

太一は駿二の姿を認めるとそのまま隣に座った。手には自分の上着と荷物だけを持っている。

テーブルの上の缶コーヒーを見て「俺も何か買えばよかった」と苦笑した。

駿二も体を起こす。が、いかんせん太一とは10cm近くの身長差があり視線までも同じ高さという

訳にはいかない。太一もそれは織り込み済みで今更言及はしない。

「今日は、お疲れ様」

「太一もな」

短い言葉で改めて健闘を讃え合った。元々ベラベラと喋るのが好きではなく

話しかけられた時の返答も基本的に最小限。この身長も相まってか周囲からの評価は寡黙で

威圧感のある男、でほぼ統一されている。男同士の集団ならまだそれなりに盛り上がる事もあるが

女性相手となるとそうはいかない。おかげで近づく女性はほぼ0だ。

まあ、その事に関しては別に問題だとは思っていないが。

「何か食ってから帰るか?今日は久々にすっげー疲れたし、なんかボリュームある物にしたいと

思ってるんだけど、駿二は何かリクエストあるか?よかったら奢るぞ!?」

臆面もなくそんな言葉を口にされてしまうと、流石に抵抗がある。この大会の上位入賞者には、

もっというならこの大会に出場していた全員に一定額の賞金が支給されている。決勝進出4人の

賞金の合計と1日目に脱落した60人の賞金の合計がほぼ同額という極端なバランス。

大会の規模は決して大きくはないが、それでも1度や2度派手に飲み食いした所でビクともしない

程の額は上位4人に与えられる。もちろん2位の駿二の口座の数字は今頃相当膨れ上がっている

事だろう。プライドとかそういう問題ではなく、単純に申し訳ない。

せめて割り勘を申し出たい所であった。その瞬間だった。駿二の携帯電話が震え出す。

独特の振動パターンからメールだと判断して携帯電話を取った。

太一にも何か反応があったようで彼もポケットから携帯を取り出す。

そんなにおかしいメールでも届いたのか、携帯の画面を眺めて彼は苦笑していた。

「見ろよ、これ」

駿二に見せた画面にはこう書かれていた。


from :眞鍋 謙太

title:大会優勝おめでとー!


テレビ見てたぞ!二人してワンツーフィニッシュおめでとさん!急な話だけど今から

祝賀会開こーぜ!まだメシ食ってないだろ?駅前で待ち合わせてどっか適当な店で食おう。

もちろん酒ありだ!


渡りに船とはこの事だろうか、と思った。太一は体勢を変えぬまま顔には微笑を湛えている。

今日の予定はもう確定のようだ。試しに自分の携帯電話を見てみれば、カーボンコピー機能でも

使ったのか一字一句全く同じ内容のメールが届いていた。

半分ほどに中身が減った缶コーヒーの中身を更に減らす。太一は気を使って「別にゆっくりで

いいぞ」と言っている。正直な所試合の疲れがまだ体に残っていて、あまりせかせかと動く

気分ではなかったからその言葉は純粋にありがたかった。お言葉に甘えさせてもらい、

体を伸ばして筋肉を和らげる。その時だった。先ほどと同じようにドアをノックする音が

部屋の中に響いた。思わず太一と顔を見合わせる。数秒の間の後、応対に出たのは太一。

太一がドアを開けた先にいたのはド派手なアクセサリーと金髪が目に付く一人の男だった。

2日間に渡る大会をずっと解説してきた男、香川歩がその場所に立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。