3 相談
「獲得したジョブで困っていると聞きました。俺も実は困っています。とりあえず、どんなジョブだったか、お互い紙に書いて渡してみませんか?」
俺がそう言うと、えぇ、と言ってメモに書き出した。俺もメモに書く。
書き終わってお互いにメモを渡し合う。
俺が紙を見ると、聖女、と書いてある。……聖女?
困っているのか? 自慢したいのか? どっちなんだ?
「クズっぽいジョブでいいなぁ、交換してほしい」
クズ、言うな。
俺も、交換できるなら、交換したいわ……って、男で聖女はヤバいか?
その前に、そもそも、交換できないし。
「このジョブ、めちゃくちゃいいと思うんですが、どうして困っているんですか?」
俺は相手の確認がてら、顔を見ながら尋ねる。……ぜったい高校生だと思う。化粧してないし。同じ高3だな。しかも、かわいい系の美人だ。
「良すぎるんです。こんなジョブだとすごーく目立っちゃうし、周りの人からのパーティー申請がとっても多そうで。行列とかできちゃったり、モテモテになっちゃったり、なんか怖いんです」
まだ行列はないけど。
この人、【聖女】がなくてもモテそうだけど、たしかに、JKの言うことも一理ある。
「それに……【聖女】って希少で、他国のスパイに誘拐されたり、ひどいと殺されたりするって噂もあるし」
そういえば、【聖女】というジョブで世界的に有名になった人がいた気がする。それだけこのジョブは、希少価値があるということだ。噂に過ぎないが、たしかに怖い。
「たしかにこのクズジョブは、つらいですね」 JKは遠慮がない。
「そうなんです。ぜったいマイナス効果のあるジョブですよね」
「でも、ジョブですから、どこか、いいところもあるはずです。いいところを見てあげましょうよ」
二回もクズって言っときながら、どこにそのいいところがあるのか、教えてほしいのだが。
そんな文句をJKに言ってもしかたない。
二人で無言の時間が流れる。
「気持ちの整理がつきそうですか?」
今多さんが椅子を持ってお誕生日席に座った。
「「これってなかったことにできないんですか」」
まさか、ハモるとは思わなかった。
「それは無理です。ただ、不適合者の扱いならできますが」
「「不適合者?」」
また、ハモった。ギターでも持ってきて一緒に歌う?
「お二人、気が合いますね。
不適合者とは、適性検査で不合格になった者、ジョブエラー、ジョブの判定ができなかった人ですね、主にこの二つの理由でダンジョンに入ることを許可できない人のことです」
ダンジョンに入れないと聞いて、俺は悩んでしまった。
入って見たかった。異世界体験したかった。すでにダン入している友人は、感動的におもしろいと言っていたし。
JKもやはりダンジョンに入りたいのだろう、無言だ。
でも【愚者】だ……絶対マイナスジョブだ……どうしようもない……死んでしまったら、元も子もない……あきらめよう。
「それでは、その不適合者でお願いします」
俺がそう言うと、JKも決心がついたのか、俺のあとに、私も、それでお願いします、と言う。
JKもあきらめたようだ。
「それでは、今、不適合者承認書をお持ちしますね。」
今多さんはそう言って席を外した。
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