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【第4章連載中】『元・食品開発研究員ですが、異世界の食材を「科学」で極上ディナーに変えたら、王国中から美食家が押し寄せてきました』  作者: チョコ大福
第4章:海洋都市トライデント・魚介編

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60/62

第60話:「脂が強すぎて臭う青魚の切り身は、『塩締めと酢によるタンパク質変性』で【海の香草マリネ】に変わる」

登場人物紹介

エドワード:主人公。元・大手食品メーカーの食品開発研究員。気品ある紳士的な物腰で、科学ロジックを駆使して食材のポテンシャルを解放する。

レイラ:エドワードの相棒となった商人見習いの少女。勝気な性格(「~よ・~わ」口調)。流通の視野を持ちつつ、最高の食レポで読者のヨダレを誘う。

フィリア:おっとりとしたエルフの薬学少女。三人旅のレギュラーとして科学と薬膳の知識で調理をサポートする常識人。

レイナルド:圧倒的な存在感を放つ、孤高の気高き美食家。エドワードの科学的アプローチに最初は厳しく当たるが、その極上の魚介料理の前に魂を奪われていく。

前書き

第60話をご覧いただきありがとうございます!

海洋都市トライデント編、第6弾です。今回は、脂が乗っているものの、酸化しやすく独特の臭みが強い「青魚」がテーマ。

「脂っこすぎてすぐ臭くなる。下品な食材だ」と切り捨てる美食家レイナルド。そんな彼に、エドワードは科学のロジックで「青魚の真の姿」を見せつけます。

酸と塩の力でタンパク質を締め、脂の酸化を防ぎつつ、香草で香りを昇華させる。最高峰のマリネの科学を、どうぞお楽しみください!

それでは第60話、どうぞ。

「……下らぬ。脂の乗った青魚など、水揚げから一刻も経てば酸化し、鼻を突く悪臭を放つ。このような低級な食材を、私のような美食家の前に出すとはいい度胸だな」

トライデントの高級な一室。美食家レイナルドは、目の前に出された青魚の切り身を冷ややかに見下ろしていた。脂が乗っているのは事実だが、その鮮度の落ちやすさと、独特の生臭さが鼻につくというわけだ。

エドワードは顔色一つ変えず、静かに眼鏡を拭いた。

「レイナルド様。青魚の脂質は酸化しやすく、それが臭いの主因であることは間違いありません。しかし、それは『制御』できていないからです。脂質が酸化する前に、酸と塩のロジックで守ってやれば、この脂は最高の旨味に変わります」

レイナルドはふんと鼻を鳴らす。

「理屈は分かった。だが、焼けばパサつき、生では臭う。どう調理するというのだ?」

エドワードはフィリアが選んだ香草の束を手に取った。

「焼く必要はありません。**『タンパク質の変性と酸化防止』**のロジックを使い、マリネとして再構築します」

① 科学ロジックの導入と調理の開始

エドワードは、丁寧に下処理した青魚の切り身に、均一に塩を振りかけた。

「まずは塩で浸透圧をかけ、余分な水分と臭み成分を排出します。その後、柑橘果汁と酢でマリネします。酸によってタンパク質は加熱せずとも変性し、身が引き締まります。同時に、酸の力で脂の酸化速度を抑え、香草の抗酸化作用によって、この脂のコクを爽やかな風味として固定するのです」

フィリアが手際よくハーブを刻む。

「青魚の脂は、酸化すると不快ですが、適切な酸と香りでコーティングすれば、まるでナッツのような芳醇なコクに変わるんです。エドワードさんの指示通り、ハーブの香気を脂に溶け込ませれば、驚くほど軽やかな後味になりますわ」

レイラも頷く。

「脂っこいのが苦手な人でも、このマリネなら無限に食べられるわ! 最高の保存食にもなるし、流通の面でも画期的よ!」

② 五感と化学変化の実況(圧倒的アロマの解放)

数時間後。調味液に浸された青魚は、酸の力によって表面が真っ白に美しく変性し、内部の赤身と美しいコントラストを描いていた。

エドワードが器に盛り付けると、そこには強烈な生臭さは一切なく、柑橘の爽やかな酸味と、ハーブが持つ清涼感のある芳香がふわりと立ち込めた。

仕上げに微量の木の実オイルを回しかけると、銀色に輝く皮目がきらめき、見違えるほど洗練された姿へと生まれ変わる。

③ 絶品!【海の香草マリネ】の完成

――【海の香草マリネ】の完成である。

レイナルドは疑わしげにフォークを取り、一切れ口に運んだ。

――瞬間。

彼の表情に、かすかな動揺が走った。

口に入れた瞬間、脂のコクが広がるが、決してしつこくはない。酸味が脂の重さを完全に消し去り、その後にハーブの香りが突き抜けるように鼻腔を駆け抜ける。

身はキュッと引き締まりながらも、噛みしめるたびにジュワリとジューシーな旨味が溢れ出してきた。

「……っ!? ……これが、あの臭い青魚だと?」

④ 価値観の崩壊と、レイナルドの感動

「脂を、殺すのではなく、活かしたというのか……酸によるタンパク質の変性と、酸化の完全なブロック……見事なロジックだ」

レイナルドは無言で二切れ目、三切れ目と箸を伸ばした。

「……素晴らしい。火を通すよりも、この身の弾力と、脂の甘みをダイレクトに感じられる。……ふん、科学とやらも、たまには面白い答えを出すようだな」

エドワードは優しく微笑む。

「脂の酸化を止めるのではなく、その魅力を最大化する科学。お気に召しましたでしょうか?」

レイナルドは、誇り高き態度を崩しながらも、わずかにその口角を上げ、ワイングラスを傾けたのだった。

後書き

第60話をお読みいただきありがとうございました!

今回は「青魚の脂」を酸と塩でコントロールし、臭みを爽やかな旨味に変える科学でした。

美食家レイナルドの鼻をも唸らせたマリネのロジック、いかがでしたでしょうか?

三人旅の科学の力は、トライデントの美食家たちにも認められ始めています。

次回の第61話では、硬直してゴムのように硬い「大型魚」を、「神経抜きと熟成酵素」で【極上とろける刺身】に変える科学に挑みます。

それでは、次回の話もお楽しみください!

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