7.お姉さま、悪逆の限りとはどういうものなのか聞いておくべきでした
毎日の更新・・・が出来ない!!
少しずつ、少しずつ更新します(泣)
おかしい。
フィオナは、王太子妃教育が始まって7日目にして、今更な自問自答を繰り返していた。
やっぱり、おかしいわ。
王太子妃教育って本当にこんなものなの?
1.朝起きて王宮へ
2.両陛下に挨拶をして王太子妃教育の部屋へ
(ちなみに殿下は初日から変わらず馬車を降りたら既に待機されている)
3.殿下と共に朝食
4.王家にしか知らされていないアゼリア王国の歴史、および周辺各国の情報の勉強
5.殿下と昼食
6.殿下の執務室にて、殿下の執務姿を視界に入れながら読書
7.殿下と夕食
殿下との時間が多すぎない?
明らかに比率がおかしくないかしら?
婚約者ってこういうものなの?もっと王太子妃教育が詰め込まれると思っていたのだけど・・・
パタンッと手持ちの本を閉じ、フィオナは静かに目線を上げる。
目線の先では、この部屋の主人であるレオバルト殿下が、側近のロイに公務の指示を出していた。
レオバルト殿下は、ロジーナお姉さまと同じ年齢でフィオナより2歳年上の18歳だ。
若くから才能を発揮されている殿下は、王立学園へ入学される前から精力的に公務に関わっていると聞いていたが、こうして目の前にすると殿下がいかに優秀かハッキリと解る。
上に立つものとしてのカリスマ性は勿論のこと、各国の情勢から市井の状況までも把握されており的確な指示を出されているのだ。
アゼリア王国の貴族子息令嬢は、王立学園を卒業することが成人の儀を果たしたこととなる。
つまりは、貴族としての責務が発生し各々が各家門の仕事に着くか新たな職務を承る。
それは王族としても同様で、アゼリア王国の王太子であるレオバルト殿下は学園在学時よりも公務の量が増え多忙な日々を過ごしている。
それなのに、自分と過ごす時間をこんなにも取って大丈夫なのだろうか。さらには公務の側に付かせてもらうなんて・・・。
フィオナはチラリと部屋の入り口に立つ護衛に目線を向ける。
王太子殿下の執務室を守る近衛兵たちは、訓練の成果き無表情ながら目線だけは鋭く周囲に気を張って立っている。
時折目が合うのだが、毎回スッと目線を逸らされてしまう。
それが近衛兵だけならまだしも、殿下の側近の方々もフィオナとは頑なに目線を合わせようとはしないのだ。
絶対に嫌われているわ!
お忙しい殿下に無理を言って付き纏っていると思われているわ!!
これはお姉さまがよくおっしゃっていた『悪役令嬢』の所業なのでは!?
『いーい?フィオナ。悪役令嬢って言うのはね、権力や身分を笠に我儘放題・悪逆の限りなのよ!!物語では大抵1人はいるの!!しかも王子様とかの近くにね!!』
ああ、齢6歳だったお姉さまの幻覚が見えるわ。
これが世に言う現実逃避なのかしら。
あとお姉さま、悪逆の限りとは具体的にはどのようなものなのでしょうか。
殿下の執務の邪魔は、悪逆に入りますか?我儘に入りますか?
過去の姉の姿を思い浮かびながら脳内ツッコミを行っていると、ギシリっと隣のソファが軋みフィオナはハッと顔を上げる。
「あ、やっと気づいたね。フィオナ。」
「で、殿下!申し訳ございません!私ったら・・・意識を飛ばしてしまっていて・・・」
「いいんだよ。少し疲れたかい?フィオナが優秀とはいえ、王太子妃教育が始まって7日だ。毎日王宮と侯爵家の往復は大変だろう?」
自然な流れでフィオナの手を握るレオバルトにフィオナはギョッとするが、侯爵家で培った淑女フェイスを崩すことはなくチラリと周囲を見渡す。
自分が殿下の執務を中断させてしまったのではないかと感じたからだ。
しかし、周囲の従者や側近のロイは心得ているとばかりにお茶の用意を始めており、目にも留まらぬ速さでフィオナとレオバルトの前の机にティーセットと美しいケーキやお茶菓子が並べられた。
「そうだ、フィオナ。こうしてはどうだろう?少しでも君の負担が減るように王宮に君の部屋を用意するよ。私と君は婚約者で、もうすぐ夫婦になるんだし、私の隣の部屋でいいよね?」
「で、殿下!そのようなわけにはいきませんわ!私はまだ学生の身ですし、、、それに出来る限り家族との時間も大切にしたいのです!」
フィオナは流石に淑女フェイスを崩し、ブンブンと顔を横に振ってしまう。
それぐらいレオバルトの発言に度肝を抜かされたのだ。
何よりも、お姉さまが嫁ぐその日までは出来る限り一緒にいないと!!
目を離したら、頭に木を生やしていたり全身が粉まみれになったり犬猫や人を拾ってきたりするんだもの!!
まだセオリオ様1人には任せられないわ!
フィオナは、まごうことなきシスコンなのである。
「・・チッ・・・そう?フィオナは本当に家族が大好きなんだね。分かった。嫌われたくないから今は諦めるよ。その代わり無理はしないでね?」
あれ?この人舌打ちした?
気のせいかと思わせるほどの眩い笑顔に、フィオナは思わずコクリとうなづいた。
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