陰キャでも異世界に行きたい
「‥‥え?」
放課後の帰り道。
俺の視界の端で、何かが光った。
歩道のすぐ脇――
アスファルトの上に、青白く輝く魔法陣。
ゆっくりと脈打つそれは、どう見ても現実のものじゃない。
「なにこれ……」
「おい蓮、近づくなって!」
親友の神谷翔が、焦った声で止める。
「絶対ヤバいやつだろそれ!」
「でもさ、こういうのって――」
(触ったら、何か起きる気がする)
「お兄ちゃん、ダメ!!」
妹のひなが、珍しく強い声を出した。
――でも。
「大丈夫だって」俺は、手を伸ばした。
バチッ――!
触れた瞬間、視界が弾けた。
「うわっ――!?」
体が浮く。音が消える。
世界が、崩れる。
「蓮!!」
「お兄ちゃん!!!」
翔とひなの声が、遠ざかっていく。
伸ばした手は、届かない。
光に飲み込まれながら――俺は思った。――ああ、これ。
もしかして。
異世界、来たんじゃね?
***
気づけば、俺は白い空間に倒れていた。
「いってぇ……ここ、どこだ?」
体を起こすと、そこはまるで神殿のような場所だった。
天井には巨大な魔法陣。足元は雲みたいに柔らかい床。
(うわ……マジかよ……)
(完全に“異世界スタート地点”じゃん……!)
胸が高鳴る。
現実の俺は、どこにでもいる高校二年生。
名前は藤崎蓮。
友達は少ないし、クラスでもほとんど喋らない。
いわゆる“陰キャ”ってやつだ。
でも――
(もし異世界に行けたら)
(俺でも、何か変われるんじゃないかって)
そんな妄想、何度もしてきた。
その時。
「はあああああ!?なんでアンタが来てんのよ!!」
甲高い声が、空間に響いた。




