【第70話】 入学式までに
今晩は。
本日2回目の投稿です。
「では、私はそろそろ孤児院に帰るぞ」
席を立とうとするシンお姉ちゃんの袖を、自然と摑む。
「明季?」
「帰るの?」
「おい、涙声で何言っているんだ?すぐ会えるだろう?」
自然と頭が下を向き、目線がさがる。
やっぱ、一人は駄目か?私?
いつからこんなに弱くなった?
いや、これは弱さか?
心に素直なだけなのでは?
ううっ、自分を納得させようと、色々考えを巡らしたが、いざとなると、シンお姉ちゃんと一緒がいい。
自主的に旅に出るならともかく、王都で勉強してこい!ってことでしょう?
私は、嫌だ!と言えない子供なのです!
「あ、大事な取説事項があった!」
シンお姉ちゃんは私の頭を撫でながら、イオリちゃんとお話を進める
「なんでございましょうか?」
「明季と私は血の繋がりが濃い。毒の攻撃を受けたとき、治療に私の血を使ったのだ。それ以後、明季は私を二人目の母親と認識しているらしい」
「分かりました、シンさまは、お姉さまであり、お母さまなのですね?」
「そうだ。それともう一つ、先程も言ったが明季は一歳だ」
「はい」
「だからといっては何だが、その……」
「?」
「夜中に寝ぼけて、たまにだが、吸いに来るんだ」
「すい?何をですか?」
「乳を吸いに来るんだ」
「は?」
「本人は無自覚で、意識していないのだが、魄が寂しがって夜、徘徊するのだ」
妖怪じゃんまるで……あ、これは嫌われたかな?
雇用契約解消か?怖いよね?身内ならまだしも。
ホラーだよ。
自分でも怖いし。
でも、無意識だから、今のところ打つ手無しなんだよな。
「吸わせろと?」
え!?そっち!?
「まさか!そこまでする必要は無い!寝ぼけて彷徨っているのだ、部屋には必ず鍵をしてくれ、その内諦めて寝るから。あ、雇用契約解消するならしてもいいぞ」
……残念だが、これは仕方ない。
「契約を解消ですか?その選択はありえません。その、心配なのは、私が鍵をした場合、他の寮生を襲う、とかないですよね?」
「……」
ち、ちょっとシンお姉ちゃん!?
伝説のホルダー阿騎は、別の意味で新たな伝説を作りそうだよ!
ん?待てよ?
「シンお姉ちゃん、イオリちゃん、大丈夫だと思う」
「そうなのか?明季?ならその根拠は?」
「最初はランお母さんだけだった。次がシンお姉ちゃん。アイお姉ちゃんは私のオッパイに来ない、残念がっていたわ。でも、アイお姉ちゃんと旅をして、アイお姉ちゃんが大好きになると……」
「ああ、そうか、誰でもいいわけではないのだな。イオリナは今日、出会ってすぐだし、当分は心配いらないか。ま、用心のため鍵はしといた方がいいな」
「……大好きな人のバストを無意識に求めるのですね?」
……あれ?
イオリちゃん?
なんだか、目が怖いのですけど?ブツブツ呟いているけど??
「分かりました」
「ああ、それぐらいかな?」
「一日も早く、私の所へ来てくれるよう努力致します!」
「「え?」」
イオリちゃん?
「き、君は独身であろう!?身内ならともかく、こいつがしている行為はとんでもないことだぞ?」
「受けて立ちます」
……とんでもない行為か……なんか傷つく。
で、その行為を受けて立つと?
「そ、それでいいのか?」
「望むところですっ!」
「で、では、これで私は帰るが、見送りはいいぞ、イオリナとお話をしていろ。イオリナ、また明日来る」
そう言って、シンお姉ちゃんは部屋を出て行った。
「……ふう」
「お茶を入れ替えますね」
「あ、はい」
新しい生活が、今から始まる。
ん?外が騒がしい?
「クラブ活動ですよ」
「え?」
どんなクラブ?身体能力はそれぞれだし?
陸上部とか野球部、サッカー部とかはないか。
「主に弓、剣、馬術、等が盛んでしょうか、後は楽器、合唱、絵、料理等も盛んですよ」
「ふうぅん」
早速、情報ゲット。
ん?
あ、クッキー!
「どうかされましたか?」
気づくの、早い!
「躍息を思い出しました。エルフの像のある公園で、待ち合わせを」
「門限は19時ですが、大丈夫ですか?それにお召し物は?」
「門限までには帰ります。あと、服はいりません」
意思を操作して。
「!」
「アンアン!」
「ここここれはっ!」
この姿で、オーク屋のクッキーをも……
無言で抱きしめられた。
(なんと愛らしい!金狼と思っていましたが、こ、このお姿は反則ですっ!)
イオリちゃん、犬派?
目がウルウルである!
窓を開けといて下さい、19時までには戻ります。会う相手は副生徒会長姉妹です。
「分かりました、お気を付けて。では私は夕飯の支度を。好き嫌いはありますか?」
ありません。
そう言って私は、窓からこっそりと抜け出した。
目指すは、エルフの公園。
イオリちゃんはメイドさんと言うより、家政婦さんだね。
軽く王都を抜け、夕方のエルフ公園に到着する。
一度きた場所、思いの外早く着く。
ここは、いつも、誰かがお掃除をしている。
花壇のお花も綺麗で、皆に愛されている公園だ。
私の鼻は巧みに、ボンバーズを探し当てた。
お掃除している?
そして聞こえてくる二人の声。
「入学式と始業式、どうかな?」
「式の騎士団警備?」
「今回は騎士団じゃないと押さえられないよ」
「そうね、ハーピーの姫でしょう、オークの幹部、コボルトの王子、ポシェット商会、そして獣王の
姫。今年の一年生、荒れないかなぁ心配だよ」
「ホッシー、入学式で一曲歌うんだって?」
「トルクちゃんが歌わせるらしい」
「無茶振りじゃないでしょうね?」
「ホッシー、燃えているけど?アッキーに聞かせるんだって」
「アッキーかぁ、助けてくれたのに……」
「生徒会の権力、最大限に使いまくって仲直りしよう!」
「そうだね!」
……この二人は?何を企んでいるのだ!?
「アンアン!」
「「!」」
「くぅ~っん」
「クッキー!」
「ペロ!」
さあ逢いに来たよ!
そのポケットの中のクッキーを私に!
匂いで分かるのだよ!ん?この匂いは?
「ほら、ペロ、クッキーだよっ!」
「お姉ちゃん、甘いわ。ほらクッキー新作のお肉よ!」
「え?なにそれ!」
「ワインに漬け込んだ、トビトカゲのお肉よ!精霊の導きで作り出した新製品!市場で凄い人気なの!」
え?それって?
次回投稿は 2023/04/10 20時頃の予定です。
サブタイトルは 入学式までに2 です。




