第42話 退却成功、その後の顛末
ようやくピリピリした戦記もどきモードから脱出(`・ω・´)
まあ、背景情報が戦記っぽいだけで、ルイたちの目線では小鬼退治の連戦ですが。
ええ、あくまでも、序盤のちょっとだけボリューム感のあるクエストです。
ルイたちを含む、エテルナ冒険者ギルドは、無事にイースの大森林からの退却戦を終えた。
そして、その近隣の街の近くに野営を展開していた。
野営を展開して二日目の朝、ルイたち四人はリックの天幕に顔を出していた。
「おはよう、リック君。」
「やぁ、ルイ。おはよう。」
リックは、ルイに応えて、書類から目を離して椅子に背を預けた。
「そう言えば、ルナーク君は?」
「ゆっくり眠ってもらってるよ。――かなり、頑張ってもらったからね。」
ルイの言葉にリックが肩をすくめた。
すると、セルヴァが苦笑した。
「かなり、ね。」
「超広域の高等魔法での牽制を二回。万一の奇襲を避けるための退却中の断続的な広域索敵。――倒れこそしなかったけど、相当に負担をかけてたからね。」
それから、リックは微笑した。
「じゃあ、次に街で休んでもらう人たちに伝えてやってよ。」
「それ、順繰りにする必要あるのかな?」
ルイが首を傾げると、リックは首を横に振った。
「300人以上の冒険者が、何の報せもないのに、街の宿や飲食店になだれ込んだら対応に困るだろ。あと、小鬼が攻めてくる可能性だって皆無じゃないんだ。」
「なるほどねえ。」
ルイは相槌を打った。
すると、リックは肩をすくめた。
「今後、依頼人になるかもね。だから、あまり悪印象を与えるなって話さ。」
その言葉に、セルヴァが苦笑した。
「やはり、ある程度は退却が前提だったようだね。」
「食い下がるなぁ……もう一回いうけど、その可能性を織り込んでただけだって。――わざわざ大人げないこというなら、それはもう政治の話なんだよ。」
リックの言葉にウィルが首を傾げた。
「政治?」
「小鬼への対処は王国軍の管轄なんだよ。――だから、僕たち冒険者は、どこまで行っても遊撃隊。それもお株を奪わないように動くことが求められる、ね。」
ルイとウィルは釈然としない表情で返し、アルトは瞑目して沈黙していた。
セルヴァが一人、切り返した。
「いまいち納得がいかないね。少し、いやかなり不合理だと思うけど。」
セルヴァがそう言うと、リックはうなずいた。
「合理性なんて目的次第さ。素朴に考えれば、小鬼を無力化すればいい。だけど、今回の作戦でギルドがそれをやると、王国は面子を潰されるってわけ。」
「面子、ねぇ……」
ルイが含むところのある態度で相槌を打つと、リックは首を何度も横に振った。
「まあ、そこは個人の自意識じゃないんだ。王国がやるべきこともやれなかった。――そんな印象を王国民が持って、統治がうまく行くと思うかい?」
「――あ。」
ルイが固まると、リックはうなずいて続けた。
「確かにエテルナ王国は封建制度ではあるけれど、それでも、死なせない、辛苦を舐めさせない、そんな信頼で王国の権威は強化されてるからね。」
「だから、小鬼に対処できないと思われちゃいけない、かぁ。」
そう言ったルイに、リックは微笑した。
「よくできました。――まあ、さっきもいった通り、これは大人げない物言いさ。君たちが前提にしなくていいことを、必要もないのに開示してるから。」
「――いや、同年代なんだけど?」
ルイが口を尖らせると、リックは肩をすくめた。
「はいはい。」
「――あ、リック。その……」
アルトが何かを言い淀んでいると、リックは微笑した。
「マリウスさんのことが心配なら、行ってやってください。――小鬼が、むざむざ地の利を捨てても平野の戦いを仕掛けてくるとは思いませんので。」
「ありがとう。」
アルトに続いて、セルヴァが言った。
「それじゃあ、僕らは、次の人たちに伝言して、それから持ち場に戻ろうか。」
「ああ、頼むよ。一応、気を抜かないようにね、といっておくよ。」
四人はうなずくと、踵を返して天幕を出た。
そうして、アルトは医療班の天幕に向かい、ルイたちは持ち場に向かおうとした。
「――失礼。ここの指揮官にお目通りできるかな?」
ルイたちに話しかけてきたのは、馬に乗った黒髪の青年だった。
涼しげな顔立ちと、意匠を凝らした軍服が、印象的だった。
「――あ、ええと。わ、わかりました。」
ルイは気圧されたのか、あっさりと承諾してリックを呼びに行った。
そして、間もなくリックが天幕から出ると、青年は下馬した。
その青年の姿を見たリックは、姿勢を正して一礼して、言った。
「お初にお目にかかります。エテルナ冒険者ギルドのリックと申します。階位は、白銀の第一位。アークス侯爵家のマイルス様とお見受けいたしますが。」
「ああ、いかにも。マイルス・アークスだ。――しかし、君は……」
黒髪の青年、マイルスが言葉を選んでいると、リックは柔かく笑って言った。
「私のような者に、下馬していただき恐縮です。――引継ぎの打ち合わせならば、そちらの詰所に伺いましょうか?」
リックはルイたちに目配せした。
ルイたち三人は、リックにうなずいて、そそくさとその場を離れた。
そして、遠ざかってゆくリックとマイルスの姿を見送った。
それから、ルイたちは胸をなでおろした。
イースの大森林での小鬼退治(Side ルイ)はここでおしまいです。
小鬼たちによる騒動はもう少し続きますが、それはもうルイたちの外側のお話。
次回からは、ルイたちの日常に戻ります(`・ω・´)




