13 偽装
研修も十日目になった。
夏休み初日に不適合者になってダンジョンに入るという研修が始まったから、夏休みも十日経ったことになる。
今日は九時から、水戸さんと二人で総合研究所の待合室にいる。
この十日で水戸さんは、ホーリーアローがLevel3になって《回復魔法》Level1というスキルを取得した。
俺はアシストが昨日やっと一万を超え、初スキル《※愚考》Level1を取得した。
今多さんに「愚考」を覚えましたと報告したら、ステータスのスキル名の前に印がついてない? と聞かれた。ついています、と言ったら、その印が大事なの、と言う。どうやら印は魔物に対して発動できるという意味らしい。
水戸さんからは、やっとクズから脱却ね、とほめてもらって、泣くほどうれしかったのは秘密だ。
今多さんが、そろそろジョブの偽装をしたほうがいいでしょう、明日は9時に研究所の指定の待合室で待っていてください、と言われたのだ。
「おはようございます。遅くなってごめんね」
そう言って今多さんが部屋に入ってきた。俺たちも朝の挨拶を返す。
「偽装のジョブを決めてきました。大宮くんは【剣術師】、水戸さんは【魔術師】です。もっともジョブの割合が多く、その後の派生ジョブも多いようなのでごまかしが効きやすいと思います」
なぜ偽装の必要があるのか、イマイチピンとこない。
「なぜ偽装する必要があるんですか?」
俺が質問をすると、水戸さんが、だってバレたくないでしょ? と当然だと言わんばかりの顔だ。そりゃあ、水戸さんは【聖女】だから知られたくないよな……
「ジョブやスキルを知られると対人戦は不利になると言われているからなんです。
不安を煽るつもりはないんだけど、我々がヒューマンキラーから狙われたんじゃないかと疑われる事案が以前あったのも理由の一つです。それに【鑑定】ジョブ持ちがヒューマンキラー側にいたら、捕縛が大変だし。
もし街中でも使える【鑑定】持ちがいたら、特に水戸さんは危険なのよ。最近【聖女】が鮮明になってきたようだしね。あの噂は、事実も含んでいるのよ」
瞬間、水戸さんの表情がこわばった。
「だから、偽装するの」
そう言って、今多さんは、安心よ、という笑みを見せる。
それじゃあこっちへ、そう言って大きな医療機材が並んだ部屋に入る。真ん中にあるのはMRIのような検査機、いや、偽装機?だ。
「ダンジョンから魔素を引いているこの装置で身体に偽のジョブを上書きするんです。付箋を貼るようなイメージかな。身体影響はまったくなく、生涯にわたって偽装が可能よ。ただ、少し時間がかかるの。一人二時間ぐらい。二人ともこれが終わったら食堂でお昼。それからダンジョンに行く予定です。どっちが先に受けますか?」
「もちろん、大宮よね。クズジョブ、早く隠さなきゃ、ね?」 水戸さんは、俺を見ながら顔を傾け、あざとい仕草をする。
あれ? クズから脱却したはずなんだけど……さては、水戸さん、この装置が怖いな……
「もちろん俺から先にお願いします」
俺はそう言って装置に向かう。
二時間後、俺が終わると、すかさず、どうだった? と聞きにくる。
めちゃくちゃ痛かった、と顔をしかめると、水戸さんは、すごく嫌そうな顔をした。
それを聞いていた今多さんが、ウソよ、ガーガーうるさいけど、まったく痛くはないから、と訂正すると、俺を上目遣いで見ながら、いじわる! と小さくつぶやいて装置に行ってしまった。
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