女神
眩い光の中から意識が浮かび上がり、蓮はふわりと宙を舞った。
そしてドサッと柔らかい床に落下する。
「いってぇ‥‥ここ、どこだ?」
目を開けると、金色の光が溢れる神殿のような空間。
天井には巨大な魔法陣が輝き、足元には雲のような白い床が広がっていた。
(神界っぽい‥‥!完全に異世界チャンスじゃん!)
胸が高鳴ったその時ーー
「はあああああ!?なんでアンタが来てんのよ!!」
甲高い声が響いた。
見ると、金髪を巻き気味にまとめた美女が、全力で顔をしかめていた。
神々しい雰囲気はあるのに、その口調だけで全部台無しにしている。
「‥‥え、あなた女神様?ですよね?」
「そうだけど!!何っ!?あぁもう最悪。あのバカ天使!!!またミスったわね!」
「えっ?えーー?」
(‥‥ミス?今ミスって言った?)
女神はヒールで床をカンカン鳴らしながら、空間の一点を睨みつけた。
「こっちの世界を救う勇者候補を呼ぶように言ったのよ!?
なのに何よアンタ!どこの無名高校生!?
能力値も弱っちいし!!」
「ひどくない!?初対面でソレ言う!?しかも全部事実だけど!!」
女神はため息を吐きながら、両手を腰に当てた。
「もう‥‥ホットにあのバカ天使、クビにしたい‥‥」
面倒くさそうに女神から説明を受ける。
「あーはいはい、一応説明しとくけど。
アンタ、"召喚ミス"ってこっちに来ちゃったって感じ。
可哀想だけど」
「召喚ミスってそんな軽いノリで‥‥」
「軽くないのよ!最近魔王軍がクソ強くなってきたせいで
こっちの勇者候補みーんな殺されてるんだから!ほんと洒落になってないの。
こっちは人材不足で頭抱えてんのよ!」
「勇者ブラック企業みたいな世界‥‥?」
「黙りなさい。ホント、ろくでもない時にロクでもない人材を拾っちゃったわ‥」
「人材扱いは傷つく!」
「本当なら"万能チート勇者を"呼ぶはずだったのに‥‥
バカ天使が間違えて、アンタみたいな陰の薄い高校生を拾ってきたわけ」
「陰の薄いって言うわないで!?いや合ってるけど!!」
女神は説明中なのに、イライラを隠そうともしない。
(‥‥この人、絶対に性格悪い‥‥)
女神は面倒くさそうに指先を振って、青白いウィンドウを蓮の前に開いた。
「でもまぁ‥来ちゃったものは仕方ないから。
一応、最低限のスキルだけ渡すわよ。文句言うわないで受け取りなさい」
******
<鑑定>
<アイテムボックス>
<固有スキル:人身売買>
******
「ちょっ!!最後のやつ何!!?」
「あーそれね。
本当は<人心掌握>を渡す予定だったのに、あのバカ天使が入力ミスったのよ」
「入力ミスで<人身売買>つける天使ってなんなの!?
てか、女神様も確認しようよ!!」
「悪いのは全部天使だから。私は悪くないわ」
「いや最低か!!」
女神は蓮の叫びを完全にスルーし、淡々と続ける。
「とにかくアンタ、これを持って異世界に行って。
代わりなんていくらでも呼べるけど、まぁ‥‥
せいぜい死なないように頑張りなさいな」
「雑!!送り出し雑すぎない!?」
「魔王軍のせいで人手不足って言ってるでしょ!!
忙しいのよ、こっちは」
そう言うと、蓮の足元に魔法陣が光はじめた。
「ちょ、まだ心の準備がーー」
「大丈夫よ。アンタみたいなの、準備しても結果は変わらないから」
「言い方ぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「そうそう私の名前は女神マリアね!
言っとくけど今回はあたしは全然っ悪くないから!!
全部、"天使のせい"だから!!」
(最後の最後まで最低だこの女神!!)
胸の高鳴りとツッコミを抱えながら、
蓮は異世界へと落ちていった。




