表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/32

9話 聖女、ヤンデレ王子をなだめる

 間近に迫ったキース様。

 イケメンだ。顔がいい。

 とにかく顔がいい。

 見つめられると動けなくなってしまう、ほの暗い眼力のある琥珀色の瞳。

 蠱惑的な、朱と桜色の混じった、薄いどこか冷淡そうだけど執念深そうな唇。

 青白い肌。どこか儚げな整った細面な顔立ち。


 ぐらりと……きそう……です。


「……僕のこと、そんなにイヤ?」

 キース王子は伏し目がちに悲しそうに云う。

 そんなずるい言い方しないでくださいッ……!

 私に耐性がないだけなんです……。

「イヤ、じゃないです……」

 キース王子は嬉しそうに微笑んだ。

 距離を詰めてきた彼の手が伸びてきて私の耳元の後ろ、後頭部近くの髪の毛に触れた。

 ガチ恋距離。

 ヤバい。

 そのまま私は引き寄せられ……。


「キース王子。失礼します」


 突如、ドアがノックされた。

「レオリオ国王陛下がお呼びです。取り急ぎ王宮の正殿に来るように、と」

 キース王子にいつも吐きそう、従者の声。

 キスは……寸止めで終わりました。


 邪魔されて露骨にイヤな顔をしているキース王子。


「入れ。全く、人払いをしていたのにこれだ」

 部屋に入ってきて恭しく礼をする従者。

 キースの身の回りの世話をしている男の人。

 キースと歳は変わらないくらいの男性だ。

 彼は雰囲気を察してか、気まずそうに続ける。

「は。レオリオ国王のご容態が良く、キース王子と、可能であれば聖女アルナ様にもご挨拶がしたいと。

 直々にお会いになるそうです。

 今すぐ正殿にお越し下さいますよう、お願い申し上げます」


 レオリオ国王陛下。


 アステリア王国の現王、レオリオ・デ・アステリア陛下。

 先代王の直系の子に男児が一人だったため、護国の結界を一人で守り抜き、三王子に儀式を引き継いだ後は、王宮内で静養されているという……。

 ここ数年あまり表には出てこず、長男のエドワード王子に実権を渡し、実質隠居状態に近いと噂だ。

 若い頃は名君として名を轟かし、他国がアステリアに侵略されないのも、魔物たちの影響を受けないのも、長い王室の伝統の威厳だけでなく、現レオリオ王の政治手腕のお陰であると言われている。


 そのレオリオ国王陛下が、私を呼んでいる……?


「今でないとダメなわけ?」

「ご存知の通り、国王陛下もお加減にムラがありますゆえ。本日は体調も良く、御気分も良いとのこと。

 魔の息吹の影響が弱まり、無理がないようなら、かわいい末息子の顔が見たいとお申しです」

「そんなこと言って」

 ぷいっと顔を背けて、ぬいぐるみのチャーリーを引き寄せるキース王子。

「リーンに選ばれた聖女と会いたいだけなんじゃないの。僕が今独り占めしてるからね。アルナに会うついでなんだろう」

「キース王子ったら」

 私は思わずその言葉を嗜める。

「かわいい末息子に会いたくないお父様なんていません!私が王宮に呼ばれた日には、私をお召しにならなかったのですから。

 陛下は本当に、お元気になられたキース王子に会いたいのではないでしょうか……!」

 キース王子のキョトンとした顔に、私は言い過ぎたかなと萎縮してしまう。

 だけど、説得は効果的だったみたい。

「そう言われてみればそうだ。

 お父様は、僕の加減が良くなったと知ってお召しになったのか……。それならば、すぐ向かわなきゃね。

 アルナ。ありがとう」

 キース王子にお礼を言われて、私も照れてしまい思わずはにかんで微笑んだ。

「……いえそんな。差し出がましかったならすみませんでした」

「いや。僕にそんなにはっきり言ってくれる人ってなかなかいないから……その、ありがたいよ」

 

「あのう」

 私たちがふわふわした雰囲気になっていると、情けない声で近侍の青年がわって入ってきた。

「正殿に参りましょう。遅くなると私がお仕置きを受けます!」

 彼は低姿勢ながらも、泣きそうな顔で頼んできた。


 ◇◇◇◇◇


 謁見の間のある正殿に続く豪華な回廊を歩く。

 アステリア王宮って本当に広いし、迷宮のような作り。いくつもの宮殿が回廊でつながり、中庭もたくさん。

 いまだに王宮の中を歩いているのが信じられない。

 庶民だった私には、縁遠い場所だから……。


 スタスタと歩いて行くキース王子、その後を親鴨を追いかける小鴨のようについて行く従者。

「キース王子、お加減は大丈夫ですか。そんなに急ぐとお身体に触りませんか」

「大丈夫だよ。アルナが魔の息吹を祓ってくれて、気分はいい」

 キース王子は振り返り、優しい目でこちらを見た。

「前は儀式の後は寝込むほど、呪いの影響があったんだよ。今日は、浄化を受けただけでなく、リーンの良いエネルギーをもらった気がする。儀式の術式もスムースだったし、すごく体も心も楽だよ。

 お父様に会うのが楽しみだ。僕もお父様も伏しがちでなかなか会えないからね」


 (続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ