050 東照凱人37
「遅いな……あの忍者は腕はどうなんだ?」
「機動戦においてはかなりの手練です。魔物にも詳しいので急所をつくこともできるでしょうし、少し嫌な予感がしますね」
野営地で待機して姉ヶ崎たちを待っているが、一向にやってこない。
そこまでの距離は離れていないため、追いついてていいはずの時間だ……それに、
「ヤイア、この霧どう思う?」
周りには早朝でも湿地帯でもないのに霧が発生していた。先ほどまでの状態と比較すれば、いささか不自然な霧の発生。
「魔法かあるいは……」
「勇者の能力か……」
人族なら魔法の使い手がいる可能性は否定できない。むしろ、地理に詳しい現地に近いやつのほうがいいか。
となると、この世界の奴の可能性が高いな。
「……ん? さすがに濃すぎるな」
「ですね……そもそも周りの気配がおかしいです」
「獣人族は魔力感知はできなくても、人とかの気配は人一倍感じれるだったな」
「はい……みんなの気配が消えてます。分断された?」
「察しの良い方がいるようですねぇ」
霧の中からそのような声が聞こえ、ゆっくりと長身の男が現れる。
「お久しぶりですよぉ」
「お前……こんなところにいるとは珍しいな」
「わたしとしてもそのとおりですよぉ」
「お知り合いで?」
「あぁ、こいつは――ネクロマンサーだ」
「ネクロマンサーって、何でそんな人が!?」
昔の旅で、一度こいつがつくったキマイラと戦ったことがある。かなり苦戦を強いられたがどうにか勝利することができたが、こいつ自身は逃がしたな。
「わたしとしましては、一対一で話をしたかったのですが、まあ獣人の方なら良いでしょう」
「どういうことだよ」
「人族と魔族の戦争地でアンデットの問題が起きているのはご存知でしょう」
「まあ知ってるが……お前の仕業だってのか」
「いえいえ、むしろわたしとしては無差別なアンデットなど芸術の芸の文字もないのです! ですが戦争の規模が規模なのでわたしひとりでは難しい。そしたら、貴方が戻っているというじゃないですか」
「……あいつらか」
盗賊ギルドのやつらは、そういえばこいつとも関わりがあったな。こいつもネクロマンサー術事態は禁術だが、それで人間を襲うとかそういうやつじゃないから扱いが面倒くさいんだ。
「獣人の国はそれを解決しようとしていると聞いております」
「それはそうですが……ネクロマンサーを簡単に信用しろと」
「……まあ、難しいとは思いますが。あえていうならわたしというより問題解決で何かあるならば手伝いをいたしますよという話です」
「ガイトさん」
「こいつはよくも悪くも馬鹿正直だ。キマイラ――つまりは合成アンデットでつかった死体の種類を事細かに俺に開示してくるようなやつだったからな」
「光栄です」
ほめてねえ。
「まあ信じろとは言わねえけど、今は気にしないで置いてもいいってところだ」
「なんでしたら、魔族側のほうで少し働いてまいりましょうか?」
「どういうことだ?」
「過激派がどうやら獣人国に攻撃しようとしているらしいですからね。それを一時的に抑えてきましょう」
「……勝手にすればいいだろ」
「そうでしたね……では、最期に――勇者に似た気配を持った未熟者の気配が5つほどここに近づいてきていますからお気をつけて」
「――!?」
奴はそう言って霧の中に消えていき、しばらくして霧が晴れる。
「ヤイア! 無事だったか」
「東照くん!」
「だ、大丈夫です」
「俺は大丈夫だ……それより、阿多野。またあいつらの誰かがくるぞ」
「……わかった!」




