【第69話】 生活、楽になる
今晩は。
夜です。
投稿です。
「明季!大丈夫か?探したぞ!」
「シ、シンお姉ちゃん!」
(ここは建物が入り組んでいるし、変な匂いが多い。気を付けないと酔いそうだ。明季、何があった?落ち着いているようだが、汗が病的だぞ?)
人に酔って、疲れたみたい。
(どんなに満月が近づこうと、気持ち次第では力を発揮できないからな)
「こちらの人が、助けてくれたの、メイドナ家の……」
「メイドナ家・バ・イオリーナ・バウリスと申します、以後お見知りおきを」
ちょこん、と挨拶するイオリちゃん。
「メイ……!王都の名門?あ、私はシュート家・マ・シーウ・シャンソンだ。妹が世話になったようだな、ありがとう」
「シュート家・マ・シーウ・シャンソンさま、私を雇われませんか?」
「「え?」」
イオリちゃんはこの学校の卒業生だった。
あ、本年度の。
とても優秀で、各騎士団からお声が掛かったらしい。
そんなイオリちゃんが、私付きのメイドさんになった。
すると……とにかく王都での生活が楽になった。
王都案内役ができたのだ!
学校の情報も、学校以外、王都、その周辺情報も手に入るようになったのだ。
北のゴブリンさん達の推薦と聞くと、季羅お父さん、ランお母さん、シンお姉ちゃん、エノン、すぐに雇いましょう!となった。
北のゴブリンさん達と、獣人族は嘗て無いほどの繋がりが出来はじめた。
その繋がりに、ン・キングも加わり、北と東の地はより強固に、安定し始めたそうだ。その信頼関係は絶大。
その北のゴブリンさん達の推薦、これは助かると大喜び。
まあ、ゴルちゃんとシルバーっち、仲いいから自然とリアル世界に反映されるのだろう。
その日の夕刻には、イオリちゃん雇用の話し合いが始まった。
場所は、寮の私の部屋だ。
出会ってその日には、もう寮暮らしで(イオリちゃんが全て手配してくれた)入学式、始業式の用意までしてくれたのだ。
それプラス、イオリちゃんは、寮住み込みなので実質イオリちゃんと二人暮らし!夜も、夜中のトイレも怖くないのだ。
多分、私や、シンお姉ちゃん、エノンだけだったら、ここまで辿り着かない。
事務手配でパンクしていたのでは?
一年生から頑張ります、とは言ったものの、こんな広い部屋、一人で寝るなんて無理。
泣き出して、孤児院へ絶対帰るのがオチだ!
やはり私はこれからの生活、期待と不安は 3:7で不安の方が大きい。
阿騎は施設で、一人だったけど、もう私は家族の温かさを知ってしまった。
アイお姉ちゃんやシンお姉ちゃんの、優しい手を、ランお母さんのよしよし、という優しい声を知ってしまった。
弱くなったのかも知れない。
だけど、家族を安心して慕う気持ちは、私が知らなかった感情だ。
別の意味では、亜紀にはない、強さが明季にはある。
人と接するのは怖いけど、怖がってばかりもいられない。
色々な意味で、強くならなければ。
そして、大きくなって、皆に会いに帰るんだ。
ああ、これが私の目標だ。
……まあ、失敗したり、耐えきれなくなったら、アイお姉ちゃんに会いに行こう。
きっと笑って歓迎してくれるだろうな。
「お金はいりません。この日のため、一族、死に物狂いで己を磨き、働いてきましたから」
いや、だからそんなお話聞いたら、余計、ただ働きさせられないよ!
私が、いや私達が今日一日だけで、どれだけ助かっていると?
「形だけでも、受け取ってくれ」
優しく、真剣な表情で話すシンお姉ちゃん。
「私からもお願いします」
「明季さまが、そう言われるのであれば」
どっちゃり。
シンお姉ちゃんは、金貨の入った袋をテーブルに置く。
「一月分だ」
「これは……多過ぎです、1年分はありますよ?」
「相場が分からん」
「私が、悪い人だったらどうするのです?」
「ふふっ、あの、笑わないフーララがニッコリ笑って推薦したのだぞ?」
「ぶっ!」
思わず吹き出す私。
あ、シルバーっちも笑っている。
「それに、イオリナからは、働き者のいい匂いがする、悪人ではない。悪人であったとしたら、我々獣人族が、人を見る目がなかっただけのこと」
シンお姉ちゃん、女の人に匂いのお話は駄目だって!
ほら、イオリちゃん、青いお顔でチラリと私を見た。
きっと聞かれるぞ、私ってどんな匂いなのですかって。
こうして私の寮暮らしが始まった。
まさか、もう寮に入るとは!
最初、トルクちゃんから寮のお話を聞いたときには、心、痩せたよ!
心の準備どころではない、その場で返答だもの。
前向きに考えて、返答したけど。
亜紀の目には一人ぐらしかぁ、と、期待と不安が入り交じって映った。
阿騎の目には、おっもしろいっ!自由に行動ができる!と活発に考え、元気に映る。
そして明季の目には、唯々不安で、一人は嫌だ、皆と一緒がいい!と映った。
今は少し、いやかなり明季は安心しているけど。
まあ、イオリちゃんと一緒だからだ。
一人かぁ、と心細くなっていたが、お付きのメイドさんとの暮らし、とんでもない贅沢だが、不安が少し、解消された。
総合すると、この異世界での一人暮らしは、私には相当負担だったようだ。
メイドナ家を用意してくれた、メイドンや北のゴブリンさん達、シルバーっちに感謝だ。
「明季の取説を、軽く話しておくか」
え?
「はい、お願い致します」
「詳しくは後日話すとして、まず明季は一歳だ。そして少なくとも、2体以上の精霊が憑いている。獣人族だから生活は月に影響され、力の最高時には召喚士になり古代の兵器や戦士を召喚する」
……とんでもないヤツだな、私は。
「驚かないのか?」
「闘神さまの伝説が残っていますので、おおよそは分かっていました」
「ほう?」
「闘神さまも一歳で戦っていたようです。複数の精霊に祝福され、ゴブリンと同時にネクロマンサーでもあった、と伝わります。魔王の眷属と対峙し、時には空を自由に飛び、また地の底よりスケルトンの王を召喚し、その軍勢でン・ドント大陸を守った、とあります」
……とんでもないヤツだったんだな、私は。
次回投稿は、2時間後くらいです。
サブタイトルは 入学式までに です。




