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ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた【書籍12巻、コミック12巻まで発売中】  作者: 桂かすが
第十一章

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215話 ヒラギス北方戦役 ~二日目~

前回のあらすじ

・ヒラギス奪還作戦41日目午後。後方へ流れた魔物への追撃。前線の町への堀作りの突貫工事で、徹夜も相まって疲れて寝る


「朝よ! 起きなさい!」


 エリーの声に目を覚まし、薄っすら目を開けるとすでにあたりはすっかり明るくなっていた。


「朝ごはんができてるわよ。お風呂も入れておいたからとりあえず汗を流してきなさい」


 エリーの言葉通り、パンの焼けたいい匂いが漂っている。ぼんやりしたまま目を閉じ、耳を澄ますと――


「朝か!?」


 やばい。寝すぎた。外では誰かの叫び。そして断続的に聞こえる戦闘音。

 一気に目が覚めて状況を思い出した。


「目が覚めた?」


「今どうなっている?」


 サティもティリカもすでに起きているようでベッドには俺だけだ。


「魔物は一旦引いて再度侵攻の準備中ってところね。もうちょっとゆっくり寝かせてあげたかったんだけど、そろそろこっちも備えないといけないわ。まだ余裕はあるから朝食がてらそのへんを話しましょう」


「急いで汗を流してくる」


 状況が状況だし風呂は省こうかとも思ったが、エリーもひと風呂浴びたようで髪が少ししめり小ざっぱりとしている。俺も目覚ましついでだ。


「で?」


 ざっと汗を流して出るとエリーとサティとティリカが朝食の席で俺を待っていたようなので、すぐに食べ始めた。カリカリに焼いた白パンに何かのジャム。ごった煮スープと、お茶も付いている。

 ここに居る他は城壁に詰めているようだ。


「うちのほうとこの町はマサルのお陰で夜の防衛は楽だったわね。それにもともと暗くなってからの攻撃は少なくなるし。東部砦もオレンジ隊だけで問題なく守れてるわ」


 魔物とて夜は寝る。夜行型のもいるし、寝ないで攻撃してくることも当然あって過信は出来ないが。

 オレンジ隊はエリーが朝に三カ所全部を入れ替えて、そのついでに俺のところへ寄ったのだという。


「マサルが寝てからもしばらくは攻撃が続いたんだけど、朝にはほぼ小競り合い程度にまで落ち着いた感じね」


 そのお陰で交代で睡眠を取る余裕も出来たと、もぐもぐ食べながらエリーが話す。明るくなって確認すると、魔物は公都周辺にかなりの数が集結しつつあったという。


「ちまちま攻めてもラチがあかないし、一気に攻め潰したいんじゃないかしらね」


「集まってるなら先手を打って潰せばいいんじゃないか?」


「そうねえ。でもこっちも魔力の関係で時間をかけてくれるとそれはそれで助かるのよね」


 ふむう。打って出るのにもリスクもあるし、防衛のほうが殲滅は楽だしで判断は難しいな。


「マサルの体調はどうなの?」


「たっぷり寝たからすっきりした。魔力酔いの兆候はない。魔力は……六割くらいだな」


 ついでにチェックするとエリーの魔力は残り少ない。丁度四分の一くらい。俺と一緒にがっつり寝ていたティリカは八割くらいまで戻している。


「すまん。無理をさせたな」


 エリーのほうは、アンの疲労が大きかったし、シャルレンシアはまだ子供だ。必然的にエリーの負担が大きい上に、俺が寝て他の二カ所の転移まで担当したものだから、魔力が回復する間もなかったのだろう。


「アンとシャルの魔力はだいぶ戻ってるはずよ」


 俺のほうはルチアーナの魔力が枯渇気味らしく、リリアは半分程度らしい。ちょっと厳しいか? 俺もエリーも疲労を考えると無理はできない。どちらかが魔力酔いで倒れれば輸送の負担が一気に増える。


「バルバロッサ将軍の情報は?」


「最初の一報から追加はないわね」


 出来れば確認しておきたいところだが、エリーの予測が確かなら、もうすぐ魔物の侵攻が再び始まるはずだ。一度俺かエリーが行けば転移ポイントを作れるんだが……

 バルバロッサ軍の駐留しているはずの町は少々中途半端な位置にある。ここからも東部砦からもラクナの町からも程よく距離がある。エリーの抑えている転移ポイントだと少しは近くなるが、転移がばれる危険を増やしてまで使うほど近くもない。ここから向かうと敵中突破で危険だし、結局東部砦から向かうのが一番良さそうという結論だ。


「後方への魔物の流出はどんな感じだ?」


「今はこっちに集中してるようだけど、夜はどれだけ移動したかまではわからないわね」


 一応主要な町にはエルフの伝令を置いてヤバイようなら救援を呼ぶように言ってある。


「もし後方に移動する魔物が多いようなら、一度追撃に出よう。それと帝国とか周辺国には支援要請はしてあったっけ?」


 魔物の攻勢に関する警告はしてあったが、そこまでやったか記憶にない。


「それは最初の伝令でやってるはずよ」


 ならヒラギス南方とラクナの町くらいは時間的に援軍が届けば平気だろうか? だが疫病の件もある。軍がどれくらい動けるか? ラクナにはゴケライ団とティトスもいて心配だ。


「後方の状況も確認するのにエルフを送り込んでおいたほうが良くないか?」


「そうね。そうしましょう」


「リリアは?」


「お呼びしましょうか?」


 部屋にいたエルフの一人がそう申し出てくれた。


「頼む。ルチアーナもいれば一緒に」


 もし戦闘中なら呼び出すのはどうかとも思ったが、拠点は城壁が近い。なんなら大声で叫べば届くくらいの距離だ。短時間抜けるくらいなら問題もあるまい。


「そうそう。物資の輸送依頼もあるわよ。矢の在庫が不安だってここのエルフから」

 

 エルド将軍のところの矢の在庫がかなり少ないらしい。自分たちで使う分はエルフの里から持ち込んだほうがいいし、念の為備蓄をしておいたほうが良さそうだとのことだ。


「エリーのほうは?」


「うちは万全ね。リゴベルド将軍は防衛に関しては頼りになるのよね」


 あっちは元から公都奪還後の防衛戦の想定があったようで、物資は万全だし防衛に関しても任せることに不安がないようだ。少々臆病な将軍かとも思ったが、防衛好きなのか。


「あとね……」


「ん?」


 言いづらそうにエリーが切り出した。


「転移魔法のことはいい加減バレてる感じよ?」


 俺が寝る前に一度。夜半に一度。そして先程また交代で延べ四〇〇人を動員したためで、いくらフードで隠してるとはいえ、中の人が頻繁に交代しているのに気が付かないほど現場の兵士はぼんくらでもないということだ。ただ朗報は気がついた兵士がいるって程度で、それも表立って口にされることがないようなのだ。


「確信はないみたいだけどね」


 戦力があればいい。エルフがゲート魔法のことを秘するなら詮索はしないということなのだろうか。下手につついてエルフの機嫌を損ねるのも得策ではないと。

 ただリゴベルド将軍のほうまで情報が行ってるかどうかまでは確認出来ないと。何度か協議する機会はあったが、気がついている気配はないということだが、配下が気がついてるなら時間の問題か、あえて話題を避けているのか。

 エルド将軍はどうだろうな。さすがに気がついてそうだが……


「まあでもエルフは魔法が得意な種族よ。ゲート使いの一人や二人、いるんだろうって思ってるみたい」


 まあそうだよな。帝国にもゲート使いがいるって話だし。


「むしろマサルがやったことのほうが騒ぎになってるわね」


 堀を町の周囲に作った件かあ。


「あれはエルフがやったことだから」


 そういうことにして押し通すしかない。エルド将軍にはさすがにエルフの守護者の正体は知られている気配がある。これも隠してるから詮索はしないでくれているだけだ。


「マサル、起きたかや!」


 エリーと話してるうちにリリアが拠点に駆け込んで来、続いてルチアーナとミリアムも入ってきた。


「リリアのお陰でゆっくり休めた。ありがとう。ルチアーナも昨日一日よく頑張ってくれたみたいだな。ミリアムも護衛役ご苦労だった」


 俺の声かけに応えてルチアーナとミリアムが頭を下げる。


「呼び出して大丈夫だったか?」


「今は静かなものじゃな。やはりエリーのほうへ戦力を集中しておるようじゃの」


「ふうむ。なら戦力の移動も考えないとな」


 ルチアーナの魔力はエリーの言った通り一割もない。だがレベルが上がってる。


「ルチアーナ」


「ご褒美ですか?」


 俺の手招きでルチアーナが感情の籠もってない感じの声でそう言って跪き、頭を差し出してきた。違うけどまあいいか。


「一気にレベルが上ってるぞ」


 ルチアーナの頭をなでりなでりしながら言う。やることはやってる大人の関係なのに、これが大好きらしい。まあ俺もなでなでとかきゅっと抱きしめられたりは、直接的な行為とはまた違った気持ちよさがあっていいと思うし、わからんでもない。


「では?」


「空間魔法を4まで上げるポイントが貯まったぞ」


 つまりはゲートが使える。


「ついに我らも自前でゲート魔法の使い手を確保じゃ! 霊薬まで飲んで頑張ったかいがあったの!」


「はい、リリア様」


 そう答えながらもなでなでしてもらうのを止める気はないらしく、頭をぴくりとも動かさない。ミリアムやサティがそれを羨ましそうに見ている。君らは暇なときにいくらでも可愛がってやるから。


「今後はエルフのため、精一杯励むが良いぞ」


「お言葉ですがリリア様。私はマサル様専属のメイドでございます」


「ふむ。妾のこの身もマサルのモノじゃ」


 そう言ってリリアも俺の背中のほうから首っ玉にかじりついてきた。ルチアーナの拒否とも取れる言葉にも平然としたものである。


「何を優先すべきかは議論するまでもないことじゃ。心配はいらぬ」


 そう言いながらさらに顔を擦り寄せてくるのが心地良い。たっぷり寝たとはいえ、まだ疲れは残っている。エルフちゃんたちをこのまま部屋にひっぱり込んでおやすみしたい。


「それならば結構でございます」


 しかし城壁では戦闘が頻繁に発生している気配があるのに、こんなことをしていて今は結構余裕なのか?


「どっちみちリリアとシャルレンシアはもう少しでしょう?」


「リリアは……あとレベル2つだな」


 エリーの言葉にリリアのポイントをチェックする。空間魔法に関してはポイント節約のために自力で取ろうという活動がうちでは以前から行われていて、それで後回しになっていたという事情がある。うまく取得できればかなりのポイントが節約出来るし、まさかここまでゲート輸送の需要が増えるとはヒラギス戦前には予想もしなかったのだ。


 ちなみに空間魔法の初期の修行はレヴィテーションを使う。空中に浮かんだり物を動かしたりって、どういう理屈なのかと思ったら、空間魔法の系統だったようだ。アイテムボックスはレヴィテーションで空間を捻じ曲げて個人用の空間を作る手法らしい。その最初の捻じ曲げる感覚を掴むのが難しいのもさることながら、空間を実用になるくらいまでに広げるのと、固定化。すなわち戦闘中だろうが寝ていようが維持することがさらに難しい。

 さらにさらに難易度が跳ね上がるのが転移魔法となり、習得には長期間の修練と才能が必要となる非常に高度な魔法で、若くしてアイテムボックスを自力習得していたエリーさんは、相当に才能のある魔法使いであるといえよう。

 今のところアンが空間に小さなポケットを作るあたりまでは進んでいるらしく、スキルで取るか迷い中である。この状況下でエルフたちが率先して取るようだし、いっそアンは他の、光魔法とか取らせるのも聖女様っぽくていいかもしれない。光魔法は支援系が多いから便利でもある。


「じゃあ上げてしまうぞ?」


「お願いします」


 ぽんぽんとルチアーナの空間魔法のレベルを上げていく。ようやく何か感じ取ったのか、ぴくりとした反応があったが、相変わらず頭を上げる気はないようでなでなでは続行である。

 エリーもレベルは上がっているが、最近土魔法を上げたのでポイントは当面貯蓄。ティリカも最近取った回復魔法でこれもポイントは消費済みで、新しい系統を取るほどのポイントはない。


「俺も空間魔法のレベルを上げたことだし、当面はエリーの受け持ちを三人でうまいこと分散しよう」


 恐らくこの戦いが終われば希望者全員がゲートを取れるだけのレベルアップはしているはずだ。


「かしこまりました、マサル様」


「じゃあすぐにルチアーナの転移ポイントをセットしておくとするか。ルチアーナはそれが終わったらしばらく魔力の回復待ちだ。いいな?」


「はい」


 なでなでが続いているルチアーナが素直に答える。 


「話はこんなところかしらね。そろそろ戻るわ」


「みんなによろしくな」


「ええ、伝えておくわ」


 そう言うとすぐに転移していった。ティリカの召喚獣はすでにあっちに送り込んであって、それでエリーもゆっくり出来たようだ。


 今日の仕事はまずはルチアーナの転移ポイント確保と矢の補充。後方の確認に追加でエルフを送り込む。

 それからエルド軍の防衛の支援。東部砦の防衛状況の再確認。リゴベルド軍はエリーにおまかせで、何かあればティリカからの知らせがあるだろう。

 

「――ってことで見落としはないな?」


 相談する余裕があるって素晴らしい。


「よし。じゃあ準備して俺たちも出るか。まずはエルフの里だな」


 装備を整え、リリアとルチアーナ、それとミリアムを連れて転移。ティリカとサティには残って防衛に当たってもらう。姿の見えない師匠も城壁で防衛に従事中らしい。


 連絡済みのようで滞りなくエルフの里で矢の補充を受け取り、後方へ送るエルフを差し出してもらう。状況が把握できればよくて伝令としての役目は必要はないから、人選は難しくない。五人ずつの小隊を二つ。

 ラクナの町、南方の町と移動し、エルフの二部隊を放つ。それからエリーのいるリゴベルド軍拠点にもルチアーナの転移ポイントの確保に一瞬だけ立ち寄り、東部砦へ。


「状況は?」


 すぐに東部砦の俺たち専用の拠点から城壁に移動し、詰めていたオレンジ隊の一人に尋ねる。


「明るくなるのを待って総攻撃の準備中のようです。戦力が集まってきております」


「ほう。ならばまた一撃食らわせねばなるまいな」


 嬉しそうにリリアが言うのには頷くだけにして、引き続きオレンジ隊の話を聞く。

 戦力に関しては周辺から軍が集結中のようだし、エルフの魔力もむろん十分。防衛のための備蓄ももとより防衛のための砦だ。不足はない。

 不安といえば東部砦から近い、南部での疫病のことだが、これに関しては軍も神経を尖らせているから兆候があれば見逃すこともないだろう。

 今まさに魔物が準備中の総攻撃に関しても、オレンジ隊に選抜されたのはエルフでも精鋭で、レベル5とまではいかなくともレベル4の範囲魔法の使い手が何人か居て、たとえ俺たち抜きでも十分に戦える。

 公都をスルーしてヒラギス全土へと散った魔物が心配だが、東部砦はヒラギスでも辺境に属する。公都からの距離はラクナの町のほうが近いくらいで、バルバロッサ軍がぶつかるのが先だろう。時間があれば今のうちにバルバロッサ軍の視察も兼ねてゲート地点の確保もしたいと思ったが、さすがにそこまでは手が回らない。まずは北の二つの町の防衛の目処が立ってから考えよう。


「北方へ戻る前にあれだけ倒していく」


 オレンジ隊のエルフにそう告げる。リリアの経験値稼ぎとオレンジ隊の魔力の温存だ。

 まず城壁から俺の範囲雷撃で砦前の魔物を殲滅、城壁を降りて集結している魔物の集団に近づき、リリアの範囲魔法をひと当てしてすぐに撤退してお仕事は終了である。

 殲滅と言うには中途半端でリリアは不満そうだが、いまはサティや師匠を置いてきている。深追いして取り囲まれるリスクは冒したくはない。


「相手はいくらでもいるだろう?」


 そう言う俺の言葉にリリアも頷いた。東部砦はエルフの魔力を切らさない限り大丈夫。それより魔物が集結しつつあるというエリーのほうが心配だ。ここで余り時間はかけられない。


 そう思ってエルド軍の守る町へ戻ったのだが……


「取り囲まれてる?」


 拠点から出たところで魔物の多さに気がついて、全体が見渡せる高さに飛んでもらうと、町が完全に魔物に包囲された状態なのが見て取れた。それも相当な重包囲だ。


「ずっとこんな感じじゃぞ」


 小競り合い程度というからもうちょっと楽な感じかと思った。魔物側もとりあえず囲んで明るくなるのを待っていた感じなのか?


「エリーのほうは?」


「あっちもじゃな」


 それとは別に公都周辺に大集結ってことか。ルチアーナのレベルも一気にあがるはずだ。


「俺を起こすほどじゃなかったのか?」


「存外、軍が頼りになっての。大型種やまとまった数の敵さえこちらで処理してやれば、あとはお任せじゃの」


 エリーのほうもそんなことを言っていたな。リゴベルド将軍は防衛に関しては頼りになると。エルフも高位術者が何人もいるし加護持ちを出すまでもないということか。


「こっちは見えてる分だけか?」


 追加でまだ増えている様子はあるが、大攻勢といった感じの集団は少なくとも見えない。今見えている分だけでも一斉に来れば大事なんだろうけど。


「恐らくエリーのほうに集中しておるようじゃな」


 分厚い包囲網の様子は、エリーが打って出るのに難色を示したのも頷けた。


「俺が作った堀が水堀になってるな」


 ルチアーナあたりが水を出したのだろうか。空堀よりは防御力があるのだろうか?


「魔物が渡ろうとするところを弓と魔法で狙い打つのじゃ」

 

 なるほど。矢と魔法の雨を抜けて突破できる数は少ないし、大量に突破しそうな時はエルフとハイエルフの範囲魔法で殲滅する。多少城壁にとりつかれたとしても士気も練度も高いエルド軍が防衛している。

 加護持ちの魔力はかなり消耗しているが、エルフに関しては交代させれば魔力は常に満タンだし、東西に割く戦力はさほど多くなくてもいい。


「オレンジ隊の交代要員に余裕はあるのか?」


 昨日からエリーのほうだけで四〇〇人動員しているという話だ。全体としてはすでに一〇〇〇人ほど投入したことになるのか?


「とりあえず二〇〇〇は出撃可能じゃな」


 状況に応じてもっと増やせるという。どうせ転移はバレてるのだ。遠慮はなしでいい。


「ならここは俺たち抜きでもいけるか?」


「ふうむ。いけなくもないが、さすがに誰か一人は欲しいところじゃ」


 ここは平地で見通しもいい。魔物が戦力を集中してきても事前に察知は出来る。加護持ちが一人居れば、なるほど十分対応出来そうだ。


「今日はティリカとサティをここに固定しよう。俺たちは必要に応じてエリーの支援に回る。エリーのほうにも余裕があるようなら、外に出て魔物の殲滅をしてもいい。ティリカに俺の召喚獣を預けておけば、緊急でもすぐに知らせをもらって戻ってこれる。東部砦の確認はルチアーナにやってもらう」


 東部砦へのオレンジ隊の移送は俺がやる必要があるが、状況確認だけならルチアーナ一人が転移すれば済むから魔力消費も少ない。俺の召喚獣もいちいち消えたりはしない。


「良さそうなプランじゃな」


 加護持ちの魔力はそこそこ温存出来ているし、エルフは頼りになる。それに軍が思ったより精強だというのが朗報だ。


「よし。方針も決まったことだし、エルド将軍のご機嫌を伺いに行くか」

 

 昨日は少々おたついたが、なんとかなりそうじゃないか? まあなってくれないと困るんだが……



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