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あの日空が裂けた  作者: リンダ


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2060年ウクライナ。

 2060年。


 ウクライナ。


 長く続いた戦争の傷跡は、完全には消えていなかった。


 再建された街並み。

 新しく塗り直された建物。

 それでも、ところどころに残る爆撃の痕。


 人々は前を向いて生きている。

 だが、「平和」という言葉に、どこか慎重になっている国でもあった。


 そんな中。


 キーウ中心部で開催された、国際平和交流イベント。


 テーマは、


「笑いは国境を越える」


 会場には世界中の報道陣が集まっていた。


 そして壇上に現れたのは――


 70歳前後になった北斗とジェシカ。


 さらに。


 ウクライナの少女、


 スヴィトリャーナ(8)

 クリリナ(6)


 である。


 司会が紹介する。


「ニューヨークから世界的人気コメディアン、北斗&ジェシカ!」


 大歓声。


「そしてウクライナから、“五カ国語少女”スヴィトリャーナ&クリリナ!」


 拍手と歓声。


 スヴィトリャーナ、堂々とマイクへ。


「Добрий вечір!(こんばんは!)」


 会場拍手。


「Good evening!」


 さらに拍手。


「こんばんはー!」


 日本メディア大歓声。


 そして最後に。


「どげんしよーと!!」


 一瞬静まり返る。


 北斗が頭を抱える。


「いやなんで博多弁で締めんねん!」


 ジェシカ即座に。


「世界に向けてクセ強すぎるやろ!」


 会場爆笑。


 クリリナが得意げに言う。


「うちら、博多弁まで覚えた!」


 北斗。


「なんでウクライナで博多弁流行っとんねん!」


 スヴィトリャーナ。


「博多弁、かわいかもん」


 ジェシカ。


「いやもう、文化の大洪水やな!」


 そこから、4人の即興コントが始まる。


「世界の言葉でツッコミしてみよう」


 スヴィトリャーナ。


「ロシア語で“なんでやねん”やる!」


 北斗。


「そんな競技あるん!?」


 ジェシカ。


「世界平和の第一歩や!」


 クリリナ。


「せーの!」


 4人同時。


「なんでやねん!!」


 会場、大爆笑。


 さらにスヴィトリャーナがウクライナ語で高速ツッコミ。


 ジェシカが大阪弁で返す。


 北斗が英語でツッコむ。


 クリリナが博多弁で暴走する。


 カオスだった。


 でも、不思議と全部通じていた。


 観客は涙を流して笑っていた。


 前列では、戦争で家族を失った女性が、久しぶりに大声を出して笑っていた。


 その様子を、テレビ局が生中継していた。


 数分後。


 SNSで爆発する。


「なんでやねん」がキーウを制圧した。


 ウクライナ語・大阪弁・博多弁・英語が同時に飛び交う平和空間。


 北斗&ジェシカ、70歳でも瞬発力バケモン。


 スヴィトリャーナ8歳で世界レベルのボケ。


 “笑ってはいけない空気”をぶっ壊してくれる人たち。


 戦争ニュースばかり見てたのに、久しぶりに泣くほど笑った。


「笑うことに罪悪感を持たなくていい」

 それを思い出した。


 瞬く間に動画は世界中へ広がった。


 アメリカ。

 日本。

 ヨーロッパ。

 中東。

 南米。


 コメント欄には、さまざまな言葉が並ぶ。


 We needed this.


(今、こういうのが必要だった)


 Humor may not stop wars.

 But it reminds us why wars should stop.


(笑いは戦争を止められないかもしれない。

 でも、“なぜ戦争を止めるべきか”を思い出させてくれる)


 イベント終了後。


 夕暮れのキーウ。


 北斗がベンチに座り、空を見上げる。


 ジェシカが缶ジュースを渡す。


「お疲れ、じいさん」


 北斗。


「誰がじいさんや」


 スヴィトリャーナが隣に座る。


「でも北斗さん、今日めっちゃ楽しそうやった」


 北斗は少し笑った。


「……まあな」


 クリリナが聞く。


「なんで笑い続けると?」


 北斗は少しだけ考えた。


 遠い昔。


 笑えなかった自分を思い出す。


 そして静かに答える。


「昔な。笑えん時に、誰かが笑わせてくれたんや」


 ジェシカが横から。


「こいつ昔、めちゃ泣き虫やってん」


 北斗。


「余計なこと言うな!」


 スヴィトリャーナとクリリナ、大爆笑。


 キーウの空に、笑い声が響く。


 かつて爆音に覆われた空の下で。


 人類はまだ、完全には壊れていなかった。



キーウでの「世界なんでやねん祭り」の映像は、配信開始から数時間で世界中へ拡散された。


再生数は爆発的に伸び、


「平和」

「笑い」

「大阪弁」

「博多弁」

「なんでやねん」


が同時にトレンド入りするという、意味不明な現象まで起きていた。


そして当然――


秋田家ファミリーグループも大騒ぎになる。


秋田家グルチャ


朝陽が最初に投下。


朝陽

「北斗、あんた70代になっても騒がしすぎる」


その直後。


梓。


梓

「しかもキーウで“なんでやねん”叫ぶ人生になると思わんかった」


さらに。


エミ(朝陽の娘)。


エミ

「Grandpa Hokuto accidentally became international chaos again.」

(北斗じいちゃん、また国際的混乱起こしてる)


リナ。


リナ

「ジェシカばあちゃん、もはや大阪の妖精」


カイト。


カイト

「いや妖精じゃなくて兵器」


ミオ。


ミオ

「“なんでやねん”で世界平和目指してるの好き」


北斗が返す。


北斗

「お前ら身内に厳しすぎるやろ」


そこへジェシカ。


ジェシカ

「世界は今、“なんでやねん”を求めとる」


朝陽。


「絶対違う」


梓。


「でもちょっと否定できないの腹立つ」


そこへ――


突然、別グループから通知が乱入する。


徳島支部・インコ一家参戦


まず現れたのは、


せきちゃん閣下


「せきちゃん、世界平和!

なんでやねん!」


続いて、


せいちゃん姫


「あんたは黙っとき!」


その直後、


きびまる


「キーウでツッコミ! キーウでツッコミ!」


しらゆき


「そにっくー!」


あわみ


「なんでやねん、なんでやねん!」


秋田家、一気にカオス。


北斗。


「インコまで国際化しとるやん」


ジェシカ。


「いやこの子ら、もう関西芸人やろ」


するとさらに――


鹿児島・オカメインコ一家乱入

さつまくん


「おいどんも世界進出でごわす!」


キリちゃん


「なんでやねんでごわす!」


さくちゃん


「しらんけどでごわす!」


ゆふくん


「ぴゅーい!」


そにくん


「ソニック! ソニック!」


スヴィトリャーナ、腹を抱えて笑う。


「なんなんこの世界!!」


クリリナも転げ回る。


「インコまで大阪弁しゃべっとる!!」


北斗が頭を抱える。


「もう収拾つかへん」


ジェシカは涙流して笑っている。


「待って、鹿児島弁と大阪弁混ざっとる!!」


その頃。


SNSではさらに新たなハッシュタグが誕生していた。


#InternationalNandeyanen

#BirdsOfPeace

#OsakaDialectSavesTheWorld


海外ユーザーまで困惑している。


Why are Japanese birds yelling “nande yanen”?


(なんで日本の鳥が“なんでやねん”叫んでるんだ)


I don’t understand anything anymore.

But I’m laughing.


(もう何も分からない。でも笑ってる)


This may be the weirdest path to world peace.


(これが世界平和への一番変なルートかもしれん)


その夜。


キーウのホテル。


北斗はソファに座りながら、グルチャを見ていた。


ジェシカが隣で笑っている。


スヴィトリャーナとクリリナは、インコたちの動画を延々リピートして爆笑している。


北斗は、ふと窓の外を見る。


昔。


あの日。


空を見上げることすら怖かった。


なのに今は、


ウクライナで、

大阪弁で、

インコまで巻き込みながら、

世界中を笑わせている。


人生、本当にわからない。


ジェシカが横から言う。


「なあ北斗」


「ん?」


「平和って、案外こんなんかもしれんな」


北斗は少し笑った。


「……うるさすぎる平和やな」


その瞬間。


スマホからまた通知音。


せきちゃん閣下


「せきちゃん、ノーベル平和賞!」


北斗。


「誰が推薦したんや!!」


部屋中、大爆笑だった。

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