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ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第十一章

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217話 ヒラギス北方戦役 ~激突~

ここまであらすじ

・ヒラギス北方戦役2日目

・ヒラギス南方での疫病の発生を抑え込んだマサルたちは、休む間もなく公都攻略に取り掛かる。しかしそこに狙いすましたかのような魔物の軍勢が襲いかかる。城壁が崩壊していた公都を放棄して後方の町での防衛戦に移るが、魔物の圧倒的な物量に防戦一方となるマサルたちであった。



「動き出しました!」


 オレンジ隊から報告が入った。城壁からも公都付近に集結していた魔物の軍勢が一斉に動き出したのは確認できた。

 エルフの増員はすでに各地に送り込み、俺たちは城壁正面、城門上で固まってしばしの休憩中である。


「そのまままっすぐ来そうだな」


「では予定どおりっすね」


 俺の言葉にウィルが答えた。俺たちの受け持ちは町の北側。主力を中央に、右翼と左翼に一人ずつ加護持ち魔法使いを配置している。ただこの町、かなり広い。3カ所では当然カバーしきれないのだが、魔物も概ね中央に集まってくる。

 軍勢規模ともなるとどうしても街道に沿って移動することになる。魔物だと進軍にさほど統制が取れてるわけでもないのだが、それゆえに尚更移動のしやすい街道に自然と兵力が集中してしまうようだ。気まぐれに脇に逸れたとて、ちょっとした木や藪、岩やほんの小さな段差などの地形の変化にどうしても足は乱れる。結局最初にぶつかり数も多いのは、まっすぐ街道を進んできた魔物の群れとなる。

 万一中央以外に兵を移動させる動きがあったとしても、公都周辺は非常に見通しがいい。城壁に迫られるまでに戦力の再配置をする余裕はある。

 

「ぎりぎりまで引きつけるのよ?」


 エリーの言葉にウィルが頷く。気がつくと戦いの喧騒が静まっていた。朝から城壁に攻撃を加えていた魔物が一旦引いたようだ。

 だがそれはほんの束の間。ハーピーの金切り声を皮切りに、雷鳴のようなオークの吠え声が城壁に到達する。


「弓隊、構え!」


 それに対抗するかのように、ウィルが声を張り上げた。


「撃てっ!」


 号令に従って弓の一斉射が魔物の先頭に浴びせかけられる。命中はしているが弓の斉射は今ひとつ効果がないな。さほど広くない町の城壁はスペースが限られ、面で制圧する撃ち方をするには十分な数が配置できてない。いや、これは魔物の数が多すぎて効果のほどが見えないのか……


「弓隊は各自、空の魔物を迎撃! 続いて魔法部隊、詠唱開始!」


 矢継ぎ早にウィルが命令を出していく。


「ウィルの指揮っぷり、なかなかいいんじゃないか?」


「そうね。わたしがやるよりずっといいわね」


 なんでウィルが指揮をしているのかというと、ヒラギスに来て初めて戦いが長引いたせいだ。こっちの部隊はエリーが指揮を執っていたのだが、エリーは転移でしょっちゅう抜けるし、戦いも24時間を超え休息も必要と、ウィルは探知スキルもあるし単独で前線に出ても自力で身を守れるとやらせてみたそうなのだが、これが思ったより上手く回ったそうだ。

 

「魔力は出し惜しみしないでいい!」


 協力的でしかもエルド将軍自身が最前線に立つこともあるエルド軍と違い、リゴベルド軍はリリアが引っ掻き回したのと元より混成軍なのもあって、指揮系統がはっきりしてない欠点がここにきて露呈した。どうにも前線の連携が悪い。そもそも連携が必要な場面がなかったということもある。

 公都攻略まではそれでもよかった。俺たちの火力を先頭に一気に攻め落とし、あとは制圧するのみ。だが防衛戦となると勝手が違う。特に弓と魔法の攻撃分担が非常にあやふやで、現場で混乱を引き起こし、無駄に魔法を消費することになったらしい。それをウィルに任せている間に、担当箇所と指揮範囲を明確にした。それで俺たちの受け持ちは正面北側。それ以外の三面は帝国軍が主体となって防衛をしている。


「ぜんぜん止まらんな」


 正面の火力は圧倒的だ。エルフオレンジ隊でも最精鋭が範囲魔法を幾重にも被せるように放ち、単発の攻撃魔法と弓が魔法を抜けて突進して来る魔物を確実に捉えていく。

 先陣を走っていた魔物は完全に一掃された。だが探知上には大雑把にも数を把握できないほどの魔物が続いている。エルフが魔法を放つたびに魔物の反応は消えていくが、それ以上の魔物が徐々に城壁に迫ってきている。


「魔法を途切れさせるな! 城壁を守れ!」


 大量に倒れる仲間を物ともせず、魔物の軍勢が城壁へ押し寄せる。火力と魔物の前進が拮抗したように見えたのも束の間、魔物の前衛は徐々に押し上げられ、城壁付近へと抜け出す魔物が目立ち始める。

 破壊音が響き、時折城壁上を振動が走る。オレンジ隊の周囲を守る兵士たちが不安そうにこちらを見る。まだか?

 自らも弓を撃っていたウィルがようやく手を上げて声を掛けてきた。合図だ。

 【霹靂】詠唱開始――


 俺の詠唱を見て手を緩めたか、息切れしたのか。味方の魔法の連打が鈍った隙に、堰が切れたように魔物が押し寄せてきた。頭上で展開されようとしている派手な魔法効果にも魔物の動きが鈍る様子はない。むしろ咆哮が高まり、より勢いを増したように思えるほどだ。

 ぎりぎりまで引き付けたお陰でかつてないほどの魔物が探知内にひしめいている。


「来るぞっ!」


 攻撃の間隙をついた魔物の一群が城壁に突撃、攻撃を加えてくる。城壁が震え、一息で城壁を乗り越えた数体のオークが姿を現した。だがそれも槍で突かれ、剣で切り伏せられる。空からも雲霞のごとくハーピーが押し寄せようとしていた。だがもう遅い。詠唱は完了した。


「テラサンダー!」


 上空の黒雲から無数の雷が降り注ぐ。一瞬の静寂。兵士たちが歓声をあげた。だが再び魔物からの激しい咆哮があがる。倒れた仲間を踏み越え蹴散らし、魔物の軍勢は止まらない。

 城壁間際には相当数サンダーから逃れた魔物が居たが、本隊と分断されては俺たちの火力に抗すべくもなく、個別に駆逐されていく。

 さほど待つこともなくウィルから次の合図が来た。

 再びの【霹靂】詠唱開始――

 断続的に城壁に振動が走る。岩と岩をぶつけるような音。魔物の咆哮に、兵士たちの叫び声。防衛火力が最初より落ちた訳ではない。進軍してくる魔物の陣容が分厚く、幅広くなり、抑えきれなくなっている。城壁に取りつかれ、城壁上の兵士たちとの激しい攻防もそこかしこで発生している。

 二度目の範囲雷撃の発動。レベルが上がった。


「ウィルの指揮でやってると楽でいいな」


 城壁から首を引っ込め、城壁に背を預けてエリーの横に座り込む。指示に従うだけというのはかなり楽ちんだ。


「意外な才能よね。それとも意外でもないのかしら? そっち方面の教育も当然受けてるだろうし」


 詠唱中に右翼でも範囲魔法が放たれた。遅れて左翼でも。アンとシャルレンシアだろう。

 三度目の合図。今度は座ったまま詠唱を始める。範囲も威力も同じなら何の問題もない。


「また器用なことするわね」


「立つのがめんどくさい」


 戦場に背を向けて座り込んでエリーとおしゃべりしながらでもきちんとイメージが出来ていれば詠唱に問題はないし、タイミングは指示に従えばいい。なんならスペースさえあれば寝っ転がって詠唱したいくらいだ。昨晩は一応ちゃんとした睡眠時間は取れたのだが、それでも十分じゃなかったらしく、待っているうちにまた眠くなってきたのだ。どこかで昼寝をする余裕があればいいんだが。


「さすがに少し足が止まったかしらね?」


 三度目の殲滅の後、エリーが城壁から顔を覗かせて言う。


「死体が積み重なって邪魔になってるみたいだな」


 俺もエリーの横から覗かせてもらう。魔物たちは邪魔な死体を脇にどけようと持ち上げて……違う。仲間の死体を盾にして進んできやがった。それで足が遅くなっている。


「どうします?」


 ウィルが俺に聞いてくる。


「もっかい同じのをぶっ放そう。ダメなら魔法を変える」


「了解っす」


 盾は悪くないアイデアだがどの程度効果があるのかね? 矢とか通常魔法を避けるのには十分だろうが、俺の魔法は威力も飛び抜けている。

 四度目の詠唱――

 重い盾を持っていては進むも引くも動作が鈍い。いい的だ。

 ――発動。


「ちょっと残ったっすね」


 全滅してたのが数体、生き残りが出たのが探知でみえた。空からの攻撃も四度の範囲魔法でことごとく殲滅されたせいか、遠巻きに様子を窺っているようだ。側面に回ろうとする動きも見えるが、地上戦力を駆逐できていれば空の魔物の脅威度は低い。


「問題ないな。代わろう。次からリリアが撃ってくれ」


 盾としての効果は僅かながらあったようだが、生き残ったとて五体や十体では城壁の攻略はできないだろうし、無傷というわけにもいくまい。個別に倒すか、次の範囲攻撃で倒せればいい。


「ティリカ、そっちは順調か?」


(問題ない)


 一応召喚獣から状況は把握しているが、念のため尋ねておく。エルド軍のほうはこちらより魔物の包囲が緩いし、オレンジ隊も交代してさほどたってない。


「エルド軍のほうも問題なさそうだ。ちょっと休憩できそうか?」


「魔力酔いしそう?」


 エリーが心配そうに聞いてくる。


「そっちはまだ平気だとは思うけど、思ったより疲れてる」


 疫病騒ぎからの公都攻略。そして防衛戦に堀作り。ひたすら魔法を使っていた。少々使いすぎているかもしれない。


「じゃあ少し休んでおきなさい」


「ならばここは我らでしばらく保たせておこう。それで良いな?」


 リリアの言葉にウィルも頷く。有り難い。このタイミングで前線から離れるのは非常に不安ではあるが、どのみちどこかで休息は必要だ。一時間か三〇分ほどでもいい。眠れれば楽になる。


「エルフの三人にはあとで魔力の補充をしてやるから、そのつもりでやってていいぞ」


 魔力の譲渡には多少の魔力のロスがあるのだが、一度にやってしまえば疲労のほうは普通に何度も魔法を使うよりはるかに少ない。


「わたしは?」


「エリーは自然回復待ちな」


「えー?」


「えーじゃないの。エリーも休んだほうがいいだろ。一緒に昼寝しようぜ」


 補充したらしたでこいつは絶対魔法を撃つ。エルフにも転移持ちが出たとはいえ、今のところ大量輸送できるのは俺とエリーだけ。どちらが欠けても面倒となる。


「まあいいわ。わたしも寝不足だし」


「護衛は師匠が居れば十分だ。ミリアムたちはそのままここを守ってくれ」


 ミリアムの弓は防衛戦力として最強クラスだし、ルチアーナも補充前提なら自然回復分くらいは使っても問題ない。


「ていうか。師匠は休まなくて平気なんですか?」


 せっかくだしがっつり休もうと装備を外しながら一緒に部屋に入ってきた師匠に尋ねる。御年九十九歳。無理は利かないはずだ。


「誰にモノを言っておる。三日や四日程度、寝なくともなんともないわ」


 師匠は元気なのか、それとも魔法使いの疲労が剣士とは質が違うのか。エリーを見てると俺が特別疲労に弱いわけじゃないとは思うんだが。


「鍛え方が足りとらんのだ。これが終わったらまたみっちり修行だな」


「俺のこれは魔力酔いでしょう」


 エルフによればずっと魔法を使っていればそのうち耐性もつくんじゃなかろうかという話だ。魔法使いだらけなだけにエルフにも魔力酔いの症状が出る者もいるそうなのだが、それも若いうちだけ。年を経れば平気になるそうだ。考えてみれば俺が魔法を覚えて一年足らず。きっと体が魔法に馴染むのに時間が足りてないのだろう。


「慣れればいいのであろう? ならば無理やり慣らしてしまえば良いのではないか?」


 なんだその、泳げないやつを水に放り込んで無理やり覚えさせるみたいな。


「そうねえ。マサルの魔法使用に制限があるのは何かと不便なのよね」


「じ、時間が経てばそのうち慣れるって言うし」


 この二人の組み合わせはヤバイ。俺に遠慮も容赦もしない筆頭だ。好きにやらせてしまえばどんなことをやらされるか想像もつかない。ただでさえ魔力酔いで倒れると数日は非常に辛い状態で身動きが取れなくなる。効果もはっきりしないのに、強制的にそんな状態になるのは絶対に御免こうむる。


「そもそも俺の魔力量からしてどうしようもないって可能性もあるんだぞ?」


 俺の魔力は初期のエリーの一〇〇倍は超えている。人に耐えられる限度を超えているということもあり得るのだ。

 とりあえず寝よう。さっさと寝てしまおう。すでにベッドに入っていたエリーを抱きまくら代わりに抱え込む。


「じゃあ少し寝ます。何かあったら起こしてください。ティリカも何かあったらすぐに言うんだぞ」


 連れてきていたほーくがピーと鳴く。

 もぞもぞしてたエリーがすぐに寝息を立て始めた。エリーの寝息と温もりを感じながら俺もしっかりと目を閉じた。





「マサル、起きるのじゃ!」


「ん、おお」


 目を開けるとアンにリリアにルチアーナにシャルレンシアが寝ているベッドの周りに集まっていた。エリーももぞもぞと動き出した。


「魔力補充の時間じゃぞ」


「そうだった。今の魔力量は……」


 ステータスをチェックするとエルフ組はほとんど底をついている。時間はもう昼。四時間も寝てたのか。眠気もすっかり取れてる。

 

 すぐにエルフの三人を集めて奇跡の光の詠唱を始める。俺の魔力は一万三〇〇〇くらいまで回復している。エルフ三人には三〇〇〇ずつくらい分配すればいいだろうか――


 魔力譲渡で魔力は八五〇〇ほど消費していた。エルフ三人には二五〇〇ずつくらい補給できただろうか。リリアは五割超。ルチアーナとシャルレンシアはほぼ八割くらい。

 俺の魔力は四五〇〇ほど。かなり減ったがそれでもルチアーナやシャルレンシアよりまだ多いし、自然回復分だけでも相当魔法は使える。 


「よし。急いで戻るぞ!」


 エルフ三人は補給を受けるとすぐに飛んでいった。外はまだ騒がしい。探知にも相変わらずの大量の魔物の反応。状況はまったく好転してないようだ。

 エリーは俺が魔力補充をしている間にエルフの輸送に取り掛かっていた。


「ティリカは?」


(まだ大丈夫)


 まだ、か。やっとお昼だ。攻撃が多少とも収まる夜まであと七時間ほど。このペースで保つのか? 


「……お昼だし、ご飯にするか。ティリカ?」


 ほーくに呼びかけるとすぐに返事。


(おねーちゃん。マサルがご飯だって。「ご飯ですか! お腹が空きました!」)


「じゃあそっちで食べるか。アンも行くだろ? エリーが戻ったら伝えておいてくれ」


 お昼は手持ちのお弁当でいいか。ウィルに声をかけて状況を確認して……





「ほんと後から後から、どこから湧いて出てくるのかしらね」


 食べながらエリーが愚痴を言う。エリーは多数の魔物を前に魔力休憩を強いられ、相当ストレスが溜まっているようだ。


「そりゃあ北の砦からだな」


 むろん他から侵入できないこともないが、これほど大規模に動かせるとなると、ルートは限定される。まあエリーが言いたいのはもっと根本的な発生原因だろうが、そっちはいま考えても仕方のない話である。


「打つ手を間違えたかしらね。何の役にも立たない公都なんて後回しで北の砦を先に押さえちゃえば良かったのよ」


「後知恵だな」


 それに士気的にも首都を奪還する意義は大きいし、押さえてしまえば防衛施設としても優秀だったはずだ。

 せめて先手を打てれば、公都への襲撃をもう少し早く察知できていれば、公都に籠もる選択肢もあっただろうか。んー、微妙か。敵の数は変わらないし、公都の城壁の修復なんてしてたら俺の魔力は払底してたな。


「今からでも無理かしら?」


「うーん……」


 北方砦の状況次第だろうか。俺がこっそり近くまで移動して、ゲートで少数の部隊を輸送。一気に砦の城壁を制圧する。問題は砦の防御壁がまともに残ってるかどうか。破壊されているとして、すぐに復旧ができるかどうか。

 だが壁さえ抑えてしまえば追加の兵力を一気に輸送して守りを固めることができる。


 しかし城壁を短時間で修復できるほどの魔法使いは俺かエリーだけ。エリーの魔力は温存中だがようやく五割弱。となると俺の魔力次第になるのだが、北方砦の攻略に備えて俺の魔力を回復、温存できる状況かって話になる。


 魔物の大軍勢が迫り来る中での魔力の温存に、戦力の抽出。正気の沙汰ではないが、もし魔物側にさらなる兵力があるなら、どこかで断ち切らねば俺たちに勝機はない。まだ多少なりとも余裕のあるこのタイミングで言い出したエリーの考えもわからないでもないが、せめてどこかの戦線に余裕が出てからじゃないとリスクが高すぎる。


「なんにせよ眼の前の敵を殲滅してからだな」


「そうね。でもこのままでもちょっとまずいかも」


 オレンジ隊は先ほど総入れ替えをした。今の部隊が午後いっぱい保つとして、夜には部隊の一巡目がほぼ終わってしまう計算になる。それで朝まで粘れたとして、この時間に交代したメンバーの休憩時間はおおよそ一八時間。

 問題は普通の魔法使いの魔力の回復が二日。あるいは遅ければ三日かかるということだ。中には一日や一日半で完全回復する者もいるかもしれないが、ごく少数。一日で回復する俺たちは加護の力で最速で回復しているだけだ。


「もしかしてすごくまずいか?」


 エリーと加護持ちとオレンジ隊の魔力状況と予測を互いに突き合わせた結果、このままだと明日になる頃には魔法部隊の稼働率は良くて半分以下になってしまう。良くてだ。最悪の予想だと、攻撃力が全盛時の二割程度だ。


「エルフに更に増援を頼むしかないかしらね?」


「これ以上はさすがに……他にどこかに魔法使いはいないのか? 帝国本国の魔法部隊とかさ」


 ウィルを連れて帝国へ救援要請とか。ダメか。転移ポイントがない。バルバロッサ軍ならどうだろう? あそこに余裕があれば、どうにかこっちに連れてきて……


「戦力なら魔法使いに限らずともここにも十分おるだろう?」


 師匠が突然口を挟んだ。


「いや、しかし……」


 何を言わんとしているのかはわかる。兵士はそれこそ余るほどいるのだ。


「我らビエルスの剣士が魔物ごときに後れを取るとでも?」


 ふむ。普通の軍なんか出した日にはあっという間に壊滅しそうな魔物の勢いで、町から打って出るなど考えもしなかったが……

 剣士隊の精鋭なら恐らくいける。いや間違いなく魔物は打ち破れるだろう。だが魔物の数に十分対抗できるだけの数を揃えるとなると損害がどれほどになるか。


「打って出るのはいいですが、勝てても被害甚大なんてことになるんだったら魔法のほうがいいですよ?」


 それなら魔力が尽きるぎりぎりまで魔物の数を削って、最後の手段として出陣してもらったほうがいい。


「皆無とはいくまい。だがそろそろブルーあたりが我慢の限界だと思うぞ?」


 剣士隊でも血の気の多いメンバーはいずれ出さないと納得しないだろう。それで一度出撃させてみて、被害が大きそうならすぐに撤退すればいい。城壁から余り離れないようにすれば、どうとでもフォローはできるはずだし、ビエルスの剣士隊でも最精鋭を先陣にすれば、全体が崩れることはそうそうあるまい。


 もし剣士隊がさほど被害を出さずに戻ってこられるようなら、それともとても上手くいって魔物を長時間食い止められるようなら、ずいぶんと魔力に余裕ができるし、後々のやり繰りも相当楽になる。

 

「心配はいらん。ワシに任せよ」


 リスクは高いが、他に妙案があるわけでもない。


「お願いします」


 やはり戦場での決断は恐ろしく神経にくるものがあるな。どうかこの決断が間違っていませんように……



漫画版も以下サイトにて更新中です


https://www.comic-valkyrie.com/magazines/ (コミックヴァルキリー本誌)


http://seiga.nicovideo.jp/comic/35999 (ニコニコ静画)


https://comic.pixiv.net/works/5540 (pixivコミック)

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[一言] 進軍してくる魔物の陣容が分厚く、 →進軍してくる魔物の陣容が部厚く、
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