青羽ダンジョン 1
ひとり、逃してしまった。三人とも殺すつもりだったのに。
逃した奴は、たいしたスキルを持っていたわけでもないから、その点では問題ではない。ただ、俺たちの情報が漏れるのはまずい。
まさか、帰還の巻物を持っているとは思わなかった。高価な魔道具なのに、なぜ、そんなものを持っている?
四谷がしくじったことに悔いた表情を見せているので、飯田橋が四谷をフォローする。
「大丈夫さ。俺たちの顔は、はっきりとは見られていないはずだ。急襲したからな。俺たち二人が疑われたとしてもシラを切れば大丈夫さ」
東京の北にある、青羽ダンジョンの地下十階層。ここは、一階層から九階層までの洞窟迷路ではなく、森林のフィールドになっている。
大木に隠れて三人組を襲った。
四谷は他人から奪った《鑑定Level5(max)》を持っている。
三人組のうち二人は、まだ四谷、飯田橋、それぞれが持っていない《火魔法》《風魔法》を持っていた。それを新たに奪うために襲ったのだ。
四谷も飯田橋も《剣術Level5(max)》を持っているので、隙をつけば三人だろうと簡単にやれる。そう思って油断してしまった。
計画通り、四谷は《火魔法》を、飯田橋は《風魔法》を手に入れることができた。
スキルは奪うことができるがLevelは失われてしまう。しかし、これから経験値を積めば、《鑑定》や《剣術》と同じようにmaxまで上げることは可能だ。
【兇徒】のジョブを持っている四谷は、飯田橋のことばを聞き、大丈夫か、それならいいさ、そう言って静かに笑った。