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今日も生きてて、わりとごきげん  作者: このはな
ごきげん通帳、発見される
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6


 農作業の後で喉が乾いているだろう。お盆につめたい麦茶をのせて戻ってくると、隼人は縁側のふちに腰をかけていた。


 夏の午後の光がまぶしく光っている。日差しは強いけれど、屋根のひさしのおかげで影になっていた。わたしも隼人と並んで座った。


「春江さん、天国でもごきげん通帳つけてそうだな」


「雲の形がかわいくてごきげん、とか?」


「そうそう、ちげえねえ」


 ふたりで笑いあったあと、空を見あげた。しばらく沈黙が落ちる。虫の音が聞こえはじめた。その音のリズムが、なんだか心地いい。


「毎朝、庭に出てきてな、おれが畑に向かうのを見ると、決まって声をかけてきたんだ」


「おばあちゃん、朝型だから」


 わたしがうなずくと、隼人は手をあわせるときに脱帽した麦わら帽子を被った。


「隼人くん、今日の野菜の機嫌はどうね? ってさ、聞いてきたりして」


 おばあちゃんのマネをしたらしく、声音を寄せてくる。


「へえー、野菜の機嫌」


 ふたりが会話をかわすシーンが目に浮かんできそうだ。本当に、おばあちゃんらしい。


「あ、麦茶どうぞ」


「サンキュ」


 隼人は少し笑って、麦茶をゴクゴクと一気に飲みほした。


「あー、うめえ。体にしみるわ」


「うちのおばあちゃんってさ、独特なところがあるよね」


 わたしは話を続けた。


「けどさ、あながちまちがってないぜ。特にナスは、すぐ機嫌を損ねてわるくなる」


 なんだ、それ。


「ただ、痛んでるだけじゃなくて?」


「ちがう、機嫌だ」


 隼人は真顔で言ってから、空になったコップの氷を口の中に入れて、バリバリ噛みくだいた。


 気づいていないのだろうか。君だって、おばあちゃんに負けず劣らず、かなり独特だよ。わたしはまた笑ってしまった。そんな自分に気づいて、少し驚いた。わたしったら、ちゃんと笑えているんだなあ、って。




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