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隼人は今日も野菜が入っている袋をぶら下げていた。けど、昨日とはちがってこざっぱりとした服に着替えてあった。シャワーまで浴びてきたのか、うっすらシャンプーの匂いまで漂わせている。
「今日はナス、ブロッコリー、あとミニトマト」
「野菜のサブスクでも始める気?」
わたしはあきれて笑った。
「そ、夏野菜キャンペーン中。先着一名様かぎり」
持つべきものは、気が置けない男友だちだね。野菜をくれるひとなら、なおよしだ。
「うれしいけど、たくさんは困る。こっちも独り身だもん」
「ならさ、おれといっしょに食べればいいじゃんね? 春江さんがそうしていたみたいに。朝メシまだだろ?」
「いいけど、何も支度できてない」
「おまえ、いつも遅刻ギリギリだったもんな。いいよ、おれが作るって」
さっきのは撤回!
「しょうがないなあ、あがって」
それでも中に入るよう勧めると、
「それにしてもなんだよ、その格好。それ、高校のジャージだろ。オシャレしてきたおれがバカみたいじゃん」
隼人は靴を脱いで縁側に上がりながら言った。
「なんでオシャレしてきたの? どっか出かけるん?」
「あのなあ、ちがうって。おばちゃんのせい」
おばちゃんとは、そのままの意味ではなく、隼人のお母さんのことだ。子どものころはちゃんと「お母ちゃん」と呼んでいたのに、いつ頃からか「おばちゃん」と呼ぶようになっていた。隼人のご両親は今、豪華に北海道一周の旅とやらに出かけている。おじさんは長年、組合長を務めていて、おばさんに苦労をかけたからとこの夏、奮発したのだそうだ。
「沙織ちゃんちに行くなら、汗臭いのはダメだ。シャワーを浴びてからにしろ、みっともないからって、電話越しでうるさいのなんのって」
隼人はそのときのことを思い出したのか、「うへえ」と肩をすくめた。




