043 東照凱人32
後日、準備を整えて人族領と獣人族領の境目近くにある村に来ていた。
過激派の筆頭は俺たちを召喚したあの国なわけなんだが、まさかそいつら投入してくるとかないよな。
あいつら聖剣か特殊能力持ってるんだぞ。この世界人でも手練なら対応できるが、一般兵だといささか分が悪い。
まあ――さすがにないか。
「うぅ、なんで僕まで」
「諦めろ。お前が俺たちを連れてきたんだから、ある意味必然だ」
現場にはヤイアも共にきていた。
とはいえ、ヤイアも獣人族側であるため、基本的には村での待機と連絡役としての立場だが。
現在は、村周辺に数人がかりで魔法の結界を張っているらしい。人族側から人が入ってくると感知できる仕組み――らしいけど、獣人が使っているのは初めて見たから詳しくはわからない。あくまで聞いた話だとそんな感じだ。
「何者かが入ってきました。その数3名!」
少数精鋭か。というかいきなり交渉もなしに攻撃してくる可能性はないのか。
でも、すでに寸前ってことは交渉が何度かきた上での状態かもしれない……もっとそこを聞いておくべきだったか。相変わらず、俺ひとりだと限界があるな。
「とりあえず、いってくるか……こそこそと隠れながらな」
俺は村から外に出て、誰かがきたという森の中を警戒しながら入っていく。
***
数分で相手には遭遇した。とはいえこちらは隠れていて、あっちは気づいた素振りは見せていない。
そしていらないフラグは立てるもんじゃないな。一緒に飛ばされた勇者連中のうちの3人じゃねえか。
「東照くん、どうするの……あれって」
「わかってるよ」
小声で阿多野と話す。
姉ヶ崎は反対側の木の上にいて、視線を飛ばしてくる。
「できるなら、実際の遭遇はせずに飛び道具で対処できればいいが……それだと、獣人族を理由に使われる可能性高いんだよな」
「となると、正面から行くしかない?」
「もしくは魔物でも引き連れてくるかだな」
見た感じ、この世界の軽鎧を着ていているが大きな変化はそれ以外ない。
聖剣はしまっているのかそれとも能力を授かったメンバーか……合計3人となると全員タイマン状態にすれば――駄目だな。俺はともかく阿多野と姉ヶ崎には知り合いというか友達のはずなんだ。その上で、あっちは下手すれば洗脳されて容赦なく襲ってくる可能性もゼロじゃない限り、それぞれタイマンに分断する方法は得策じゃない。
どうすればいい――。
「東照くん。私たちのことは気にしないでもいいよ。最悪、しょうがないもんね」
「言葉ではなんとでも言えるんだよ……」
「それなら、証明すればいいの?」
「……は?」
そう阿多野がいった瞬間に、俺が予想もしてなかったアイコンタクトを持っていたらしく、姉ヶ崎が遠くで音を立てた。
「なに!?」
「魔物じゃねえのか。ダンジョンでいくらでも戦ったし楽勝だろ。オレが見てきてやる」
「ふう、ボクは目的の方を優先させたいんだが……いくなら一人でいってくれ」
「そんじゃ遠慮なく行ってくるぜぇぇ!!」
どうやら自我は残ってるらしい。一方的な傀儡になるような洗脳は行われてないのか。
男のひとり――名前は忘れた金髪男子が姉ヶ崎の方へと向かっていった。
「それじゃあ、東照くんは大久保さんよろしく」
「……え?」
いつのまにか能力を発動させていた阿多野も、飛び込んでメガネ男子をどこかに連れて行った。
「おいおい……」
「な、なんなの、これ!」
さて、残ったのは女子ひとりだ。俺の前の席だった大久保。
「しかたねえな……」
さっさとやってあの2人のところいかないと事故でも起きそうだ。
俺はそう思いながら、隠れていた木から身を出した。




