【第133話】 お兄ちゃんは飛んでくる
こんにちは。
号外です。
前話、いいね、ありがとうございます。
「で、俺を呼び出したのは?ここ女子寮だろ?いいのか?」
目の前にはケインお兄ちゃん。
脚、長いんだよねぇ、このお兄ちゃん。
「これ、食べてみて」
女子会から数日後、私は北のゴブリン、フーララさんを通して、ケインお兄ちゃんを呼び出したのだ。
「甘いな。このコロコロした丸いのは気に入った」
「こっちの綿菓子は?」
「俺には甘すぎる。ミンは好きそうだな」
「これ沢山作って、商売しようと思うの」
「ほう、だがこれは砂糖を大量に使っていないか?砂糖は高価だ、どうする?」
「そこで相談なの、獣人族の現役引退者って何をしているの?」
「引退?ああ氷獣狩りの引退か、家屋の修理や、食料確保、雪かきか?」
「砂糖、作らない?農業なんだけど」
「ほう、面白そうだな?」
「農業の街があるのよ。魔獣が出没したりして、農作業、結構危険なんだって。そんな中でのお仕事大変らしくて……ここで獣人族、活躍できない?」
どうだろう?この計画。
「……続けろ」
「ここで働いて、ボディーガード、警備も担当する。街との繋がりが出来るわ。獣人族は、人族やエルフ族より遙かに頑丈で、自然界に近い存在。王都や、周辺の街の人達と交流ができる。そして信頼関係を作り上げる、どう?」
「傭兵の派遣と同じか?街に労働力として派遣する、と?」
「そう!どうかしら?」
「で、砂糖やこの菓子の材料を作って、加工品として売ると?」
ケインお兄ちゃん!?鋭い!何処かで勉強しているな!
「価格は大丈夫なのか?コストを考えないと失敗する。レシピが広まり、原材料が安くなりすぎて利益が出ないとか、逆に原価が高くなりすぎるとか。農作物はどんなに魔法でフォローしても気候に影響される、色々考えてみたのか?」
私がビックリしていると、ニヤリ、と笑った。
「見直したか?飛び回っている先々で、勉強しているのさ」
どんな勉強!?
ん?イオリちゃん?
「ケインさま、お話は色々と伺っておりますが?」
ぎくうううううっ、とした表情で固まるケインお兄ちゃん。
「明季さまに、ご迷惑が掛かるようでしたら、報告致します」
「分かったよ、イオリちゃん、控えるよ」
なんだ?何のお話だ?
(イオリちゃん!その話は、ここまでにしてくれ!お願いっ!妹の前だ、俺、こいつに嫌われたくないんだよ!)
(でしたら、お控えください!噂が酷すぎます!)
噂?
(行く先々の街で女の子をナンパして、トラブルばかり!修羅場のケインとは何事です!なんですか!この二つ名は!ここにも逃げてきたのではないでしょうね!?)
ち、ちょっと!?お、お兄ちゃん!?
修羅場?女の子に、酷いことしていないでしょうね!?
「……ケインお兄ちゃん、どうかしたのぉ?汗?」
ギロッ!自然と目に力が入る私……。
「ん?な、なんだ?もう時期、新月だからなぁ。汗、多いのかなぁ?あ、そう言えば明季、近々ダンジョン潜るんだって?」
あ、話題を変えようとしている!だ、騙されないんだから!
「一つ教えてやるよ!足の裏に意識を向けると、周囲索敵、空気の流れを感じることができるぞ」
「え!?」
「獣人族特有の能力だ。エルフやオークも少しは使うが、まあ俺達ほどではない。試しに使ってみな」
「う、うん!ありがとう!ケインお兄ちゃん!」
(ケイン様、明季さまの素直な笑顔、眩しくありませんか?)
(うっ!な、なんだよ?イオリちゃん!そういじめるなよ!)
ん?また、含みのある念話を交しているぞ?
私には聞かせたくない話題かなぁ?
「派遣の件、季羅お父さんやランお母さんに話しておくよ」
ギロッ!おっと、忘れるところだった!ケインお兄ちゃん、変なところ寄り道しちゃイヤだよ。
「寄り道しないで、ちゃんと伝えてね?」
「お、おう!任せておけ!アッキー!」
そろり、とケインお兄ちゃんに近づく私。
「なんだ?明季?」
「フンフンッ……あれ?香水の匂いしない?」
「!!!!!!!ええええっとおぉ、しないぞぉ?」
「じゃケインお兄ちゃん、ポシェット商会って知っているよね?魔石専門の商人さん!」
「……さあ?」
「え?知らないの?」
うそだ!知っているはず!それどころか、当事者でしょう!?
「……じゃまた来るから!」
「あっ、ちょっと1ケインお兄ちゃん!?」
ケインお兄ちゃんは、慌てて犬鷲に変態し、窓から飛び立った。
慌てている割には、しっかり服、摑んで飛んでいったなぁ。
「アッキー、人が悪いですよ。香水の匂いなんてしませんでしたよ。もしかして聞こえていましたか?」
「聞こえた。ケインお兄ちゃん、女の子に酷いことしているのかな?」
……さすがに直接は聞けない。
直接聞いたがいいのかも知れないけど、まあそれは季羅お父さんや、ランお母さんに任せるとしよう。
「ケインさまの名誉のために言いますが、不誠実な方ではありませんよ、困っている方(主に女性)に必要以上に親切にされるそうで。それが元でトラブルに巻き込まれるとか」
……困っている方って、絶対女性だ。
それに、最初はナンパって言っていた!
まあ、いいけど。いや、よくない。
私としては、ケインお兄ちゃんには誠実であってほしい。
うーんケインお兄ちゃんの性格的に、誠実は駄目なのかな?
ハーレムタイプのお兄ちゃんなのだろうか?
もとゴブリン男子の私としては、少しだけ分かる。
女の子の胸元とか、腰とか、髪とか、唇、ちょっとした動きに目が向うのだ。
男子全員がそうではないと思うけど、ゴブリンの時は、そうだった。
気になる女の子ゴブリンがいただけで、意識が向いてしまうのだ。
私は、そこで止まったけど、ケインお兄ちゃんは、行動するタイプなのね。
……はい、私はスケベーなゴブリン男子でした。
でもニトお父さんは、リュートお母さん、一筋だった。
とても大切に想っていたなぁ。
あ、多分、今でもそうだろうなぁ。
コンコン、ドアが鳴る。
「あ、護武鈴好!イオリちゃん皆来たよ!」
「はい、用意はできていますよ!」
私は嬉々としてドアに向った。
次回投稿は 本日 2023/05/24 22時の予定です。




