11話 聖女、無くしたカバンを探す
「さあ、アルナ様。
宮廷医師の診察です。
リラックスしてお受けくださいね」
付き添ってくれていたビアが心配そうに言った。
私は宮廷医師の診察を受け、様々な診察、触診だけではなく、水晶をかざして魔力の流れなども診てもらった。
診察結果は問題なし。
少し疲れているだけ、という事だった。
ほっ……。
そして私は思い出したことをビアに伝える。
「ねえ、ビア。私が無くした鞄の事なんだけど、みつかった?」
「そうでした。神殿の入り口近く……祈りの間で無くされたという鞄ですよね。
それが、あの日居合わせた神官や巫女に確認したのですが、誰も知らないようでした。
もう少し探してみますね。
そんなに大事な物が入っていたのでしょうか?」
ビアは可愛らしく小首を傾げた。
私がアカデミーで手にした本。
前の人生では読む事が出来なかったゲーム『くちづけの聖女は3人の王子に愛された今日も眠れない』のノベライズ版。
夢の中の処女神リーンいわく、『世界を平和に導くトゥルーエンドのヒントが示されている本』……なんて言えないよね。
あれを読めば今後の物語の展開がわかるはず。
私は体験版の後の展開……つまり、この後の展開をなにも知らないんだから。
絶対読んで知っておきたい!
この後どんどんキース王子を好きになっていってしまったら……正直キスを避け続ける自信がありません。
キス展開を回避する方法がわかるかもしれないし、聖女の努めについて色々わかるかもしれない。
この後、アステリア国に何か起こることがあれば、対処方法もわかるだろうし……。
「とにかく、大事なものなの。引き続き探してもらっていい?」
「わかりました。兵士たちやメイドたちにも通達いたします」
ビアは快く引き受けてくれた。
うう、ありがとうビア!
「少しお休みください。そういえば、今日は昼食がまだでしたね。
遅い昼ごはんとなりますが、用意させてまいります」
◇◇◇◇◇
用意されたお昼ごはんを見ると、疲労感より空腹感が勝った。
お腹がぐうぐうなりはじめ、私はベッドから飛び起きてテーブルについた。
レタスと海藻に東洋風のソースを和えたサラダ、香草ソース添えの鮭の塩竈焼き、豚肉とじゃがいものバジル炒め。ふわふわのパンが数種類。
そして赤ワインと白ワインが両方。
そして新鮮な牛乳、ミックスフルーツジュース、レモンとミントの浮いたお水。
テーブルにずらりと並べられた料理を、給仕担当のメイドが丁寧に皿に取り分けてくれる。
どれもすごく美味しい。
幸せ……。
丁寧に調理された料理。
作ってくれた人も、聖女としての私にすごく期待してくれているんだろうな。
この宮殿での生活、まだまだいろんな事が起きそうだけど、頑張らなくちゃ。
聖女としてアステリアを守って、キース王子のことも……魔力供給で守っていかなくちゃ!
ご飯のあと、襲ってきた強い眠気で私は眠り込んでしまった。
食後すぐ眠るのは良くないけど……午前に魔力供給をしたし、疲れていたみたい。
気を失うように眠ってしまった。
そして、翌朝まで眠り続けた。
翌朝、キース王子からのプレゼントに死ぬほど驚くとはつゆ知らず。
(続く)




