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【完結】エトゥールの魔導師  作者: 阿樹弥生
第14章 精霊の祝福

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(5)駆け引き⑤

――傷は 男 の 勲章(くんしょう) らしい よ


「誰がそんなこと言ってるの?」

「サイラス様ですね」


 アッシュがぼそりと言う。


「サイラスが?」

「よく私をボロボロにしたときに、ほざく――いえ、おっしゃる台詞(セリフ)です」

「……手合わせで?」

「ええ」

「……アッシュ、転職を考えたことは?」

「カイル様とサイラス様と知り合ってから、山ほど検討しておりますが?」

「なんか、ごめんよ……」


 カイルは、謝罪(しゃざい)すると再びウールヴェと会話に戻った。


「トゥーラ、僕は勲章(くんしょう)なんていらないんだ。この頬の傷があると今は困るんだ。だから治したい」


――世界 の 番人 に 頼めば?


「うっ…………」


 カイルが無意識に避けていることを、ウールヴェは見抜いていた。

 しばらく葛藤していたが、背に腹は変えられない。

 カイルは石床に腰をおろしたまま、姿勢を正し、ウールヴェに対して深々と頭を下げた。


「どうかお願いします。ファーレンシアが楽しみにしている婚約式で、彼女を失望させたくないので、この頬の傷を治してください」


 ひそやかな気配がした。


――――望むのは姫のためか?


「当たり前です。僕が顔の傷を気にするとでも?」


 いつもとは違い丁寧に会話をこころみる。機嫌を損ねるわけにはいかなかった。


――――気にするかと思ったぞ


「あまり頓着(とんちゃく)しない性格です。だからお願いします」


――――侍女達が怖いのか


「それはあるっ!」


 カイル達は即、認めた。


「彼女達は怖い。絶対に怒らせちゃいけない集団だ。とくにファーレンシアに関することではっ!」


――――懸命な判断だな


 世界の番人の言葉とともに天井から一直線の光がゆっくり降りてきた。正確にカイルだけを照らし出す。そばにいるアッシュとミナリオが息をのんだ気配がした。


――――祝福の前払いだ


「前払い?」


 すぐに世界の番人の気配は消えてしまい、カイルは傍らに立つ専属護衛を見上げた。


「……僕の傷は?」

「……治っています」

「……よかったあ」


 カイルは大きく息をついた。


――よかったね


「本当によかったよ。トゥーラもありがとう。世界の番人にもお礼を伝えてくれる?」


――うん わかった


 カイルは立ち上がり専属護衛達を見た。


「ごめん。心配をかけたね」

「……いえ」

「戻ろうか?」

「まだ、やることがあります」

「アッシュ、切腹とかそういう話は――」

「違います。メレ・エトゥールへの報告です」


 まさに、一難去って、また一難であった。





「………………」


 メレ・エトゥールは、執務机に肘をついた手を額に当てたまま、視線を落として報告の間、専属護衛と共に正面に立つカイルを見ようとしなかった。熟考しているようにも、苦悩しているようにも見える。


「……メレ・エトゥール?」

「……」

「……大丈夫かな?」


 セオディア・メレ・エトゥールはようやく顔をあげて、先に専属護衛達を見た。


「まず、アッシュ。切腹(せっぷく)は許さぬ。処罰が欲しいなら、そのままカイル殿の専属でいろ。ほっといても胃は壊れ、その痛みが十分な罰になる」

「そんな気はしました」

「……ちょっと、メレ・エトゥール?」


 メレ・エトゥールはカイルの抗議を無視した。


「ミナリオ」

「はい」

「カイル殿がお前の専属護衛継続を望んでいるが、身を削らせるのは忍びない。お前自身の希望をきこうか?」

「私の実力不足でカイル様を危険にさらしております」

「他の者なら、さらさない、と思えるか?」

「………………いえ……」

「お前やアッシュの二人で実力不足というなら、エトゥールで第一兵団まるごとつけることになる。それはできないことはわかっているだろう?」

「………………はい……」

「その点を除いて、お前の希望をきこう」

「私は、許されるならカイル殿に仕えたいと思います」


 ミナリオの言葉に迷いはなかった。メレ・エトゥールは目を細めた。


「……完全にたらしこまれているな?」

「……その自覚はあります」

「許す。そのまま任を続けろ。――さて、カイル殿」

「なんだろう?」

「どの件から、話を始めようか?時間はたっぷりある。なんだったら三日後の婚約式まで話し合ってもかまわない」


 メレ・エトゥールがカイルに向ってにっこりと微笑むが、それは以前のシルビアの微笑に非常に酷似していた。


 メレ・エトゥールは間違いなく激怒していた。


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