女神
「はあああああ!?なんでアンタが来てんのよ!!」
いきなり響いた怒鳴り声に、思わず肩が跳ねた。
振り向くと――
そこには金髪の女が立っていた。
整った顔立ちに、どこか神々しい雰囲気。
……なのに、口調がひどい。
「え、女神様……ですか?」
「そうだけど!?あぁもう最悪!またやったわね、あのバカ天使!!」
(……“また”?)
嫌な予感しかしない。
「本来は勇者を呼ぶ予定だったのよ!
なのに何よアンタ!どこの無名高校生!?」
「初対面でそれ言う!?」
「能力値も低いし、完全にハズレ!」
「追い打ちやめて!?」
女神は大きくため息を吐いた。
「……まぁいいわ。結論から言うわね」
絶対よくない話だこれ。
「アンタ、召喚ミス」
「軽っ!!」
「軽くないのよ!魔王軍が強くなりすぎて勇者候補がどんどん死んでるの!
こっちは人手不足で大変なのよ!」
「ブラックすぎるだろその世界……」
「はいはい説明終わり。スキル渡すから受け取りなさい」
雑すぎない?女神が指先を振ると、青白いウィンドウが目の前に現れた。
******
<鑑定>
<アイテムボックス>
<固有スキル:人身売買>
******
「……は?」
一瞬、思考が止まる。
「いや待て。最後」
「あーそれ?本当は<人心掌握>の予定だったんだけど、天使がミスったのよ」
「ミスで“人身売買”になる!?」
「私は悪くないわ。全部天使のせい」
「責任取れよ!!」
女神は俺の叫びを完全に無視した。
「とにかくアンタはこれで異世界行き。
代わりはいくらでもいるけど、まぁ……せいぜい頑張りなさい」
「扱い軽すぎない!?」
足元に魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、まだ心の準備が――」
「準備しても結果変わらないでしょ」
「言い方ァ!!」
光が強くなる。
「そうそう、私の名前はマリアね」
女神は最後に、面倒くさそうに付け加えた。
「――言っとくけど今回の件、全部天使のせいだから」
(最後まで最低だこの女神!!)
光に飲み込まれながら、俺は思った。
異世界に行けたら、何かが変わると思ってた。
でも――
こんなスタート、聞いてない。




