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『元・食品開発研究員ですが、異世界の食材を「科学」で極上ディナーに変えたら、王国中から美食家が押し寄せてきました』  作者: チョコ大福
第1部(辺境の村:ライネ村編)

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第7話:酸っぱくて硬い「野生の木の実」は、「科学(ロジック)」の【極上スイーツ】で村の子供たちを笑顔にする

第7話をご覧いただきありがとうございます!

今回は、村の子供たちが森の奥から採ってきた「酸っぱくて硬い野生の木のワイルド・ベリー」がテーマです。

そのままではとても食べられない酸っぱい木の実を、エドワードが「ペクチンのゲル化」や「糖と酸の黄金比」、「メイラード反応によるキャラメリゼ」という食品科学の理論を使って、子供たちが飛び上がるほど美味しい極上のタルトへと変身させます。

甘いデザートを囲む子供たちの笑顔と、温かな日常のひとコマをどうぞお楽しみください!

それでは第7話、どうぞ。

「エドワードのおじちゃーん! これ、すごく酸っぱくて硬いんだ……!」

ある日の午後、村の子供たちが一斉にエドワードの調理場へ駆け込んできた。

先頭を走ってきたリリスの手には、森の奥で採ってきたという「ワイルド・ベリー(野生の木の実)」の入った籠が抱えられている。

それは見た目は鮮やかな赤紫色をしていながら、口に入れた途端に顔が歪むほどの強烈な酸っぱさと、ゴリゴリとした硬い種を持った厄介な果実だった。

そのままではとても食べられたものではないが、子供たちは「甘いお菓子が食べたい!」という一心で、どうにか美味しくできないかとエドワードを頼ってきたのだ。

ガルドやバルトといった荒くれ者たちも、窓の外から「子供たちが甘いものを欲しがってら」「あんな酸っぱい木の実じゃ、どうあがいても無理だろ」と面白そうに覗き込んでいる。

エドワードは子供たちの期待に満ちた視線を受け止めると、優しく微笑んで眼鏡を押し上げた。

「なるほど、酸味が強くて種が硬い果実ですね。ですが、ご安心ください。果実の酸味とペクチンの性質、そして糖の結晶化をコントロールすれば、子供たちが飛び上がるほど美味しい『極上の特製フルーツ・キャラメルジャム』に変身させてみせましょう!」

① ペクチンのゲル化と酸味・糖度の黄金比

エドワードは手際よく木の実を洗い、金属の鍋に放り込むと、少量の水と、先日の行商人レイヴンからお礼にと分けてもらった貴重な精製糖を加えて火にかけた。

「果実をジャムやスイーツにする上で一番重要なのは、果物自体に含まれる成分である『ペクチン』の働きです。ペクチンは、適切な量の『糖分』と『酸味』、そして『加熱による水分の蒸発』が揃うことで、網目状の構造を作ってトロトロの『ゲル(ゼリー状)』に固まる性質を持っています」

エドワードは木べらを動かしながら、鍋の様子をじっと見つめる。

「ワイルド・ベリーは酸味が強すぎますが、逆に言えばペクチンを固めるための『酸』は十分すぎるほど揃っている。そこに適切な量の糖分を加え、じっくりと煮詰めて水分を飛ばすことで、酸っぱさがマイルドな極上の甘酸っぱさに変わるのです」

鍋から立ち込めてきたのは、これまでのただの酸っぱい臭いとは違い、濃厚でフルーティーな甘酸っぱい、極上の香水のような芳香だった。

子供たちは思わず「わぁ……いい匂い……!」と歓声をあげ、つま先立ちで鍋の中を覗き込む。

② メイラード反応と糖の結晶化による「特製キャラメル・タルト」の仕上げ

さらにエドワードは、別の小さな鉄板の上で、村の粉を練り上げたサクサクの生地を香ばしく焼き上げる。

「そして仕上げは、先ほど作ったジャムに、少しだけ香ばしいアクセントを加えましょう。糖分を絶妙な温度で加熱することで起こる『メイラード反応とキャラメリゼ』です。甘さの中にほんのりとした苦味とコクをプラスすることで、味に奥行きが出る」

焼き上がった香ばしいタルト生地の上に、たっぷりと煮詰めた特製の赤いジャムを流し込む。

最後に冷ますことで、ジャムの表面がツヤツヤと輝く美しいデザートが完成した。

「お待たせいたしました。『ワイルド・ベリーの濃厚キャラメル・タルト』の完成です」

③ 子供たちの歓声と、村中に広がる笑顔

エドワードが切り分けたタルトを小さなお皿に載せてテーブルに並べると、待ちきれないといった様子でリリスたちが一斉にフォークを伸ばした。

「いっただきまーす!」

一口食べた子供たちの動きが、ピタリと止まる。

「…………っ!?」

目を見開いたリリスの顔に、パパッと満面の笑みが花開いた。

「なにこれ……! さっきまでの酸っぱさが嘘みたいに消えて、甘酸っぱくてトロトロで……タルト生地はサクサクで香ばしくて、すっごく美味しい……!!」

「甘い! 甘くておいしいお菓子だぁ!」

他の子供たちも次々と飛び跳ね、夢中でタルトを頬張りはじめた。

外で見守っていたガルドも、あまりの美味しそうな様子にゴクリと喉を鳴らし、「おい、おっさん……俺にも一口くれねぇか?」と思わず窓から手を伸ばしてくる。

リリスはタルトをきれいに平らげると、嬉しそうにエドワードの服の裾をキュッと引っ張った。

「エドワードのおじちゃん、すごい! 私、こんなに美味しいお菓子、生まれて初めて食べた!」

その子供たちの無邪気な笑顔を見て、エドワードは満足そうに目を細め、優しく頭を撫でた。

「ふふ、喜んでもらえて何よりです。食材がどんな姿をしていても、科学のロジックで手を貸してあげれば、いつでも最高の笑顔を生み出すことができるのですよ」

お肉も、野菜も、調味料も、そして野生の木の実さえも。

エドワードがもたらす食品科学の魔法は、硬く閉ざされていた辺境の村の人々の心を、最高に甘く温かな幸せで満たしていくのだった。

第7話をお読みいただきありがとうございました!

今回の科学のポイントは、

果物自体に含まれる「ペクチン」の性質を活かし、適切な糖分と酸のバランスで極上のトロトロジャムに仕上げる

加熱による水分蒸発と糖度のコントロールで、強烈な酸味をマイルドな極上の甘酸っぱさに変える

生地の香ばしさと糖の「キャラメリゼ(メイラード反応)」を組み合わせ、デザートとしての奥行きとコクを生み出す

というフードサイエンスの技法でした。

お肉やスープが続いた食卓に、今回は待望の「甘いおやつ(デザート)」が登場する回となりましたがいかがでしたでしょうか?

子供たちの無邪気な笑顔や、それを見守る村人たちの雰囲気が少しでも伝われば幸いです。

辺境の村にさらなる笑顔と美味しさの革命を起こすエドワードの物語、次回もどうぞご期待ください!

「おもしろかった」「お腹が空いた」と思っていただけましたら、ぜひ【ブックマーク登録】や【評価(☆☆☆☆☆)】で応援をよろしくお願いいたします!

それでは、また次話でお会いしましょう!

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