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農作業の後で喉が乾いているだろう。お盆につめたい麦茶をのせて戻ってくると、隼人は縁側のふちに腰をかけていた。
夏の午後の光がまぶしく光っている。日差しは強いけれど、屋根のひさしのおかげで影になっていた。わたしも隼人と並んで座った。
「春江さん、天国でもごきげん通帳つけてそうだな」
「雲の形がかわいくてごきげん、とか?」
「そうそう、ちげえねえ」
ふたりで笑いあったあと、空を見あげた。しばらく沈黙が落ちる。虫の音が聞こえはじめた。その音のリズムが、なんだか心地いい。
「毎朝、庭に出てきてな、おれが畑に向かうのを見ると、決まって声をかけてきたんだ」
「おばあちゃん、朝型だから」
わたしがうなずくと、隼人は手をあわせるときに脱帽した麦わら帽子を被った。
「隼人くん、今日の野菜の機嫌はどうね? ってさ、聞いてきたりして」
おばあちゃんのマネをしたらしく、声音を寄せてくる。
「へえー、野菜の機嫌」
ふたりが会話をかわすシーンが目に浮かんできそうだ。本当に、おばあちゃんらしい。
「あ、麦茶どうぞ」
「サンキュ」
隼人は少し笑って、麦茶をゴクゴクと一気に飲みほした。
「あー、うめえ。体にしみるわ」
「うちのおばあちゃんってさ、独特なところがあるよね」
わたしは話を続けた。
「けどさ、あながちまちがってないぜ。特にナスは、すぐ機嫌を損ねてわるくなる」
なんだ、それ。
「ただ、痛んでるだけじゃなくて?」
「ちがう、機嫌だ」
隼人は真顔で言ってから、空になったコップの氷を口の中に入れて、バリバリ噛みくだいた。
気づいていないのだろうか。君だって、おばあちゃんに負けず劣らず、かなり独特だよ。わたしはまた笑ってしまった。そんな自分に気づいて、少し驚いた。わたしったら、ちゃんと笑えているんだなあ、って。




