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今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
第二話 ごきげんのルール

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9/12


 隼人は今日も野菜が入っている袋をぶら下げていた。けど、昨日とはちがってこざっぱりとした服に着替えてあった。シャワーまで浴びてきたのか、うっすらシャンプーの匂いまで漂わせている。


「今日はナス、ブロッコリー、あとミニトマト」


「野菜のサブスクでも始める気?」


 わたしはあきれて笑った。


「そ、夏野菜キャンペーン中。先着一名様かぎり」


 持つべきものは、気が置けない男友だちだね。野菜をくれるひとなら、なおよしだ。


「うれしいけど、たくさんは困る。こっちも独り身だもん」


「ならさ、おれといっしょに食べればいいじゃんね? 春江さんがそうしていたみたいに。朝メシまだだろ?」


「いいけど、何も支度できてない」


「おまえ、いつも遅刻ギリギリだったもんな。いいよ、おれが作るって」


 さっきのは撤回!


「しょうがないなあ、あがって」


 それでも中に入るよう勧めると、


「それにしてもなんだよ、その格好。それ、高校のジャージだろ。オシャレしてきたおれがバカみたいじゃん」


 隼人は靴を脱いで縁側に上がりながら言った。


「なんでオシャレしてきたの? どっか出かけるん?」


「あのなあ、ちがうって。おばちゃんのせい」


 おばちゃんとは、そのままの意味ではなく、隼人のお母さんのことだ。子どものころはちゃんと「お母ちゃん」と呼んでいたのに、いつ頃からか「おばちゃん」と呼ぶようになっていた。隼人のご両親は今、豪華に北海道一周の旅とやらに出かけている。おじさんは長年、組合長を務めていて、おばさんに苦労をかけたからとこの夏、奮発したのだそうだ。


「沙織ちゃんちに行くなら、汗臭いのはダメだ。シャワーを浴びてからにしろ、みっともないからって、電話越しでうるさいのなんのって」


 隼人はそのときのことを思い出したのか、「うへえ」と肩をすくめた。



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