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「ああ、これ? ごきげん通帳」
わたしは隼人にノートの表紙を向けた。
「おばあちゃん、このノートにその日にあった、ちょっとしたいいことを書いて、ごきげんを貯めていたみたいなんだ。だから読んでたとこ」
「へえー、そんなにたくさん貯めてたん? 貯金上手だな。おれなんて、残高マイナスだよ。金も、ごきげんも」
隼人は笑いながら、抱えていた新聞紙の包みを差しだす。
「ネギ、持ってきた」
デジャブだ。思わず「ぶはっ」と吹きだした。
「それ、通帳にも書いてあったよ。隼人くんからネギをもらってごきげん、って」
「え、マジ? そりゃ、光栄だな。んじゃ、今日のは、お供えネギってことで」
「そうだね、お供えしとく。おばあちゃんもよろこぶよ」
縁側の前に置いてあったつっかけを履こうとしたら、
「いい、そっち持ってく」
隼人は門にまわって庭を横切りやってきた。
「ありがとう」
差しだされたネギを受けとり、お礼を言う。土とネギのツーンとした匂い。ちょっと目にしみた。
「新鮮だね、おいしそう!」
「大きめに切って、ホットプレートでこんがり焼くとうまいぞ」
隼人がニッと笑う。
「わかった、やってみる。あ、そうだ。お線香! あげたって」
「おう、おじゃまします」
わたしと隼人はいっしょにお仏壇に向かって、手をあわせた。




