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黒神龍の御子になった異世界冒険譚~一気読み総集編~  作者: KAZ


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第1章 龍の胎内世界編2

『黒神龍の御子になった異世界冒険譚~最強ドラゴンの夫になって異世界ハーレム無双~』


一気読み総集編を編集致しました。


原点となった第一章の第二部となります!

【エピソードタイトル】

創造武器の斬れ味は


―――レオと交代したリブラが新たに十個の魔法陣を作りだす。


「それじゃ、いきます!―――《召喚(サモン)》!!」


さきほどと同じくアラクネが十体出現し、蜘蛛の下半身にある八本の足が細かな動きを見せて蠢いている―――


「これは!?召喚された―――」


言い掛けていたそこで、アラクネの言葉と首が―――斬られた。


一体のアラクネが現状を確認しようとして言葉を発した途端に強化した身体能力で瞬発力を生じさせ、超高速で突っ込んだ八雲は最早アラクネの蜘蛛の頭についた八つの眼をもってしても、捉えられない動きを繰り出して速攻斬り倒したのだ。


「アア―――ッ?!八雲様ズルいです!!」


手にした黒大剣=黒曜(こくよう)を片手で掲げながら、リブラは抗議の声を上げているのが八雲には戦場に関わらず、不謹慎にも少し可愛く思えた。


「悪い。なんか油断しまくっていて簡単に斬れそうだなって思ってさ」


目の前で首を飛ばされた同族……


その前で気安い言葉を交わす人間……


それを見て呆気に取られていたアラクネ達もすぐに正気を取り戻す―――


―――いや怒気と殺気を全身から噴き出す。


「……この人間がぁぁっ!!―――食い殺してやるぅ!!!」


狂気を孕んだ目を鋭い凶器のように細めてアラクネ全員が高速移動に入るが、今の八雲は冷静に『思考加速』を駆使することでその動きはスローモーションの映像を見ている様だった。


そこからは至極一方的な惨劇の始まりだ―――


―――黒曜を構えたリブラが今まで見せたこともないスピードで化物のような巨大な剣を高速で振り回し、次々とアラクネを斬る……いや爆ぜ飛ばす。


斬れ味は抜群のはずだが、斬ることもあれば返す刀で側面の刃幅の部分の広い面積で殴り飛ばす―――


―――強烈な衝突をくらったアラクネは、まるで蠅叩きで叩かれた小虫のようにグシャリと嫌な音を響かせながら身体を潰されていく。


「八雲様!八雲様!―――この黒曜は凄いです!最高です!!アハハハッ♪」


「そ、そうか、うん。それは、良かったです……」


(笑いながらやる所業じゃないです、リブラさん……)


夜叉と羅刹で竜巻のように回転しながらアラクネの腕や脚を斬り飛ばしていく八雲だが、喜々として魔物叩きを楽しんでいるリブラの表情にゾクリと少し背筋に悪寒が走っていた。


そして間もなく二度目に召喚されたアラクネ達は先ほどよりも早いタイムで討伐され、またも死体の山が出来上がっていた。


「―――少し休憩されますか?」


次のパートナー予定のクレーブスが休憩を提案してくれたことに八雲は息抜きがてら訊きたいことがあったので、ここぞとばかりに訊いてみる。


「それじゃ休憩しながら、少し魔術について訊いてもいいか?」


「ええ、講義は明日からですが今日の戦闘の様子を見ていましたら、余裕もありそうですし簡単にならお教えしましょう」


「ああ、頼む。俺の魔術能力は―――」


そう言って、八雲は自分のステータスについてクレーブスに説明した。




《取得魔法》


『身体強化』

魔力量に応じて体力・攻撃力・防御力が上昇


『火系魔術』

基礎


『水系魔術』

基礎


『土系魔術』

基礎


『風系魔術』

基礎


『光系魔術』

基礎


『闇系魔術』

基礎




「身体強化はさっきのアラクネとの戦闘で完全に掴んだから分かるんだけど、各魔術の基礎っていうのはどういうことかと思って」


八雲の質問に指で眼鏡をクイッと押し上げたクレーブスは、


「なるほど……」


と呟いてゆっくりと説明を始める―――


「まず、この世界の『魔法』とは個々の持つ『魔力の法則』という意味です。火・水・風・土・光・闇の六属性に魔力を変換する法則と属性の無い無属性を総称して『魔法』と呼びます。それに対して『魔術』とは、その属性に魔力を注ぎ目的の効果に変換し、具現化する技術を『魔術』と言います」


―――クレーブスの言葉を聞き逃さないように八雲はその話に集中する。


「―――そして魔術の『基礎』とは、それぞれの属性の制御能力(コントロール)を覚えたという意味です」


「コントロール?」


「―――はい。火属性なら《火属性基礎《ファイヤー・コントロール》》、水属性なら《水属性基礎《ウォーター・コントロール》》という基礎の魔術を覚えたのです。そして魔術の行使はイメージが重要です」


そこでクレーブスが掌を上にして


「―――《火球(ファイヤー・ボール)》」


と詠唱すると火の玉がその掌に浮かぶ。


そしてその火の玉を近場に転がっているアラクネの死体に向けて飛ばすと、着弾した死体は一瞬で炎に包まれて消し炭に変えられていく。


「凄いな……」


魔法のない世界―――


―――現代日本から来た八雲は初めて攻撃魔術を目の当りにして、かなりの衝撃と感動を覚えて少し体が震えていた。


「今のは火属性魔術・下位《火球《ファイヤー・ボール》》です。魔術には下位・中位・上位・極位という段階に分かれていて、より強力な魔術を使うには魔力量と、先ほどのコントロール能力の熟練度を積み重ねることで使用出来る魔術の段位が上がります。魔力量が多いだけでも、熟練度が上がるだけでもダメです。双方が成長していくことで魔術は向上します」


「なるほど……今の《火球(ファイヤー・ボール)》とかいう魔術、俺でも撃てるかな?」


「先ほども言いましたが魔術はイメージが重要です。ですので《火球(ファイヤー・ボール)》のイメージがしっかり伝われば―――撃てます」


ハッキリと言い切ったクレーブスの言葉に、八雲はワクワクした感覚が胸に湧き上がった。


「―――よし。やってみる」


そう言って、先ほどのクレーブスのように掌を上にして―――


「―――《火球(ファイヤー・ボール)》」


―――そう呟いた途端、


掌から火柱のような炎が吹き上がり、やがてその炎は小さな太陽のようにメラメラと燃え盛って見た目だけで高温だと分かる炎の塊が生まれた―――


「ウオオオオォ―――ッ?!なんだ!これ!?」


八雲は先ほどのクレーブスが見せた火の玉と比べて巨大な炎の塊が生まれたことに、魔術が使えたことよりも目の前の危機にパニックを起こしていた。


「―――八雲様!」


レオが慌てて近づこうとしても、炎の高熱に思わず顔を腕で覆ってしまう。


「落ち着いて下さい!八雲様!そのまま……そっとその塊を遠くに、出来るだけ遠くに投げるイメージで飛ばして下さい!」


クレーブスの指導に八雲も神の加護『理性の強化』が発動してスッと冷静さを取り戻すことで、言われた通り炎の塊を出来るだけ遠くに飛ばすイメージで腕を振り被るとそこから放り投げるように撃ち出した。


すると炎の塊は弾丸のように撃ち出され、やがて暫く飛翔して遠くで着弾した大地が―――


「ウオオォ!?」


―――その場に巨大な爆発を引き起こし、かなり距離が離れていたにも関わらず、その爆風が周囲に広がって遠く離れた八雲達のいる場所まで押し寄せてくる。


爆風に巻かれた土埃が辺りを包み込み、八雲の前髪が逆立って靡く―――


―――土埃と降り掛かる小石から護るため腕を前に出して顔を覆う。


そうして暫くして周囲が漸く落ち着いた頃に……


「……うん、まあ―――成功だな」


「―――なぁにが成功ですか!!なんですか!あの《火球(ファイヤー・ボール)》は!あんなの上位クラスの威力ですよ!どんな魔力してんですか!」


八雲の何も問題ないだろうという、事無かれ主義なセリフにクレーブスが盛大にツッコミを入れた。


レオとリブラ、シュティーアは只々そこで唖然としていたが、


「―――八雲様!流石です!凄い!凄い!」


暫くするとその場でぴょん♪ ぴょん♪ 飛び跳ねるリブラに少し緊迫した空気が緩んだ。


だが次の瞬間―――


「コオラァアアア―――ッ!!今、とんでもない魔術使ったのは誰だぁあああ!!!」


離れていた黒龍城から続く道を、砂埃を巻き上げて走りながら怒鳴り声を響かせて接近してくる―――ノワールが現れた……


「クレーブス!!お前だろ!―――あんな上位魔術をいきなりぶっ放したのはっ!!!」


「い、いえ!私では……」


「―――俺だ」


ノワールの見たこともない剣幕にたじろぐクレーブスの代わりに八雲が返事をすると、ノワールは驚愕の表情で八雲に視線を向ける。


「なに?!―――八雲が放ったのか?我はてっきりクレーブスが撃ち込んだものだとばかり。怒鳴ったりしてすまなかったな。クレーブス」


「いえ、私もまさか八雲様の《火球(ファイヤー・ボール)》があれほどの威力とは予想出来ず……申し訳ございません」


「ん?《火球(ファイヤー・ボール)》だと?さっき撃ったのは《火球(ファイヤー・ボール)》なのかっ!?」


上位魔術と勘違いしていたノワールは更に驚きを隠せず、そんな八雲は頭を掻きながら、


「―――えへへ♪」


と誤魔化し笑いを浮かべていた。


「ノワール様―――八雲様の魔力量はとてつもなく大きいです。しかしコントロール能力がまだ今は駆け出しの素人レベルのためバランスが合っていません」


「……素人」


確かにクレーブスの言う通りだが、その言葉にグサリと胸を貫かれる八雲が顔を顰めた。


「なるほどな……暴走に近い形で具現化した訳か。なんとかなりそうか?」


ノワールも真剣な顔に戻ってクレーブスに問い掛ける。


「恐らくですが数をこなして熟練度を上げていくことでバランスは保たれると予想されます。これは明日からの魔法の講義はやり方を変更しなければいけませんね……」


「なんかマジでごめん」


何となく迷惑をかけている気持ちになって謝る八雲に、ノワールは笑い飛ばして一蹴する。


「アハハハッ!別に気にするな!流石は我の御子だ!それよりも―――」


と、そこまで言ってノワールは周囲を見回すと、


「―――もうアラクネを相手にしているのか?これほどの成長を見せるとは、これは成長が楽しみだ♪/////」


そう言って潤んだ唇を軽く開いて、ゆっくりその唇を舌で舐める仕草を見せるノワールに八雲は無意識にゾクリとする感覚を覚える。


「あら♪ 八雲様、仰っていただければ必要なら私やリブラにいつでもお申し付け下さい♡ ねぇリブラ♪/////」


「うえぇ?!いえ!はい!!そ、その、頑張りましゅ/////」


その様子を見てノリノリのレオと、顔を真っ赤にして湯気が出そうな勢いのリブラが割り込むようにして前に出てきて八雲は思わず二人といけないことをしている姿を妄想して動揺してしまう。


「―――な、なあ!この世界って、その、一夫多妻制みたいな風習があるのか?」


動揺しつつ、アリエスが好意を寄せていることをノワールが承知していることについて抱いた疑問をここで問い掛ける。


「ええ。この世界では一夫多妻は当たり前ですよ?あくまでも養える貴族や王族、富裕層の商人達くらいですが。血を重んじる一族は血が絶えるということは、お家の断絶に繋がりますからね」


「……なるほど」


クレーブスの説明にやはりそうかと納得する八雲にノワールがニヤニヤしている。


「八雲、別に眷属に手を出すのを躊躇っているなら気にする必要はない。無理矢理は許容出来んが、少なくともお前を慕っている者をどうするかは自分で決めろ。それくらいの度量は示せ」


「そう言ってもノワール、俺のいた国は一夫一妻制なんだよ」


「―――ほう、それは興味深い。しかしそれでは血が絶えることが多いのでは?」


クレーブスの疑問に八雲は応える。


「ああ、確かに少子化問題っていうのはあったけど、少なくとも医療が発達していたから出産時の死産という危険度は大昔に比べれば遥かに低かったからな」


「なるほど、医療技術の発展が無事な出産を支えていたと……勉強になります」


「まあ、その辺りは明日の講義の時にでも話せ。それよりまだ鍛錬を行うのだろう?」


「ああ、次はクレーブスだったな」


「そうですね。ですが八雲様……魔術は『身体強化』以外、今は使わないで下さいね?」


「分かってるよ。俺も自爆したくない……」


そうして魔法陣を展開するクレーブスは再びアラクネを召喚した。


八雲は夜叉・羅刹で先ほど同様で着実に自分の『身体強化』を使用して魔物を駆逐していく―――


―――クレーブスはスラリと黒細剣=飛影(ひえい)を鞘から抜いて、その身体をブンッ!と一瞬で残像を残す高速で走り出したかと思うと一瞬で標的にしたアラクネを蜂の巣のように穴だらけになる高速の刺突を繰り出す。


レオの闇雲も突きで魔物を蜂の巣にするが、クレーブスの飛影による刺突は切先が細いので穴も小さく、しかし刺突の手数が尋常ではない数なので細かな穴が全身を覆っているような錯覚を覚えさせるほどの連突きだった。


あまりに高速の刺突のため、暫く間をおいてアラクネは全身の穴から鮮血を噴き出して断末魔を上げながら地面に倒れていく。


―――そうしてクレーブスのアラクネ戦も終わりを告げ、次はシュティーアの番だ。


「なんか、アタイの番になったと思うと、ちょっと緊張するね……」


「シュティーアらしくないな。一緒に頑張ろう!」


「そうだぞ、シュティーア!我が見守っているから全力でいけ!」


「八雲様、ノワール様……そうだね!アタイらしくないよね!よお~し!―――叩き潰すぞぉ!」


手にした黒戦鎚=雷神(らいじん)でドォンッ!と大地を叩き、軽くクレーターを生み出してシュティーアは《召喚》を唱え、アラクネを呼び出す。


そして調子にのったシュティーアは雷神を振り回し、その大地を凹ませる一撃をアラクネに高速で撃ち込む。


平らな面の鎚頭で叩けば、アラクネの身体が平たくひしゃげていき、円錐になった側で叩けばアラクネの身体にクレーターのような跡を残して爆散させる。


八雲はその様子を見ながら倒すことが出来るほど余裕が生まれて、アラクネ戦にも慣れてきたことで彼女達の武器を見ながら、


(俺はとんでもない相手にとんでもない武器を与えてしまったのでは……)


我ながら恐ろしい武器を造ったと軽く身震いしていた。


そうして―――


またレオの番に戻って、八雲は鍛錬を繰り返す。


今日はノワールも最後までつき合って鍛錬の様子を眺めながら、いつの間に来たのかアリエスもその横に控えて様子を見ていた。


空が夕闇に包まれだしたところで今日の鍛錬は切り上げる。


するとアリエスが汗を拭くために用意してくれたのだろう、手拭いを持って八雲の元に近づいてくる。


「お疲れ様でした八雲様」


「お、ありがとな……どうしたアリエス?」


「……」


汗を拭きながらジッと自分を見つめるアリエスに、八雲は何か言いたいことがあるのだろうと気がついて問い掛ける。


「その……皆、八雲様の造った武器を頂いているのですよね?」


「あ、ああ、アリエスも欲し―――」


「―――欲しいです!」


「―――うおっ?!喰いつきスゴッ!わ、分かった。それじゃアリエスは得意な武器とかあるか?」


食い気味で返事を返すアリエスに驚いた八雲だが、彼女のそういう一面もまた可愛いと感じていた。


アリエスはやや照れた顔をして、


「八雲様と……同じ物がいいです/////」


「え?刀か?そうか、うん、分かった。それじゃこれ持ってみて」


八雲は腰から夜叉を鞘ごと抜いてアリエスに手渡すと、長さや使い勝手を尋ねる。


スゥッと鞘から夜叉を抜いたアリエスを見て、


(メイド服に刀も……いい)


などと思ってしまう厨二病の入口に舞い戻っていた八雲に向かってアリエスは、


「少しだけ短い方が使いやすいです」


―――使い心地を軽く振りながら応える。


「―――そうか、だったら脇差しくらいが丁度いいかもな」


「脇差し?刀ではないのですか?」


「いや、刀の種類なんだよ。夜叉は打刀って部類の刀で、それより短めの刀に脇差しって種類があるんだ。それがいいかなって」


八雲の説明に何故か顔をほんのり赤くしたまま聞き惚れるアリエス。


「―――なんだ?我には造ってくれんのか八雲?」


そこに様子を見ていたノワールがニヤニヤしながら割り込んできた。


「ノワールも武器使いたいのか?」


「分かっておらんなぁ!そういうものは黙って女に造ってやるのが男の甲斐性というものだぞ!もっと精進しろ!」


偉大な黒神龍に乙女心を説かれて呆然とした八雲だが、


「へいへい……それで、ノワールは得意な武器とかあるのか?」


気を取り直して希望を問い掛ける。


「我も八雲と一緒のが、いやもう少し長くて、太くて硬いのが……/////」


「そんな卑猥な武器はない……でも、ノワールも刀か。だったら大太刀がいいかもな。大体希望に合っているし」


「それも刀の種類なのか?」


「そうそう―――よし!それじゃ明日クレーブスの講義が終わったら工房に集合!!」


「―――オオオッ!!」


ノワールは元気よく雄叫びを上げ、アリエスは「はい♪」と嬉しそうに返事していた―――




【エピソードタイトル】

双子の龍の牙


―――アラクネ戦を周回して、八雲は空も暗がりになりだしたところで自分のステータスを確認してみた。




【ステータス】

Name:九頭竜 八雲(ヤクモ=クズリュウ)

年齢 18歳

Level 75

Class 転移者


生命 94506/94506

魔力 63004/63004

体力 63004/63004

攻撃 94506/94506

防御 63004/63004


知力 85/100

器用 85/100

速度 85/100

物理耐性 85/100

魔法耐性 85/100




《神の加護》

『成長』

取得経験値の増加

各能力のLevel UP時の上昇数値の増加

理性の強化

スキルの取得向上


『回復』

HP減少時に回復加速

MP減少時に回復加速

自身が直接接触している他者の回復

広域範囲回復


『創造』

素材を加工する能力

武器・防具の創造能力

創造物への付与能力

疑似生命の創造能力




《黒神龍の加護》

『位置把握』

自身の位置と黒神龍のいる位置が把握出来る


『従属』

黒神龍の眷属を従える


『伝心』

黒神龍とその眷属と念話が可能


『収納』

空間を開閉して物質を保管する能力


『共有』

黒神龍と同じ寿命を得る




《取得魔法》

『身体強化』

魔力量に応じて体力・攻撃力・防御力が上昇


『対魔法防御』

魔力量に応じて対魔法攻撃防御能力が上昇


『火属性魔術』

中位


『水属性魔術』

基礎


『土属性魔術』

基礎


『風属性魔術』

基礎


『光属性魔術』

基礎


『闇属性魔術』

基礎




《取得スキル》

『鑑定眼』

物質の理を視る


『言語解読』

あらゆる種族の言語理解・文字解読


『酸耐性』

あらゆる酸に対する耐性


『毒耐性』

あらゆる毒に対する耐性


『精神耐性』

あらゆる精神攻撃に対する耐性


『身体加速』

速度を瞬発的に上昇させる


『思考加速』

任意で思考を加速させる


『索敵』

周囲の索敵能力


『威圧』

殺気により恐慌状態へと堕とす


『神の手』

愛情をもって触れる異性に快感を与える




《九頭竜昂明流古武術(八雲強化)》

剣術(強化)

槍術(強化)

弓術(強化)

組討術(強化)




新たに神の加護『成長』にスキルの取得向上という加護が現れ、《取得魔法》には《対魔法防御》、そして『毒耐性』もクレーブスの予測通りスキル欄に追加されていた―――


それ以前のLevel UPで神の加護『創造』の項目に『疑似生命の創造』などと興味が湧くしかない能力まで発現していた。


まだまだ試していかなければいけない能力も多いが、今日の《火球(ファイヤー・ボール)》みたいに自爆しそうな危険だけは冒したくない。


三日でLevel.75というのは八雲自身も我ながら異常だとは思うが、この世界で生き抜くためにはLevelが高くても悪いことはないと、ひとり納得した。


「しかし……数字が出鱈目過ぎる……もう気分は世界最強無双ですけど?」


明らかに桁がおかしくなっているステータスに八雲は、驚くよりも先に何故か諦めのような気分になっていた。


それは自分でも納得したと思っている人間をやめたという心境に、まだ頭がついてきていないという一面も作用していた。


―――その後、


食事の間でアクアーリオの夕飯を食べて今度八雲の世界の料理を作る約束を交わした。


部屋に戻って風呂も済ませて明日はクレーブスの講義一日目だと思い浮かべつつ、八雲はベッドの中へと入り昼間の疲れもあって深い眠りについた―――






―――そして次の日


部屋の窓には再び朝の光が降り注いでいた。


まどろむ朝の時間、八雲は少しずつ意識が覚醒していく中で誰かの話す声が聞こえてくる。


「……ほらリブラ、もう少しこっちに寄って」


「……う、うん。ねえレオ……本当にいいのかなぁ?/////」


「今さらここまで来て何を言っているの?ノワール様もアリエスも許してくれたじゃない。ここで引いたら、そのお気持ちを裏切ることにもなるのよ」


「そ、そうだよね。せっかくお許しを頂いたんだもの!でも……これどうしたら……/////」


「―――そのまま素直に起こしてくれたらいいと思うよ?もしくは寝顔鑑賞」


「あ、なる…ほ……ど?!」


八雲と目が合うレオとリブラはその瞳をパチクリさせながら―――


「―――八雲様?!お、起こしてしまいましたか?/////」


会話の合間に乱入した八雲だったが、会話の内容やベッドの上に上がって自分の顔に顔を近づけているレオとリブラを見てデジャブらない訳もなく、二人が嫌じゃなくて此処に来たのなら、もうこれでいいと結論づけた。


「先に訊いておくけど、二人はこういうこと嫌じゃないのか?」


男の部屋にこれほど可愛いメイド達がベッドにまで上がってくるとなると八雲の方が気をつかわずにはいられない。


しかし問い掛けられたレオとリブラは真剣な顔をして、


「―――はい!私は八雲様の専属メイドとして、アリエスのように八雲様へご奉仕させて頂きたいです!」


その茶色い澄んだ瞳を大きく開き、その瞳の中に八雲を映しながらハッキリとレオが応えた。


「わ、私も八雲様の専属です!それに、正直アリエスがとても羨ましく思えました。だからレオと一緒にどうかご奉仕させて下さい/////」


顔を真っ赤にしながら、その黒い瞳には少し涙まで溜まっていた。


「ご奉仕って……言い方……」


要らぬ淫らな行為を思い浮かべそうになってしまう言葉に困り顔になった八雲は、その二人に向かってゆっくりと膝立ちになり、二人の頭に手を置くと優しく撫でていく。


「専属メイドだからって気負わなくてもいいさ♪ こんなに可愛いメイドさんに朝起こしてもらえるだけで俺には贅沢だよ」


「―――まあ♪」


「―――か、可愛い……/////」


八雲の不器用ながらも優しい手の温もりに、レオとリブラはお互い顔を見合わせながら、「ふふふっ♪」と笑い合っていた―――






―――それから二人に着替えを手伝ってもらう。


「―――八雲様、シャツをどうぞ」


レオの手にした黒いシャツに袖を通すと―――


「―――八雲様!コートをどうぞ♪」


―――リブラが漆黒のコートを持って八雲に差し出す。


八雲はそのコートに袖を通すとこの異世界の普段の恰好が完成した―――


今日はクレーブスの講義を受ける予定の八雲は食事の間でアクアーリオの朝食を食べて、その後に先日訪れた地下に向かって階段を下りる。


クレーブスの部屋の前に立ち、扉をトントンとノックをすると中から―――


「―――はぁ~い!ただいまぁ~!」


―――と、どう聞いてもこの間のクレーブスとは明らかに違う他人の返事が聞こえてきた。


「―――お待たせしましたぁ~」


そう言って扉を開いてくれた人物は、見た目は中学生くらいでまるで人形のように整った可愛らしい顔をした少女―――


―――蒼い瞳に金髪をショートカットにしているメイド服を着た女の子だった。


「あ、御子様ですね。どうぞ中へ。クレーブスも中で待っております」


丁寧に中へと案内してくれる少女に、


「ありがとう」


と軽く返事をして、ツカツカと中に入る八雲。


「おお~!―――もしかして御子様?ねぇ御子様?」


中に入るともう一人、先ほど中に入れてくれた女の子と同じ顔をして、同じ蒼い瞳をしているがサイドポニーにした銀髪といった髪の色だけが相違点という女の子が八雲の爪先から頭の天辺までジロジロ見つめながら声を掛けてきた。


「もしかして双子か?そっくりだな……」


「ああ、八雲様おはようございます。この子達と会うのは初めてですか?」


昨日と違って山積みにされた本は片付けられていて広くなった書斎に机と椅子が用意され、黒板まで用意されていることに八雲は少し感動して、そこに講義の準備を終えたクレーブスが挨拶してきた。


「うん、おはよう。この子達って双子?」


「ええ、この子達は媒体になった牙が半分に割れてしまっていたのですが、ノワール様がそれでもいいと媒体として使い生み出したのです。元が一本の牙だったのでこうして双子となって顕現した訳です」


「へえ、そんなことあるんだな」


クレーブスの説明に二人を見つめる八雲の視線に金髪の子は顔を赤らめるとモジモジして、銀髪の子はニヤニヤしながら見つめ返してくる。


「二人とも、此方はノワール様の御子となった九頭竜八雲様です。ご挨拶なさい」


クレーブスに促された二人は互いに顔を見合わせてから―――


「はじめまして八雲様。左の牙(レフト・ファング)序列11位、ジェミオスです。よろしくお願いします」


「僕はヘミオス!左の牙(レフト・ファング)序列11位だよ!これからよろしくね!兄ちゃん♪」


「―――へ、ヘミオス?!御子様に失礼だよ!」


「別にいいじゃん!僕、兄ちゃん欲しかったし!ジェミオスも兄ちゃんって呼べばいいじゃん!」


「そ、そんな恐れ多いこと?!」


どうやらヘミオスが八雲のことを「兄ちゃん」と呼んだことをジェミオスが諫めている様だが、当のヘミオスはどこ吹く風といった具合に気にしていない。


「別にいいよ。変に畏まられるよりも俺もその方が気楽に接しやすいから」


八雲の言葉にヘミオスは鬼の首を取ったかの様な表情で、


「ほらぁ~!兄ちゃんもそう言ってくれてるしさぁ~!ジェミオスも呼びたいように呼んでみなよ♪」


「え?えと、そ、それじゃ……兄さま……とお呼びしても―――」


「―――むしろ推奨」


「ふぇっ!?あ、ありがとう、ございます/////」


八雲の食い気味の返事にジェミオスの顔は真っ赤になり、ヘミオスはしてやったりといった表情を浮かべて笑っていた。


「ん、んんっ!―――それでは、講義を始めてもよろしいでしょうか?お兄様?」


漸く落ち着いたところで、待ち構えていたクレーブスが問い掛けてきた。


「いやお前までお兄様って……ところでこの子たちは二人とも序列11位なのか?」


八雲は先ほど二人とも自己紹介が同じ序列だったことをクレーブスに問い掛ける。


「ああ、この子達だけ特別でノワール様が二人で一本の牙なので、問題無いと」


「なるほど……すまないな。それじゃ講義よろしくお願いします」


ノワールの案外適当な一面を知って、用意された大きな机と椅子をクレーブスに促されたまま座ると何故か、どこからか椅子を抱えてきたジェミオスとヘミオスも八雲の左右に分かれて、その持ってきた椅子に座ってニコニコしている。


「えへへ♪/////」


「にしし♪/////」


二人ともその人形のように可愛いらしい顔に満面の笑みを八雲に向かって浮かべている。


「この子達はこう見えて左の牙(レフト・ファング)の情報収集員としての役目をこなしています。外の世界にも出て彼方此方から情報を集めてきてくれる優秀な子達なのですよ」


―――城内の執務を執り行う右の牙(ライト・ファング)


―――城外の諜報活動を行う左の牙(レフト・ファング)


ジェミオスとヘミオスはその左の牙に所属するメイドだとクレーブスから紹介されると八雲は双子姉妹の仕事を聴いて、


「え?マジで!?―――凄いな!二人とも!!」


魔物も徘徊するという外の世界に出て活動しているというだけで、八雲にとっては驚きの対象だった。


「そ、そんなこと/////」


「もっと褒めてくれてもいいよぉ~♪」


中学生にしか見えない美少女双子姉妹が実は情報工作員として外の世界を飛び回っているスパイのような姿を勝手に想像して、八雲は驚きの表情で素直に感心していた。


実際に双子姉妹は無垢な少女に見えて龍の牙(ドラゴン・ファング)であり、その中でも上位12位までで構成される龍牙騎士《ドラゴン・ファング・ナイト》に名を連ねている存在である以上、見た目通りの少女ではないと改めて実感する。


「この二人がいれば外の世界の知識について八雲様に、より詳しい説明も出来ますので一緒にこの講義へ参加してもらうことに致しました」


(うん、貴女は引き籠りですもんね……)


と、心の中でツッコミを入れた八雲。


「それじゃ三人ともよろしくお願いします!」


しかし習うのは自分の側だとキッチリと挨拶を述べて講義を促す。


「はい、ではまずこの世界についてから、ご説明していきましょう。その後に魔法・魔術についてご説明します」


「分かりました先生!」


元気よく返事を決める八雲。


「先生……なんだかむず痒いですね……では―――まずは此方から」



挿絵(By みてみん)



クレーブスがそう言った途端に目の前の黒板にノワールにも見せてもらった、この世界の地図が浮かび上がった。


「おお!この地図は前に一度ノワールに見せてもらったことがある」


「そうでしたか。では地図を見ながら、この世界の地理について説明します」


クレーブスは地図の大陸を指し棒で示しながら説明していく―――


―――その内容とは、




まずこの世界には―――


【フロンテ大陸】


【デストラ大陸】


【アンゴロ大陸】


【グラント大陸】


―――という四つの大陸があり、それぞれに多数の国家が存在する。




また、その大陸とは別に大陸の周辺には単一国家として島国である―――


【シニストラ帝国】


フロンテ大陸北部ノルドの西方、海を越えたところにある島国を単一国家で統一している国。


皇帝一族の絶対的な権力と強力な軍事力を誇る。


北部の寒冷な地域の為、農耕作物が育ちは悪く食料は海産物と輸入に頼っている傾向。


しかし希少金属鉱石が採掘されるため、貿易にて経済を回している。




【ソプラ諸島連合国】


古に列島の部族同士が盟約で繋がり、のちに現在のソプラ諸島連合国として成り立った。


海産物・漁業が主な生活基盤となっており、オーヴェストと海産物交易も行っている。


南方のゾット列島国とは漁業漁師同士の小競り合いが絶えない。




【ゾット列島国】


元々ソプラと同じ部族が統一していた列島国家。


ソプラ諸島連合国と同じく海産物・漁業が生活基盤であり、スッドと交易を行っている。


ソプラ諸島連合国とは漁業権の小競り合いが絶えず、一触即発の状況となっている。


―――といった強力な軍事力・経済力をもった国家が存在する。




「―――ここまでは、よろしいですか?」


「ああ、大丈夫だ。続けてくれ」


日本で学力の下地がある八雲にとっては、このくらいの地理的な講義についていけないことはない。


「では、次に龍の縄張りについて―――」



挿絵(By みてみん)



―――新たな地図が黒板に浮かび上がる。


「これはフロンテ大陸を四つに分けた龍の縄張りを示したものですが―――」


クレーブスが続ける―――




フロンテ大陸


【大陸東部エスト】

―――蒼神龍ブルースカイ・ドラゴン


【大陸西部オーヴェスト】

―――黒神龍ミッドナイト・ドラゴン


【大陸南部スッド】

―――白神龍スノーホワイト・ドラゴン


【大陸北部ノルド】

―――紅神龍クリムゾン・ドラゴン




―――以上の四大神龍の縄張りが決まっており、この大陸の東西南北は古から神龍同士で不可侵の盟約があり、侵略行為は禁止されている。


そこで八雲が疑問に思うことをクレーブスに質問した。


「もし縄張りを挟んだ隣同士の国が戦争になると、どうなるんだ?」


「歴史上で何度かそういう事態が発生しましたが、人類の侵略行為というものは神龍にとっては関係無いのです。互いの縄張りの不可侵とは、あくまで神龍同士が侵攻しないことを意味しています」


「国同士が争って、その領土が変わっても龍同士が争って縄張りが変わらなければ我関せず、ということか」


「―――ええ。それと、それぞれの縄張りには国名に『皇国』とついた国がひとつあります。皇国とはそれぞれの縄張りでドラゴンが初めて人類と盟約を行った地が皇国となっています。そしてフロンテ大陸には神龍信仰という独自の信仰があります」




神龍信仰とは―――


神龍の棲息するフロンテ大陸独自の信仰で神龍を神格化して崇め奉り、各地に神龍信仰の教会もある。


ただ【四柱神】の信仰も並行して大陸には存在し、その信仰を妨げたり他の信仰を馬鹿にしたりする行為は禁忌とされ、宗教戦争は許されない大罪とのことだった。




四柱神信仰とは―――


―――【地聖神】


―――【海聖神】


―――【天聖神】


―――【冥聖神】


―――この四柱の神を信仰する宗教会派が存在する。


生活基盤が農耕関係の者は地聖神を、海洋沿岸では海聖神、首都や都市部では天聖神、地方の農村部などで冥聖神が主に信仰されている。




「オーヴェストの皇国って―――」


八雲の声にクレーブスが黒板に映し出した地図をスライドして拡大するとその場所を示す―――



挿絵(By みてみん)



「この『ティーグル皇国』がそうです。この地でノワール様は初めて、その地の人類と盟約を交わしました」


拡大されたオーヴェストの地図には、その中央辺りにティーグル皇国と書かれた国があった。


「その盟約って一体どんな内容の盟約なんだ?」


当然の様に疑問に思ったことを口にした八雲。


「それは、それぞれのドラゴンによって内容は異なる様です。ノワール様が当時どのような盟約を交わされたのかは、ノワール様しか知りません」


クレーブスですら知らないノワールの盟約内容が気になった八雲だが誰にも言っていないということは、きっとおいそれと口にしてはいけない内容なのだろうと何となくだが察して、それでも少し胸の奥がモヤモヤした気分になる。


そんなことを考えていると―――


「はいはぁ~い!兄ちゃん!ティーグルはパンケーキが滅茶苦茶美味しいぃんだよ♪」


右に座っていたヘミオスが手を上げて得意気な表情で甘味情報を教えてくれた。


「へ?あ、そう、そうなんだ。へぇ、パンケーキかぁ……トッピングとかあるのか?」


「ふふん♪ 蜂蜜はもちろん、クリームとかチョコとか果物とか自分で選べるお店もあるんだよ!今度一緒に行こうよ!」


「―――ヘミオス!今はお勉強中だよ!」


「ジェミオスは真面目だなぁ。別に情報を伝えた方が臨場感とかあるじゃん」


「ハハッ♪ そうだな。此処を出てティーグル皇国に行ったら真っ先に食べたいな」


「うん!その時はジェミオスと三人で行こうね♪ デート♪ デート♪」


「ふぇ!?デ、デート……兄さまと……/////」


ウキウキとした顔のヘミオスと純情可憐な雰囲気を醸し出すジェミオスを見て八雲も顔が綻んでいた。


「ん、んんっ!……続けてもよろしいですか八雲様?」


「あ、ハイ、サーセン……オネガイシマス……」


クレーブスの冷たい視線に晒された八雲は、無意識にロボット口調で返事して肩を竦めるのだった……




【エピソードタイトル】

褐色眼鏡美人教師の講義


「―――それでは、この世界の経済、と言ってもまずは通貨についてご説明しましょうか」


「通貨?つまりお金か」


「はい。この世界の通貨は共通の通貨が使用されています。ただ物価に関しては国毎に差があります。そして貨幣の種類ですが―――」


クレーブスから聞かされた通貨価値と、八雲の元いた世界の金額感覚をジェミオス・ヘミオス姉妹と話しながら照らし合わせてみると―――




【通貨】

白金貨

 形状〇(直径約8cm)=約100,000,000円



大金貨

 形状◇(直径約5cm)=約10,000,000円



金貨

 形状〇(直径約3cm)=約1,000,000円



大銀貨

 形状◇(直径約3cm)=約100,000円



銀貨

 形状〇(直径約3cm)=約10,000円



大銅貨

 形状◇(直径約3cm)=約1,000円



銅貨

 形状〇(直径約3cm)=約100円




―――大銅貨・大銀貨・大金貨は形状が四角形で大金貨は5cm、白金貨は8cmと大きさに差がある。


貨幣価値の感覚は八雲とジェミオス・ヘミオス姉妹の、その貨幣で何が買えるのか?という買える物を擦り合わせることで、概ねの価値を算出した。


一般人では通常生活で使っても金貨まで使うのは滅多にないとのことで、街中の流通ではほぼ銅貨・銀貨で商売は成り立っており、金貨以上となると大きな買い物をするか、それこそ商人や貴族・王族くらいしか使用することはないとのことだった。


因みに、貨幣価値のすり合わせはどんな状況だったかと言うと、


「ヘミオス、さっき言ってたパンケーキっていくら?」


「トッピング込みで銅貨5枚!あ、でもお店によっては6枚とかもあるかな」


「なるほど……銅貨は100円と」


―――といった具合に、それじゃ家は?貴族の屋敷は?といった感じでどんどん物を高そうな物に変えて算出した。


「さて、今日の座学はこのくらいにして、次は魔法・魔術の講義に移りましょうか」


そこからクレーブスは次の講義に移っていくのだった―――






―――通貨の話までで今日の座学は終了し、次は外に出ての魔術の講義へと移ることになり八雲とクレーブス、それとジェミオス・ヘミオス姉妹も城から出て広い場所まで移動してきていた。


「まずはこれを見て下さい」


そう言って指を空中に向けた先に、投影魔術が発動して―――



挿絵(By みてみん)



―――そこには属性の関係性についてが簡単に説明されていた。


「属性には相性があります。火は風に強く、風は土に強く、土は水に強く、水は火に強い。そういった相性を頭に入れて、もしも対峙する敵がいずれかの属性魔術を使用してきた場合、その属性に対して強い属性を使用して攻めるのが基本的な魔術戦闘となります」


「なるほど……」


「そして光属性と闇属性は他の属性よりも上位属性ですが、光と闇と双方で対極関係にあり、その属性がぶつかる場合は魔力量の大小で優劣が決まります」


「それは他の属性ではどうなんだ?」


「はい、例えば水属性で火属性の相手に攻撃した場合、相性からすれば水属性の方が有利ですが、火属性の相手の魔力が強大であった場合は、相手を撃ち倒すことも当然あります。最終的にはやはり魔力量がものを言います」


「そうか……因みに俺の魔力量って?」


そう問い掛けるとクレーブスはニッコリと眩しい笑顔を浮かべて―――


「―――もちろん人類最強クラスです♪」


現在のLevelからして理解できなくはないが他人にアッサリと言われると八雲自身にも、ぐっと現実味が湧いて来た。


「あと神の加護の中に『創造物への付与能力』ていうのがあるんだけど、これってどう使えばいいかわかるか?」


「創造物への付与、ですか……それはおそらく魔術付与(エンチャント)のことでしょう。武器や防具に魔術属性を付与することで、さきほど説明した相手の苦手な属性で攻めたり、逆に相手の属性に対して強い属性で防御を固めたりする魔術のひとつです。八雲様の場合は自身で造った武器や防具ならその魔術付与(エンチャント)が使えるということでしょう。ではそれを試しましょうか」


「わかった。やってみる」


『収納』にしまっていた黒刀=夜叉を開いた空間から取り出すと、隣で見ていたジェミオス・ヘミオス姉妹から「はわぁ~」「おお~」、と夜叉に注目して可愛い声をあげていた。


その夜叉を手に取ってスラリと鞘から抜き放つと―――


「―――魔術付与(エンチャント)」


火属性の魔術付与をイメージして八雲は手にした夜叉に込めてみると、刃紋に赤い炎が走ったかと思うと炎の剣と言っても過言ではない夜叉が完成する。


「ふわぁ~!スゲー!兄ちゃん兄ちゃん!その剣て兄ちゃんが造ったの?変わった形してるよねぇ~!シニストラ帝国の『サーベル』やソプラやゾット列島の『カットラス』にも似てるね!片刃だしさ!」


ヘミオスは興奮気味に八雲に話しかけてきて、瞳をキラキラ輝かせている。


「あ、アンゴロ大陸の剣の方が似てるんじゃないかな?同じような片刃だし、細さもけっこう似てるよ?」


ジェミオスも自分の記憶から、刀に近い武器について語ってくれた。


北部のシニストラ帝国の屈強な軍隊ではサーベルが常備帯剣として採用されている。


ソプラ諸島連合国とゾット列島国の海の男達は、昔から伝統的な武器としてカットラスを用いている。


アンゴロ大陸にも刀に似た剣があり、武士(もののふ)という職業(ランク)が存在し、武士以上の立場の者は皆その刀の様な剣を持っているという。


八雲は、この世界にも色々な武器があるということを知ったことと、そんな離れた国のことをよくここまで知っているジェミオス・ヘミオス姉妹に改めて驚いていた。


「では、その魔術付与(エンチャント)した武器の威力を直接体感して頂きましょうか―――《召喚《サモン》》」


クレーブスは魔術付与の威力を八雲に確認してもらうために、召喚魔術を使用して魔物を召喚する。


そこに召喚されたのは―――巨大な石でできた身体で人型の魔物であるゴーレム三体だった。


「八雲様、このゴーレムを相手にその効果を確認してみて下さい」


「ああ、わかった。危ないから少し下がっててくれ」


八雲の指示にクレーブスとジェミオスも下がるが、ヘミオスは近くで眺めているのを見て、


「ヘミオス危ないぞ」


「平気平気♪ これでも序列入りしてるんだよ?心配しなくていいから、兄ちゃんやっちゃいなよ♪」


これが普通の中学生なら頭を叩いてでも下がらせるところだが、ここは異世界、相手は小さくても龍の牙(ドラゴン・ファング)と考えたら、八雲もアッサリと納得することにした。


「それじゃ―――推して参る!」


そう掛け声するや否や、八雲は高速の動きで目の前の三体のゴーレムに突進していく。


―――するとゴーレム自体の動きは八雲からしてみれば、とても鈍重で、接近する八雲への対応はスローモーションのようであり、一体目が振り上げた腕を振り下ろす前に胴が夜叉で斬りつけられて、その傷口から噴き出すように炎が上がり、石の身体は赤色化して一部溶解が始まっていた。


(思った以上に抵抗がなかったな。熱したナイフでバターを斬るみたいな感覚だ)


そう思いながら二体目のゴーレムには両腕を切り落とす勢いで連撃を仕掛けて斬りかかり、その両腕は地面にドスン!と落下し、そのまま八雲はゴーレムの頭の高さまで飛び上がると、頭頂部から真っ直ぐに夜叉を振り下ろしてゴーレムを真二つに両断する―――


―――着地直後、三体目のゴーレムが接近してきているのを感知していた八雲は腰を低く、しゃがんだまま振り返りつつゴーレムの両脚を斬りつけ切断すると、下半身が不安定になったゴーレムは前のめりに倒れ始めて、そこから八雲は逆に身体を立たせる形で、ゴーレムの腕を躱しながら脇をすり抜け際に、脇腹を斬りつけて通り抜ける。


脇腹を斬り抜かれたゴーレムはそのまま地面に倒れ込み、動かなくなった―――


夜叉を振り払い、刀身に纏った炎を振り払うと、スッと夜叉を鞘に収めた。


硬い石の身体を斬りつけたが、何の抵抗も感じず斬り裂けたことに当の八雲も魔術付与の威力に驚いていた。


(これも敵の属性や相性を考えて立ち回らないと不利有利があるな……)


八雲が戦闘分析を冷静に行っていると、ジェミオス・ヘミオス姉妹が近づいてくる。



「スゴイや兄ちゃん!スパスパッ!て斬れてたねぇ♪」


「さすがお見事です兄さま/////」


ジェミオス・ヘミオス姉妹に褒めちぎられて少し照れ臭い八雲だったが、その場にしゃがんで倒したゴーレムの切断面を検証する。


「おお……なんだか鏡みたいにツルツルの斬り口だねぇ♪ ほら僕の顔が写ってるよ!」


「思った以上に斬れ味が上がった、と言うより『溶かして斬った』っていうのが正解かもな。魔術付与の上乗せ攻撃力が予想以上でビックリだ」


そこにクレーブスもやってきて、同じくゴーレムの切断面を見て、


「どうやら魔術付与に関してはご理解頂けたみたいですね。それでは今日の講義はここまでと致しましょうか。このあとノワール様とアリエスの武器をお造りに行かれるのでしょう?」


「ああ、昨日約束したからな」


昨日、講義のあとにノワールには大太刀を、アリエスには脇差しを造ることを約束していたので、シュティーアの工房に向かおうかというところで、


「ええ?!ノワール様とアリエスの武器を造るの?!良いな良いなぁ~!僕も造ってほしい!!」


「ちょ、ちょっとヘミオス!ダメだよ!兄さまにそんなお願いしたら―――」


「―――別にいいぞ。二人はどんな武器がいいんだ?得意な武器とかあるか?」


「エエエッ?!い、良いんですか?/////」


「さすが兄ちゃん♪ わかってるねぇ~!」


八雲の即答にジェミオス・ヘミオス姉妹は花が咲いたような笑顔になっていた。


(なんだか、本当に妹ができたみたいだな)


八雲はそんな二人を見て、自分も同じく笑顔を浮かべていた。


「僕ね!僕ね!双剣が好きなんだぁ♪」


「わ、私も……双剣が得意です/////」


さすがは双子と言うべきか、得意な武器も一緒と聞いた八雲は妙に納得した。


「それじゃ工房に行くか」


そうして八雲達は城に向かって歩みを進めるのだった―――






―――クレーブスの講義を終えてシュティーアの工房にやってくると、すでにノワールとアリエスが待ち構えていた。


「遅いぞ八雲!我を待たせるとは―――」


「―――ああ、はいはい、待たせてゴメンねぇ~あと期待してくれてありがとねぇ~」


「グヌヌッ!/////」


食い気味に丁寧な謝罪と感謝の気持ちを返事すると、ノワールは顔を真っ赤にして唸っていた。


(てか、グヌヌッていうヤツ初めて会ったわ……)


そうツッコミたかったが、余計にノワールがヘソを曲げても面倒なので、八雲は黙っていることにした。


「それで、ジェミオス・ヘミオスの二人も一緒に来たのですね」


「あ、僕達も兄ちゃんに武器造ってもらうんだぁ♪」


「兄さまが一緒に造っていいよと仰って下さいまして/////」


「兄ちゃん!?兄さま?!」


二人の話に「兄ちゃん」と「兄さま」というキーワードに反応するノワールとアリエスの顔が、一瞬でジト目に変わって八雲に突き刺さる。


(オゥ……何この視線、俺死ぬの?)


八雲が青い顔をしだしたところで、工房の奥からシュティーアが顔を出して現状の状況に思わず、ん?と首を傾げていた。


それから八雲は武器の創造について、参考になる武器を探してきて欲しいことを皆に伝える。


「さてと、それじゃ始めるか!ノワールは大太刀、アリエスには脇差し、それにジェミオス・ヘミオスには双剣だな。それじゃ工房にある武器で長さとか重さが似通った武器を持ってきてくれるか?イメージしやすいから」


そう言われた武器希望者達は、元気に返事をしながら工房に置かれた武器の山に、一斉に駆け出していった。


「怪我すんなよ!」


走り出した背中に声をかけながら、八雲も皆の武器についてイメージを始めた―――




【エピソードタイトル】

黒神龍の武器


―――まず初めに戻ってきたのはアリエスだった。


アリエスは元々、八雲の黒刀=夜叉よりも少し短めの刀が希望ということで形などは大体イメージはついていたので、あとは希望の長さくらいだった―――


「八雲様、このくらいの長さが丁度いいのですが」


差し出されたのは両刃の剣だったが、長さは2尺(60cm)未満で丁度脇差しの長さに合っていた。




脇差しとは―――


刀身の長さが1尺(約30㎝)以上、2尺(約60㎝)未満の刀剣のことで、名称の由来については諸説あるが、「腰の脇に差したから」というのが定説となっている。

江戸時代以前までの脇差は、同時に佩刀する打刀と異なる外装が用いられていた。

江戸時代以降、大小二本差(だいしょうにほんざし)が武士の正装として見なされるようになると、柄、鞘の素材や色を打刀と統一した拵が使用されるようになる。

また、脇差は武士が農民などから無礼な態度を取られた場合、合法的に相手を斬る「斬り捨て御免」(無礼討ち)においても使われていた。

斬り捨て御免では、武士は打刀を使い、相手に自分の脇差を与えて、刃向かわせてから斬るといった形式で行なわれたと言う。




「如何でしょうか?」


少し不安そうに聞いてきたアリエスに、


「いや、大丈夫だ。それじゃ皆が揃ってから順番に始めるから、待っていてくれ」


「はい♪」


嬉しそうな笑顔を浮かべて八雲に寄り添うようにしてニコニコしながら、他の武器希望者達の悪戦苦闘している様子を眺めている。


(アイツら、ちゃんと探せるのか?)


ああでもない、こうでもないと言いながら武器を漁るノワール達に八雲は少し不安と呆れ気味な表情になるが、アリエスは八雲の隣でずっとニコニコしていた。


そうして―――ようやく全員が使いやすい武器を手にして持って帰ってきた。


「八雲!我はこのくらいの長くて、太くて、硬いのがいい//////」


そういって八雲に長剣を差し出すノワール。


「あ、はいそうですね……Level.100になったらね?さて、ふむ、なるほど。確かにノワールは大太刀が合っているみたいだな」


「そうか!だが見た目よりも重たくしてくれ!我に合う大太刀を頼むぞ八雲!!」


八雲はノワールが持ってきた長剣を検分して、3尺(約90cm)と大太刀に見合う剣だと確信する。




大太刀とは―――


「大太刀」とは、刃長が3尺(約90㎝)以上ある大型の太刀のことであり、「野太刀」とも呼ばれており、八雲のいた日本では神社などへ奉納するための太刀だが、騎乗用の武器として実際に戦場でも使用されたと言われている。

戦場で使う場合、従者に鞘を持たせて抜くか、従者に抜かせて主人に渡し、使用していたと言われている。




「ノワール、ジェミオスとヘミオスが戻ってくるまでちょっと待っていてくれ」


「ああ、構わん。別に急ぐような用事も無いしな」


長い黒髪を指でスゥーと櫛のように梳かしながら、相変わらず美しい笑顔を浮かべて、双子姉妹の様子を眺めていた。


「お、お待たせしました/////」


「なかなか思ったのがなくて、ごめ~ん♪」


申し訳なさそうに戻ってきたジェミオスと、悪びれることもなく軽い謝罪で戻って来たヘミオスの二人から、希望の双剣に見合う剣を受け取る八雲。


「大丈夫だ。長さはこのくらいでいいのか?」


ジェミオスが持ってきた剣は直剣型の剣で、長さは2尺(約60cm)ないくらいの長さで、ヘミオスが持ってきたのは、講義の際に話に出たカットラスのような剣で、長さはジェミオスの持ってきた剣と変わらないくらいの長さだった。


八雲の確認に「はい!」と元気よく返事をするジェミオス・ヘミオス姉妹が戻ったことで全員の武器の参考が集まり、八雲は次に移る。


「よっこらしょい!」


掛け声と同時に八雲は『収納』の空間から、13枚の黒神龍の鱗を取り出す。


(う~ん、大太刀に10枚、脇差しに1枚、直剣双剣に1枚、片刃双剣に1枚で全部で13枚……ノワールは普通じゃないから10枚で造って、まぁこれくらいだろう)


ザックリと素材の量を確認して、八雲はまず1枚の鱗から『創造』を開始する。


輝き出した鱗が、徐々にその形を変えていく―――


「おお~!スゲーな兄ちゃん?!これが兄ちゃんの『創造』なんだね♪」


横で見ていたヘミオスが面白そうに瞳をキラキラさせながら、八雲の作業を見つめている。


そうして―――そこには一振りの刀がそこに誕生した。




―――黒の脇差し、銘を金剛(こんごう)


長さ2尺より少し短い脇差しは、夜叉と同じく黒の柄に金の鍔、だが金の模様が入った鞘は、金剛の名に因んで飾られている。刀身は黒くメッキ調の鏡面仕上げに美しい刃紋がはいっており、使いやすい造りとなっている。




「アリエス、持ってみて具合を見てみてくれ」


「はい!……」


アリエスは八雲から黒脇差=金剛を受け取り、鞘から抜いて軽く振り、使い勝手を確かめていく。


「大丈夫です♪ ありがとうございます八雲様。一生大切にしますね♡」


「そこまで喜んでもらえたら、作った甲斐がある」


「あの、『金剛』という銘には、何か由来が?」


「ああ、俺の世界の神様に『金剛夜叉明王《こんごうやしゃみょうおう》』という神様がいるんだけど、その神様が俺の夜叉の由来になった神様なんだ。鬼神から改心して守護神になった神様で、俺の夜叉に似てるのが良いって言ってたから名前もその神様からもらったんだ」


「そうなんですね……金剛夜叉……八雲様の夜叉と同じ神様のお名前から……とても素敵です♪/////」


八雲の説明に納得したようで、アリエスはご機嫌な様子で、その豊かな胸の間に金剛を抱きしめて顔をほんのりと赤らめていた。


(気に入ってもらえてよかった……しかし、脇差しが胸に挟まれている姿が、ここまでグッとくるとは……)


胸に挟まれた脇差しの姿が卑猥に見える八雲はまた自分の性欲が溜まりだしたことに気がついていた。


(これだけ美女・美少女に囲まれると感覚が狂っちまう……)


八雲は気持ちを引き締め、気合を入れて次の『創造』に入る。


「次はジェミオス・ヘミオスの双剣だ」


「お!やったぁ♪」


「そ、その、ノワール様より先でよろしいのでしょうか?」


ヘミオスは歓喜していたが、ジェミオスは主であるノワールより先でいいのか、不安に思っている様子だった。


「かまわん。我の武器は最後に気合を入れて作ってくれるつもりなんだろう八雲?」


不安顔をしているジェミオスに、ノワールは笑みを浮かべて飄々と答えた。


「ああ、ノワールの大太刀は鱗10枚使って作ろうと思ってるから、先に二人の双剣を造っておこうと思ってな」


「我の武器は10枚か、いいぞ♪ 存分に良い物を造ってくれよ」


「もちろん」と答えた八雲は、再び鱗と向き合って加護『創造』を駆使する。


(さて……ジェミオスは直剣型の双剣、ヘミオスは片刃の双剣か……)


直剣型の双剣は西洋剣の両刃の直剣を、片刃の双剣は同じくらいの長さで、ヘミオスが持ってきたカットラス型の双剣で構造していく―――




―――黒の直双剣、銘を日輪(にちりん)


西洋剣風の両刃の黒い直剣に、金を用いた鍔、白を基調にした柄、そして黒い鞘には太陽を模した蒔絵のような模様を入れた。




―――黒の曲双剣、銘を三日月(みかづき)


カットラス型の黒い曲剣に、銀を用いた鍔、白を基調とした柄、そして黒い鞘には三日月を模した蒔絵のような模様を入れた。




出来上がった双剣を八雲はジェミオスには黒直双剣=日輪、ヘミオスには黒曲双剣=三日月を手渡した。


「はわわわぁ♪ 兄さま、本当にこれを頂いてもよろしいのですか?/////」


「ワァオ~♪ 滅茶苦茶キレイでカッコいいよぉ!!兄ちゃんありがとう♪」


受け取った二人はそれぞれの個性的な喜びの声を上げ、八雲に羨望の眼差しを向けていて、その姿を見た八雲は、


(ホント妹は最高だぜ……イカン、なんかグッとくるぞこれ。無意識に護りたいこの笑顔……)


などと考えて感慨に耽っていたとき、黒神龍様の美声が響いた。


「さあぁ!!次はいよいよ我の番だな!ほれ造れ!今すぐ造れ!もう待てないぃ~!!!」


「―――子供かっ!」


放っておけば床に寝転がって、ジタバタしそうな勢いのノワールにツッコミを入れながら、八雲は用意した10枚の鱗の山に向き合う。


(ノワールの希望は大太刀。長さは3尺(90cm)くらいで造ってみて、合わないなら微調整していくって感じで)


方針が決まった八雲は『創造』を発動、10枚の鱗はひとつになり圧縮され、形を変えていき、やがて細長い姿に纏まっていく。


(おおお!こ、これは今までよりも急激に力が吸われてる感覚が?!龍の鱗10枚で造ろうとすると、ここまで力を使うのか……)


―――ステータスの数値とは別の何か、精神的なものが吸い取られる感覚を感じながら、八雲は自分の思い描いた大太刀を形造ることに集中する。


流動的に形を変え、引き締まるように圧縮されていったその鱗はやがて―――


「はぁはぁ、出来た……」


そこに現れた一振りの大太刀は、神々しい光を放ち―――そこに顕現した。




―――暗黒の大太刀、銘を因陀羅(いんだら)


暗黒と呼ぶに相応しい闇色の刀身は鏡面仕様で怪しく光り、その長さ3尺(90cm)。

黒い柄も刀よりも長く、鍔は夜叉と同じく金拵えで造り、長大な鞘は漆黒の体に流れるような金と銀の線が絡まる模様を蒔絵のように入れた。

10枚の鱗を圧縮しただけあって、その重さも普通の人間には扱えないほどの代物となり、Levelが高い八雲でも重さを感じる。




その黒大太刀=因陀羅を受け取ったノワールは―――


「オオオッ!これが、八雲が我のために造ってくれた大太刀か……うむ、この確かな重さと風格、我が手にする武器に相応しい」


と、ご満悦の表情でウットリしながら因陀羅を見つめていた。


「ハァ、流石に10枚はかなり疲れた……」


「うむ!存分に休め!ところで八雲、因陀羅という銘の由来を聞いてもいいか?」


名前の意味が気になったノワールは、ワクテカした表情で八雲に詰め寄る。


「うん、因陀羅っていうのは、俺の世界の神様なんだけど、雷霆神、天候神、軍神、英雄神と言われていて、天帝、天空の神として神々の中心的な神様の名前だ」


八雲の説明にノワールのみならず、アリエス達からシュティーアの工房のドワーフ達まで聞き入っていた。


「そのような神が……ノワール様に相応しい武器の銘ですね。それに八雲様の世界の神話も興味深い」


と、クレーブスが眼鏡をクイッと上げ直す。


「まぁ俺の世界の話はまた今度、ゆっくりしよう。それより、新しい武器を造ったら―――恒例の試し斬りだろ!」


八雲の声に、ノワールと龍の牙(ドラゴン・ファング)達は黒い笑みを浮かべて、その瞳を怪しく輝かせていた……






―――武器を手に城を皆で出て、鍛練場となったお決まりの平原まで来るとノワールが自分で召喚魔法を発動させた。


「試し斬りは我からいかせてもらうぞ!―――《召喚《サモン》》!!!」


血気盛んな勢いで《召喚》魔法を発動したことで浮かび上がった魔法陣は、八雲が今まで見てきた魔法陣とはケタ違いに巨大なものだ。


魔法陣から膨大な光が放たれ、ドスンッ!!といった重たい何かの塊が地面に落ちたような地響きが響いた直後、地面から舞い上がった砂煙がモウモウと立ち上る。


―――ゆっくりと収まり始める砂煙。


そこには―――岩山のような巨大な体躯があった。


その巨大なものは、見た目は犀のような姿で、鼻先には曲線を描いた立派な角がそそり立っている。


だが―――その大きさは八雲の世界の知っている犀とは根本的に別物の巨大さだった。


「これは……犀?」


「サイ?なんだそれは?コイツは―――ベヒーモスだ!」


「ベヒーモス……」


足元にいけば見上げる必要があるほどの巨大な魔物に、八雲の空いた口が塞がらない。


「さてと……獲物は召喚したし、あとは―――試し斬りだあぁあ!!!」


叫ぶノワールは両手で柄を握って、長大な黒大太刀=因陀羅を引き抜く。


大太刀は本来、従者が鞘を握って主人が抜くか、従者が抜いた大太刀を主人に渡すのだが、ノワールは空中に何等かの力で固定した鞘からスラリと一気に刀身を抜き去っていて、その鞘は空中に浮いたまま、やがてノワールの『収納』空間に仕舞われた。


(なるほど、鞘の切っ先の方を『収納』に差して固定してから抜いたのか)


その方法ならどんな長剣でも鞘を抜く時の手間がないなと八雲は感心していたが、ノワールはそんなこと構わずベヒーモスに向かって突進していた。


疾走するノワールを目にしたベヒーモスもまた、ノワールに向かって突進を開始するが一歩一歩が大岩を落とすような勢いなので、歩むたびに地面に地響きが起きた。


「アハハハハッ!!―――ヤル気だなベヒーモス!我の因陀羅の試し斬りに相応しいぞ!来い来いっ!!」


喜々とした表情で進攻するノワールと地響きを響かせて近づくベヒーモスが、ついに衝突する瞬間ノワールが肩に担いでいた因陀羅を両手で握り直し、その雄大な暗黒の大太刀を躊躇いなく振り下ろしたのだった―――




【エピソードタイトル】

ベヒーモス戦


―――ノワールの振り下ろした因陀羅が、正面から突進してきたベヒーモスの鼻の上にある巨大な角と激突した。


だが、激突したはずの両者はまるで何もなかったかのように、お互いの脇を通り過ぎた―――


「フフンッ♪」


ベヒーモスとすれ違って距離を取ったノワールは、肩に因陀羅を置いて鼻で笑いながら振り返る。


だが、対するベヒーモスはさきほどまでの勢いはすでになく、よろよろとした足取りで数歩進むとピキッといった音を立て、ベヒーモス自慢の巨大な角が一直線の切断面から斜めにズレ落ちながら、地面にドスンッ!と滑り落ちた。


(いや、見えなかったんですけど?!)


ノワールの攻撃が追い切れなかった八雲は、強くなったといっても上には上がいることに、改めて自分自身を戒めた。


「どうしたベヒーモス?自慢の角はどうした?どこかに落としたのか?」


【BUHOOOOOO―――ッ!!!】


空気が震えるほど野獣の巨大な雄叫びを響かせたベヒーモスは、踵を返して再びノワールの方に振り向いた。


「ほお……さすがは陸上最大級の魔物だ。プライドだけは一人前だな」


因陀羅で肩をトントンと叩いて、再び両手で柄を握りしめるノワールに向かってベヒーモスが再び突進を開始する。


対するノワールは因陀羅を構えたまま、その場から一歩も動かなかった。


どんどん速度と砂煙を上げて突進するベヒーモスが怒りのあまり口元から唾液をまき散らし、血走った眼でノワール目掛けて頭突きの姿勢に入ると、そのノワールは因陀羅をスウッと上段に構えて静止した。


【GURUHOOOOOO―――ッ!!!】


失った角のことを恨んでいるかのようなベヒーモスが、鼻息荒く突っ込んでいくと同時にノワールが静かに因陀羅を振り下ろした瞬間、その姿がベヒーモスに重なり飲まれたかに見えた。


だが実際は―――振り下ろされた因陀羅の刃が触れたところから、ベヒーモスの身体はまるで竹を割ったかのようにスパッと左右に斬り裂かれていった。


己の突進力によって身を裂かれながらも進み続けたベヒーモスは、やがてノワールを完全に通り過ぎて左右に身を裂いて倒れた。


ノワールは絶命したベヒーモスに振り返ることもなく、その黒く切れ長の美しい瞳で掲げた因陀羅を見つめている。


「素晴らしい……これほどの業物、この世界にもそうありはしない。感謝する八雲」


そう言ったノワールはニコリと笑みを浮かべて、八雲に感謝の言葉を述べていた―――






―――ノワールの因陀羅が陸上最大級の魔物ベヒーモスによる試し斬りが終了して、


「それじゃあやるぞ!―――《召喚《サモン》》」


ノワールの掛け声と同時に、さきほどと同じ巨大な魔法陣が2つ地面に浮かび上がる。


再び《召喚》によって呼び出されたのは、なんと二体のベヒーモスだった。


ノワールの召喚したベヒーモスの一体にはアリエスとジェミオス・ヘミオス姉妹が向かって行く。


もう一体のベヒーモスは、鍛練相手として八雲が相手をすることになった。


アリエスは腰に差した黒脇差=金剛の柄に手を置いて、ベヒーモスに向かって行く。


その左右にはジェミオス・ヘミオス姉妹が、その両手に黒直双剣=日輪と黒曲双剣=三日月を握って駆け出していた。


アリエス達と向かい合ったベヒーモスは、鼻息荒く睨みつけながら三人に向かって突進を開始し、犀のようなその角を向けて誰を狙おうかと口から涎を撒き散らしながら唸り声を上げている。


アリエスは抜刀すると同時にベヒーモスの頭上高くにジャンプすると、左右のジェミオス・ヘミオス姉妹がベヒーモスの左右から前脚、後脚と続けて日輪と三日月で斬りつけ、途端にベヒーモスは突進の勢いを失う。


勢いの落ちたベヒーモスの頭上から、ジャンプしていたアリエスが空中から金剛を構え、落下してきたと同時に、ベヒーモスの硬い皮膚装甲を金剛で刺し貫いた。


【BUHOO!!GURUHOOO―――ッ!!!】


首の後ろ辺りを刺されてベヒーモスは雄叫びを上げて暴れようと藻掻くが、全ての脚を斬られ動けないベヒーモスは首だけを上下左右に動かすのみだった。


「フンッ!ハアアア―――ッ!!」


アリエスが気合いとともに突き刺した金剛を逆手に持って、そのままベヒーモスの尻尾に向かって背中を走り抜けて斬り裂いていく。


【GURUOAAAA―――ッ!!!】


最後の断末魔を上げて、やがてベヒーモスは息絶えた。


ジェミオス・ヘミオス姉妹は脚を攻撃したあとは、ベヒーモス側面の腹部に試し斬りと言わんばかりに斬りつけ捲って無数の切り傷をつけていた―――






―――もう一体のベヒーモスと対峙した八雲は、どうやって倒すかを『思考加速』で考察する。


この世界に来て色々検証していた八雲だが、その中でも鍛錬中におけるLevelの上昇、その経験値を得るタイミングは決して敵を絶命させた際に起こるのではなく、敵に攻撃中であっても何等かの判定をクリアした場合、Levelが上がることを突きとめていた。


ならば、その判定は攻撃数や使用数、熟練度のような条件が達成されると起こるのではないか?と、そう結論した八雲は巨大なベヒーモスを前にして、ここで一気にLevelアップを図る作戦を立てた。


(これだけデカブツなら、うん、アレでいくか)


方針の決まった八雲は、夜叉をスラっと鞘から抜いて正眼に構えた。


八雲の敵対行為を目にしたベヒーモスは、ギョロっと眼を八雲に向けて、他のベヒーモスと変わらぬ習性の行動で突進を開始した。


八雲はその場から動かず、ジッとベヒーモスを睨みつけて静止している。


やがてベヒーモスは八雲の目の前まで来ていたが八雲は夜叉を左手のみで握り、その切っ先を下げてしまった。


「―――八雲様ッ!!!」


すでに自分達の相手だったベヒーモスを倒して八雲の様子を見に来たアリエスは、ベヒーモスを前にして刀を引いた八雲に思わず叫び声を上げる。


「九頭竜昂明流《くずりゅうこうめいりゅう》体術

―――『衝(しょう)』!!!」


腰を低く構えた八雲は、右腕を思い切り後ろに引き下げてベヒーモスが衝突する瞬間、その手を思い切り前に繰り出す。


ゴオオオオ―――ンッ!!!という特大の衝突音と同時にベヒーモスの鼻っ柱に突き出された八雲の掌から空気を震わせるほどの衝撃波が発生し、ベヒーモスも動きを止める。


元来この技は敵の顔面に掌底を入れることで怯ませて倒すという技なのだが、肉体強化された八雲の掌から繰り出された衝撃波はベヒーモスの全身に伝わり、硬質の皮膚装甲のあちこちにピキピキッ!と亀裂を発生させた。


ベヒーモスが衝撃で脳も揺られて意識を失っているのか、動けない状況に陥っているのを確認すると、八雲は夜叉を両手で握り直して、再び正眼に構えると―――


「九頭竜昂明流《くずりゅうこうめいりゅう》剣術

―――『破斬(はざん)』!!!」


次の瞬間、八雲が繰り出した夜叉が鼻先から斬りつけると、ベヒーモスにどんどんその斬撃の速度を上げていく―――その速度は、すでに常人では目が追いつかない。




「斬!―――斬!―――斬!―――斬!―――斬!――斬!――斬!―斬!―斬!―斬!……斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!――――――斬!!!」




身動きの出来ないベヒーモスを頭の方から超高速で繰り出す斬撃で次々と肉片に、骨片に文字通り微塵切りに変えていく八雲に、声を上げたアリエスのみならず、ノワールまでが呆気に取られていた。




「斬!―――斬!―――斬!―――斬!―――斬!――斬!――斬!―斬!―斬!―斬!……斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!――――――斬!!!」




筋肉は斬り裂かれ、内臓も斬り裂き、吹き出す血までも払いコートにも返り血を浴びない高速の剣技という超絶技を見せ続ける。




「斬!―――斬!―――斬!―――斬!―――斬!――斬!――斬!―斬!―斬!―斬!……斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!斬!――――――斬!!!」




やがてベヒーモスを頭から微塵切りに解体していく八雲が、最後の尻尾近くまでベヒーモスの身体の真ん中をひたすらに進み、




「―――破斬ッ!!!」




斬り抜けてベヒーモスの身体から飛び出した八雲の背中には、肉片の山と化したベヒーモスがあるだけだった。






―――さきほどまでの激しい動きと斬撃と衝撃音が消え、辺りが静まり返る。






―――異世界で得た超人的な力で繰り出す『破斬』の連撃は、八雲の想定以上に凄まじい経験値の上昇を起こした。






―――そして、どこからともなく耳に響く教会の鐘のような音色。






動きを止めた八雲の脳裏には―――ガラァーン♪ ガラァーン♪ とまるで教会の荘厳な鐘の音のような音が鳴り響き、そして……


意識もしていないのにステータス表示が勝手に八雲の脳裏に浮かび上がり、そこに表示されている自身の能力を八雲は見つめていた。


「……Level……100……ついに」


この胎内世界で立てた目標Level.100を目指して、ひたすら魔物を斬り続け、ここに至ったことにはノワールやアリエス達龍の牙(ドラゴン・ファング)の皆のお陰だと、胸のなかで感謝する。


「―――八雲ッ!!お前、まさかこんな短期間で、本当にLevel.100に……よくやったな」


ノワールもこの短期間でLevel.100に到達した八雲に驚愕したが、それ以上に自分の選んだ御子が成長した姿を感慨深そうに、まるで母親のような表情で笑みを溢していた。


「まさか……本当にLevel.100まで到達されるとは……八雲様にはまだまだ謎が多くて興味が尽きないな……」


呆れ気味の表情を混ぜながらもクレーブスは少し笑みを浮かべている。


「え?え?兄ちゃんLevel.100になったの?まだここに来て数日だよね?兄ちゃんスゴーイ!!」


「あ、あの、兄さま!おめでとうございます/////」


数日でLevel.100に到達した八雲をジェミオス・ヘミオス姉妹は、兄として慕う八雲に憧れを抱いた瞳を向けて笑い合う。


「信じられないねぇホント。でも、八雲様ならって何故か納得してるアタイもどうかと思うよ♪」


シュティーアは呆れながらも『八雲なら仕方がない』、という謎の方程式を導き出して、ひとり納得していた。


そして、ゆっくりと八雲に近づくアリエスは―――


そのまま真っ直ぐに八雲に飛び込んで、唇にキスをしていた。


「ん?!ン!んんッ!……ちゅ……ん、ふはぁ!ア、アリエス!?」


「ん♪……八雲様、大好きです♡/////」


そんな二人だけの世界に八雲を連れ去ろうとしたアリエスだったが―――


「なぁにをしとるかァアア―――っ!!!」


目の前で御子の唇を奪われたノワールの殺気と怒号が一気に場を包み込む。


ドスン!ドスン!と一歩ずつ八雲とアリエスに近づくノワールに、八雲は日本人でいえば浮気の現場に凸された旦那の気分を思い浮かべて青い顔をしていたが、アリエスは―――


「八雲様との関係をお認めになったのはノワール様ご自身ではありませんか?」


と、平然とした顔で言ってのけた。


その言葉に先ほどまで鬼のような顔をして接近していたノワールだが、途端に狼狽える。


「う!いや!確かにそう言ったが……いや、一度言ったことを覆すなどよくないな。しかしアリエスよ、時間と場所を弁えよ」


「あら?では夜であれば問題無いのですね?八雲様、今夜にでも―――」


「ダメだッ!!Level.100になったら我との初夜を迎えると約束しているのだ!!!」


「あら、では仕方ございませんね♪ ノワール様どうぞ頑張って下さいませ」


「あ……/////アリエス……お前……わざと……/////」


自ら口に出来るようにアリエスに誘導されたことに顔を真っ赤にしてグヌヌッ!と唸るノワールだが、アリエスはそんなことどこ吹く風と全く気にしていない。


そんな青春ラブコメの1ページを眺めつつも、八雲はさきほど現れたステータスが気になっていた……


【ステータス】

Name:九頭竜 八雲(ヤクモ=クズリュウ)

年齢 18歳

Level 100

Class 超越者 転移者


超越者:Level.100以上になった者


生命 1436591/1436591

魔力 957727/957727

体力 957727/957727

攻撃 1436591/1436591

防御 957727/957727

知力 100/100

器用 100/100

速度 100/100

物理耐性 100/100

魔法耐性 100/100


《神の加護》

『成長』

取得経験値の大量増加

各能力のLevel UP時の上昇数値の大量増加

理性の強化

スキルの取得向上強化


『回復』

HP減少時に回復・超加速

MP減少時に回復・超加速

自身が直接接触している他者の回復・超加速

広域範囲回復・超加速


『創造』

素材を加工する能力

武器・防具の創造能力

創造物への付与能力

疑似生命の創造能力


《黒神龍の加護》

『位置把握』

自身の位置と黒神龍、さらに眷属のいる位置が把握出来る

『従属』

黒神龍の眷属、自身の加えた眷属を従える

『伝心』

黒神龍とその眷属、さらに自身が加えた眷属との念話が可能

『収納』

空間を開閉して物質を保管する能力

『共有』

黒神龍と同じ寿命を得る

『空間創造』

自身の固有空間を創造し、その中に建造物、生物を置く能力


《取得魔法》

『身体強化』

魔力量に応じて体力・攻撃力・防御力が上昇

『対魔法防御』

魔力量に応じて対魔法攻撃防御能力が上昇

『火属性魔術』中位/極位

『水属性魔術』基礎/極位

『土属性魔術』基礎/極位

『風属性魔術』基礎/極位

『光属性魔術』基礎/極位

『闇属性魔術』基礎/極位

『無属性魔術』基礎/極位


《取得スキル》

『鑑定眼』

物質の理を視る

『言語解読』

あらゆる種族の言語理解・文字解読

『酸耐性』

あらゆる酸に対する耐性

『毒耐性』

あらゆる毒に対する耐性

『精神耐性』

あらゆる精神攻撃に対する耐性

『身体加速』

速度を瞬発的に上昇させる

『思考加速』

任意で思考を加速させる

『索敵』

周囲の索敵能力 索敵対象:生物・物質

『威圧』

殺気により恐慌状態へと堕とす



『受精操作』

妊娠操作が可能

『絶倫』

精力の増加

『神の手』

愛情をもって触れる異性に快感を与える


《九頭竜昂明流古武術(八雲強化)》

剣術(強化)

槍術(強化)

弓術(強化)

組討術(強化)



『超越者』という表示……だが実際にLevelが100になった今もさっきまでとそれほど違いはない。


(ただの称号なのか?それとも何か意味があるのか?)


他にもところどころの能力が強化されたりしているが、まだまだ自分のことなのに謎が多いことが八雲自身の心に霞のようなものがかかっているような感覚を覚えさせていた。


それに魔法属性に『無属性魔術』が新たに加わっていたが、魔法の講義でも聞いたことがない八雲は少し困惑する。


そんなとき、ノワール達の話し合いはいつの間にか―――


「よし!アクアーリオを呼べ!八雲が捌いたベヒーモス肉で祝いの席を用意させろ!ベヒーモス食い放題の飲み放題だ!!」


「え?―――あれ食うの!?」


ベヒーモスを食材扱いするノワールと、それを聞いて歓喜する牙娘達に八雲は顔を引きつらせてドン引きしていた……




【エピソードタイトル】

夫婦の絆 龍紋


―――八雲が微塵切りにしたベヒーモスの肉片等の回収に、アクアーリオが厨房手伝いのメイド達を連れてやってきた。


「ありがとうございます八雲様♪ これで暫く肉には困りませんわ♪―――さぁ皆!鮮度が良いうちに急いで保存庫まで運ぶわよ」


礼を言ったアクアーリオは踵を返すと、おそらく厨房チームのメイドなのだろう、十数名のメイドに次々と指示を出していた―――


「あの子達もみんな龍の牙(ドラゴン・ファング)なのか?」


ふとそんな疑問が口を吐いて出たとき、


「はい、そうです。序列もちゃんとありますよ。12位までには入っていない子達ですけど、働き者な子達ばかりです♪」


気がつくと八雲の傍にノワールとそれほど変わらない身長だが、胸だけは今まで会ったどの女性よりも大きい、つまり今そこにある爆乳を揺らせる紫色のウェーブ掛かったロングヘアーを風になびかせた美女が立っていた。


見た目は八雲よりも年上のお姉さんといった雰囲気で、アクアーリオと何となく近い空気を感じていた。


「あの、あなたは?」


「これは申し遅れました。わたくしは右の牙(ライト・ファング)序列05位、名前はフィッツェと申します。今後とも宜しくお願い申し上げます」


「これはどうも、ご丁寧に」


とても礼儀正しい大人の魅力が溢れるお姉さん、フィッツェに八雲は思わず背筋を伸ばして一礼してしまう。


「ん?なんだ、お前も来ていたのかフィッツェ」


そこにアクアーリオ達の様子を見ていたノワールが近づいて来て、フィッツェに声をかけた。


「これはノワール様。御機嫌麗しゅう存じます。この度はベヒーモス狩りで大量の食材の確保、お疲れ様でございました」


深々とノワールに一礼するフィッツェ。


「いや、あれは八雲の仕業だ。我が狩ったのはあちらの角を叩き切ったヤツよ」


「まあ!八雲様の獲物でございましたか。これは失礼しました」


「いや気にしてないから。ところで……ベヒーモスって、美味いの?」


引きつった顔で訊ねる八雲に、フィッツェは口元に手を置いてクスクスと笑みを浮かべながら、


「八雲様が今までお食べになった食事の肉にも、使われておりましたよ?」


と爆弾発言を落とされて、八雲は、え?え?と軽くパニクる。


「うそだろ?え?全然わからなかった……うん、そうか、もうベヒーモス食べてたかぁ……うん、どれも美味かったもんな……」


全部美味かったです!……もうなんかどうでもいいか、という気持ちになった八雲は、異世界なんだから!と強引に割り切ることにしてフィッツェについて聴くことにした。


「フィッツェは今日初めて会うけど、厨房で働いているのか?」


「はい。アクアーリオと共に厨房を任されています。確か八雲様が今度、アクアーリオに異世界の料理を教えて頂けると伺っているのですが、わたくしもご一緒してもよろしいですか?」


「もちろん。俺もけっこう料理は出来るんだ!まぁ家庭料理ばかりだけど……」


「いえ、家庭料理も大切な料理ですよ。その人その人の家庭の味があって、探究すると本当に終わりがございません。ですから本当に楽しみにしております♪」


それから軽く会話を交わしたあと、フィッツェはアクアーリオ達の手伝いに戻っていったが、去る前に一礼した弾みで爆乳が思い切り下に向かって大きく主張されていたことは八雲の脳内フラッシュメモリーへと保存されていた。


「八雲、今夜、食事が済んだらお前の部屋に行くからな/////」


丁度二人きりになったノワールがぼそりと呟くように八雲に伝えると、八雲もその意味を察して一言、「わかった」とだけ応えた―――






―――宴が始まって、


食堂は八雲が鍛錬で捌いたベヒーモスの肉が、あっちでもこっちでもドンドン差し出されてメイドからドワーフ達まで次々と消化されていく。


今回はいつものように座って食事ではなく、八雲の提案で立食パーティーと化していた。


食材の多さ、酒の大盤振る舞いの状況になった八雲のLevel.100到達祝いは、メイド達もキャッキャ♪ とはしゃぎながら無礼講という名のカオスな食事会となっていた。


「しかし、これが全部ノワールの牙から生まれた子達だなんて……あ、ドワーフ達もいたわ」


シュティーアの工房のドワーフ達も今夜はご相伴に与っていて肉だけでなく酒も大量に呑み捲り、顔を真っ赤にして鬼の形相のシュティーアに、飲み過ぎだと詰め寄られていた。


皆に祝われた食事会も呑み潰れた者や先に抜けていく者達も出始めた頃、八雲も自分の部屋に戻ることを告げて、その場を去った。


(このあと……ノワールと……)


そう考えるだけでも、興奮が胸の奥から湧き出してくる―――






―――自室にて、


自分の部屋に戻り、すぐに風呂場に向かって大理石調で造られた大きな浴場で壁から滝の様に流れるお湯をシャワー代わりに身体を流して、その後は日本の大きな温泉並みの広さがある湯船に浸かって、八雲はこれからのことをぼんやりと考えていた。


そして大体身体が温まり切ったところで浴場から退場して、寝間着に着替えて部屋に戻ると巨大なベッドの端にノワールがすでに来て座っていた―――すでに全裸で!


「お、お前―――なんでもう脱いでるんだよ!?/////」


思わず視線を逸らしてノワールに大きな声を出してしまう八雲だが、ノワールにとっては自分の城で裸でいて何が悪い?といった具合に首を傾げる。


「ん?どうせ脱がせるのだろう?だったら手間が省けていいではないか―――」


「―――違う違う!そうじゃ、そうじゃなぁいッ!!そこは一枚ずつ丁寧に脱がすことで醸し出すエロティシズムが大事!そこ大事だから!!」


「お、おお、そうなのか?それはすまなかったな。ならばもう一度着るか―――」


「―――それもっと萎えるから!」


「まったく……我が儘なヤツだなぁ」


立ち上がって床の服を着ようとし始めたノワールを制止して、八雲は改めて彼女の裸体を爪先から顔までじっくり見つめる―――




―――細く引き締まった、カモシカのような脚。


―――この世界に来て真っ先に目に焼き付けた、形の良い尻。


―――細く美しい曲線を描く、くびれたウエスト。


―――そしてたぷん♪ と柔らかさとハリを強調した釣鐘型で大きな胸。




そんな全身を包む褐色の素肌がひとつの神々しい『黒い芸術品』を形成していた。


「綺麗だ……」


「ふぇ?!/////―――今さら何を突然!?ほれ!早くベッドに来い!」


そう言って四つん這いになりながら、ベッドに上がるノワールの後ろ姿は、美しい形の尻が目の前に来て思わず―――


「ブフゥ―――ッ!!!」


―――と、鼻血を噴きそうな光景が広がっている。


その光景に八雲の喉が、部屋に響くくらいに鳴っていた。


そのままベッドの真ん中辺りまで進むノワールの尻を追いかけて、八雲も自分の服を一枚、また一枚と脱ぎながら続く。


ノワールがベッドの真ん中に到着した時には、八雲もすでに全裸にまでなっていた。


「ほおお♪ 八雲もヤル気なようだな♡―――いいんだぞ?約束通り、お前の好きにしても♡/////」


そういってベッドの上で正座したノワールは、正座した形で腰を少しくねらせて、胸元をその長い黒髪と右腕で隠すようにして頬を赤らめていて、その姿を見た八雲は頭の中で何かがプツンッ!と切れる音が聞こえ、そのまま襲い掛かろうとしたところで『理性の強化』スキル発動……冷静に我に返ってしまった。


(あ、これ、こんな時でも発動するのか……まあそれなら、それで楽しみ方もある)


そう思った八雲は、正座するノワールに膝をつき合わせて膝立ちになり、そっとノワールの手を取ってノワールも膝立ちにさせる。


「ノワール……」


「うん、八雲/////」


だんだん潤んでくる瞳を向けるノワールに、八雲はゆっくりと、優しく唇を合わせていった。


「ん、んん……ちゅ…」


ゆっくりと唇で唇をなぞるようなキスをしてから、八雲はゆっくりとノワールの下唇を自分の唇で挟むようにして、少しずつ、少しずつ慣れてきたノワールは、下唇を舐める八雲の舌を迎えるように、自らの舌を出して八雲の舌に絡めてくるまでになった。


ディープキスを気に入ってしまったノワールは、何度も何度も八雲の名を呼びながら頭の後ろに腕を回し、八雲の顔を固定しながら舌を絡めてきて完全にキス魔化していた。


キス魔のノワールにキスで応答しながら八雲は彼女の背中に手を回して、そのスベスベの背中を滑らせるように撫でる。


「んッ!……もっと、もっと触って?/////」


キスしながら身体を撫でられることに快感を感じだしたノワールは、甘えるような表情で八雲に潤んだ瞳を向けると、キスをしながら、そっとノワールの胸に触れるため右手を伸ばした。


絹のように滑らかな褐色の肌、形のいい胸に触れて、胸の表面を撫でるように手を動かしていく。


「お前、初めてなのか?」


「あ、当たり前だ!我は御子を迎えたことなどない!/////」


恥ずかしそうに言うノワールの顔は真っ赤だった。


ちょうど枕にそのまま頭を置けるように下ろして、ノワールは頬を赤く染め、少し涙の浮かんでいる潤んだ熱い瞳で八雲を見つめていた。


(ああ、こんな美女を、もっと俺専用に変えてやりたい!)


八雲は『完全に相手を堕としたい』という欲望が湧き上っがって止まらなくなってきた。




そして―――




「ノワール―――いくぞ」




八雲の『神の手』スキルによって感じ過ぎてしまい、もはや焦点の合わない表情をしていたノワールだったが、愛しい八雲の言葉に辛うじて正気を取り戻して―――その黒い瞳を八雲に向ける。




「ああっ―――来い八雲。我の、我の中に/////」




その言葉を聞き終わると同時に、八雲はゆっくりとノワールと身体を重ねた―――




―――こうしてこの日、八雲とノワールは身も心も本当の夫婦となった。






「―――ノワール、好きだぞ」


そう一言伝えると、突然の告白に目をパチクリさせたノワールは、


「我も、好きだぞ、八雲////」


笑顔を浮かべて、そう囁くように返事をした。


ふと八雲がノワールの下腹部を見ると、さっきまでなかったはずの濃いピンクの紋様のようなモノが浮かび上がっていた。


それはハート型の痣のような中央に、龍のようなものが描かれた模様だった。


「ノワール、これは?」


不思議になってノワールに質問すると、彼女は自分の下腹部を見て、


「ああ、『龍紋』のことか」


「龍紋?」


「うむ、神龍の御子、つまり八雲が情けを与えた者にはこの『龍紋』が浮かび上がる。まぁ簡単に言えば『八雲の雌』という証明みたいなものだな」


「マジか!?」


新たな事実を知った八雲。


「それは置いておくとして……ところで八雲―――お前、女を抱くのは、我が初めてではないな?」


「ギクリッ?!」


突然のノワールの質問に、八雲は思わず擬音で応えてしまった。


「や~く~も~!!―――どこのどいつだ!お前の初めての相手は!!」


ノワールが、睨むような視線を突き刺してくることに耐えかねた八雲は正直に白状することにする。


「元の世界にいた幼馴染だよ―――同い年の」


そう言った瞬間、少し悲し気な色を瞳に浮かべたノワールは、


「今でも……今でもその娘に会いたいのか?」


八雲の胸に手を置いて、そうノワールが訊ねてきた。


「会いたいかって訊かれれば、会いたい。小さい時から家族同然だったしな。でも、戻れるかはわからないし、もう、この世界にきてノワールっていう大切な人が出来た。俺もノワールの傍にいたい。それじゃダメか?」


少し照れたように笑みを浮かべて応える八雲に、そっと腕を八雲の背中に回したノワールは、


「うん、それでいい……」


一言そう応えて、八雲を優しく抱きしめていた。






―――その後、


ベッドの上で仰向けに眠る八雲の腕枕で、ノワールも笑みを浮かべながら、静かな寝息を立てていた。






そんな静寂の中、八雲のステータスが勝手に表示された。


【ステータス】

Name:九頭竜 八雲(ヤクモ=クズリュウ)

年齢 18歳

Level 100

Class 黒神龍の伴侶 超越者 転移者


超越者:Level.100以上になった者


生命 1436591/1436591

魔力 957727/957727

体力 957727/957727

攻撃 1436591/1436591

防御 957727/957727

知力 100/100

器用 100/100

速度 100/100

物理耐性 100/100

魔法耐性 100/100


《神の加護》

『成長』

取得経験値の大量増加

各能力のLevel UP時の上昇数値の大量増加

理性の強化

スキルの取得向上強化

『回復』

HP減少時に回復・超加速

MP減少時に回復・超加速

自身が直接接触している他者の回復・超加速

広域範囲回復・超加速

『創造』

素材を加工する能力

武器・防具の創造能力

創造物への付与能力

疑似生命の創造能力


《黒神龍の加護》

『位置把握』

自身の位置と黒神龍、さらに眷属のいる位置が把握出来る

『従属』

黒神龍の眷属、自身の加えた眷属を従える

『伝心』

黒神龍とその眷属、さらに自身が加えた眷属との念話が可能

『収納』

空間を開閉して物質を保管する能力

『共有』

黒神龍と同じ寿命を得る

『空間創造』

自身の固有空間を創造し、その中に建造物、生物を置く能力

『龍印』

性交にて精を受けた全ての異性に現れる紋章

加護を贈与した黒神龍以外の御子が性交した紋章を持つものは、その能力が向上する



《取得魔法》

『身体強化』

魔力量に応じて体力・攻撃力・防御力が上昇

『対魔法防御』

魔力量に応じて対魔法攻撃防御能力が上昇

『火属性魔術』

中位/極位

『水属性魔術』

基礎/極位

『土属性魔術』

基礎/極位

『風属性魔術』

基礎/極位

『光属性魔術』

基礎/極位

『闇属性魔術』

基礎/極位

『無属性魔術』

基礎/極位


《取得スキル》

『鑑定眼』

物質の理を視る

『言語解読』

あらゆる種族の言語理解・文字解読

『酸耐性』

あらゆる酸に対する耐性

『毒耐性』

あらゆる毒に対する耐性

『精神耐性』

あらゆる精神攻撃に対する耐性

『身体加速』

速度を瞬発的に上昇させる

『思考加速』

任意で思考を加速させる

『索敵』

周囲の索敵能力 索敵対象:生物・物質

『威圧』

殺気により恐慌状態へと堕とす


『受精操作』

妊娠操作が可能

『絶倫』

精力の増加

『神の手』

愛情をもって触れる異性に快感を与える

『完堕ち』

異性を完全に陥落させる


《九頭竜昂明流古武術(八雲強化)》

剣術(強化)

槍術(強化)

弓術(強化)

組討術(強化)



そこには、Classに『黒神龍の伴侶』、黒神龍の加護に『龍印』、スキルに『完堕ち』という新たな八雲の力が刻まれていた……




【エピソードタイトル】

新たな世界への準備


―――翌朝、窓から差す陽の光に八雲はゆっくりと目を覚ました。


腕に重みを感じてそちらに目を向けると、静かな寝息を立てながらノワールが眠っていた。


子供のように可愛らしい寝顔を見せるノワールに、頭が覚醒したばかりで、まだ少し寝ぼけている八雲はうっすらと笑みを浮かべてノワールの頭をそっと撫でてみる。


「……ん……んん……ふぁ…やくも………おはよ……」


撫でているとノワールが目を覚まして、ふと目線が八雲と出会う。


「おはよう、ノワール」


そう言って八雲はスッとノワールの唇に、おはようのキスをした―――






―――食堂にて、


二人して起きると、身なりを整えて朝食に食堂へ向かうことにした。


「おはようございます。ノワール様、八雲様。すぐに朝食のご用意を致しますね♪」


食堂で迎えてくれたアクアーリオとフィッツェは、そう言って笑顔で朝食の準備をしてくれる。


立食パーティーから一夜明けて再び巨大な長方形のテーブルが再設置され、ノワールは迷わず上座の席に座り、八雲は右側の一番近い席へと座る。


「八雲、昨日話そうと思っていたのだが、お前はLevel.100の約束を守った。そこで、これからどうするかの話だ」


アクアーリオの出してくれたサラダを突きながら、八雲はノワールの言葉の意味を考える。


「我はもうお前ならこの胎内世界から外に出ても、何ら問題ないと考えている。お前はとんでもなく強くなっているしな。お前はどうしたい?」


そう言われても実感の薄い八雲だが、ステータスを見れば途方もない数値が並んでいる。


あと、新たに加わった『龍印』『完堕ち』や、Classが『黒神龍の伴侶』となったことも既に確認していた。


(いや『完堕ち』ってスキルなのかよ!?)


それを見た時はそう思ってしまった八雲だが、


「外の世界でいうと、俺の強さってどれくらいなんだ?」


八雲は気になったことをノワールに質問してみる。


「文句無しの世界最強クラスだ。あ、だが他の龍どもの御子は別だ。御子はお前のように様々な点で世界を逸脱した能力を持っている。何に特化しているかは、その御子に与えられた加護にもよるがな」


「皆、俺と一緒の加護じゃないのか?」


「当然だ。龍の加護はそれぞれの龍によって違うし、ましてやお前の『神の加護』など今まで聞いたこともない。それは今のところお前だけと考えていいだろうな」


そう言いながら、パンとベーコンエッグをモキュ♪ モキュ♪ と食べるノワールに八雲は癒されながら、あれ?これってベヒーモスの肉じゃね?と思い浮かんでいた。


「外の世界で生活しても、もう問題ない、か。だったら出てみるか」


「もぐもぐ、お!外に出ると決めたか!」


「ああ、ここの皆には世話になったな。ん?そう言えば……」


そこで八雲はあることに気づく。


「なあ、ノワール。龍の牙(ドラゴン・ファング)の序列12位までのメンバーのことだけど、アリエスだろ?クレーブスにシュティーア、フィッツェにアクアーリオ、レオとリブラ、それにジェミオス・ヘミオス姉妹は二人で11位だから、あとの4人は?」


「ん?ああ、12位は城にいるが、まだ会ってなかったか?6位と9位は左の牙(レフト・ファング)で外の世界に出て、クレーブスの依頼などをこなしている」


「2位の子は?」


「……あ~」


最後の序列02位のことを訊いてみるも、ノワールは気まずそうな表情を浮かべる。


「どうした?」


「……家出した」


「……は?」


「家出したんだ!我とは意見の相違があったみたいでな」


「反抗期の中学生かよ……」


「反抗期?なんだそれは?だが、確かにその言葉だけ聞けば、その状態だったのかも知れん。今では『伝心』でこっちの声はおそらく聴こえているだろうが、向こうからの返事もない始末だ……」


「サジテールは勝手が過ぎます!ノワール様の御心を乱すなど、龍牙騎士《ドラゴン・ファング・ナイト》の自覚が欠けています。ノワール様、サジテールに厳罰を与えて下さいませ!」


いつの間にか近づいていたアリエスが、珍しく顔を顰めて非難の声を上げていた。


「サジテール?それが序列02位の名前か?」


「はい。左の牙(レフト・ファング)序列02位、サジテールは私と対になる一番大きな左右の牙から生まれました。実力は私と並ぶほどの力があり、主に左の牙(レフト・ファング)の、外の世界における情報収集や工作活動の統率者の立場なのですが、何を考えているのかノワール様の元を突然勝手に出奔したのです。それだけでも万死に値します」


「まあそう怒るなアリエス。アイツもアイツなりに、何か考えがあってのことだろう。そのうち帰ってくるさ」


憤るアリエスをノワールは宥めるように話すが、その顔は少し寂しそうに見えた八雲。


「ふーん、『伝心』は伝わっているんだよな?」


「ああ、いや、それは感覚でしかない。だから生きているとは思うがどうも把握し辛い。『位置把握』でも、この国にいることまでは何となくわかる程度だ」


「ああ、そういえば黒神龍の本体は今、ティーグル皇国の山の中にいるんだっけ」


「うむ、人の近づかない山脈の谷にいる。お前が外に出るというなら我が空間を開いてティーグルの首都まで道を開いてやるから安心しろ」


「なんだかんだ言って、ノワールってさ……」


「ん?」


「過保護だよな」


過保護と言われて、一瞬固まったノワールだったが、途端に顔を真っ赤にして「そんなわけあるか!!」と憤慨して残りの朝食をかき込んでいく姿を八雲はアリエスと一緒に笑いながら見ていた―――






―――それから食事を終えてすぐに、


八雲は胎内世界から出て、外の世界で生きる為の準備を始めた。


クレーブスの部屋でノワール、クレーブスを中心にまずは経済面、必要になるのは金だという話をした。


どこに行くにしても、何をするにしても金が文明社会の経済を回しているのは、どんな世界も一緒であり、現にこの世界にも先に学んだ通り通貨がある。


「金を稼ぐ手段も考えておかないとな。この世界にはギルドみたいなものはあるのか?」


八雲の質問にクレーブスが眼鏡をクイッと指で上げて、


「ありますよ。このオーヴェストでは大きく分けて―――」


クレーブスの説明によれば、このフロンテ大陸西部オーヴェストでは、




【冒険者ギルド】

その名の通り冒険者が集うギルド。

個人登録でありランク制度もあることで、受注出来る依頼も制限される。




【魔導士ギルド】

魔術士専門ギルド。

魔術士が登録すると一般公開されている魔術士ギルドの持つ魔術情報なども共有される。

また有益な研究には研究支援も行っている。

魔導士とは、この世界においては魔術師を導くもの、魔法を探求するもののことを指す。




【商人ギルド】

商人組合であり、取引や物価・相場のコントロール、管理や他大陸との為替も管理している。

大規模商人と中規模・小規模商人とあり、中規模・小規模の商人達はクランという共同経営体制を構築して、商業全般のバランスを取っている。




【生産ギルド】

農作物や武器・防具などの戦闘武具、衣服・陶器など生活必需品といった生産関係のギルド。

一次生産者と加工して売買する二次生産者も含めて、卸元が登録しているギルド。




「―――このように分かれておりますが、重複して登録する者もいます。例えば冒険者であり、魔術士でもあると冒険者ギルドと魔導士ギルドの両方に登録している者もいるわけです。生産ギルドの卸元が、直接自分で販売する場合も同時に商人ギルドに登録していなければ、販売できません」


「なるほど……俺の『創造』を使えば、卸元にもなれるし商人ギルドに登録もしておけば、自分で販売することも可能ってことだよな」


「なんだ八雲、商人になりたいのか?」


それまで黙っていたノワールがここで口を開けて、八雲に身を乗り出してくる。


「いや、あくまで金を稼ぐ手段として考えていただけだ」


「ん?金ならあるぞ?」


「は?」


突然何を言ってるんだコイツは?という表情を八雲が向けると、ノワールがその場で空間に歪を造り出し、そしてその開いた空間の向こう側には―――


「なん……だと……」


眩しいくらいに輝く金貨の海が広がっていた……


「お前、これ―――」


「ふふん♪ 凄いだろぉ~!我の財宝庫だ。まぁ我は別に金に困るような生活はしておらんし、使い道もないからな。我の伴侶となった八雲が使って構わん。クレーブス!八雲に必要な分だけ見繕ってくれ」


「畏まりましたノワール様」


ノワールの指示を聞いて、クレーブスがその財宝庫の中に入っていく。


「労働とは……報酬とは……」


無一文から自力でどこまでいけるか試してやる!と内心で異世界成り上がりストーリーを想像していた八雲だったが、その決心はノワールの空間の扉が開き、中の黄金が目に入った0.005秒で無残にも撃ち砕かれた―――




白金貨 10枚

大金貨 50枚

金貨  100枚

大銀貨 100枚

銀貨  1000枚

大銅貨 10000枚

銅貨  50000枚


日本円換算 1,635,000,000円也




「このくらいで―――」


「ちょっと多い多い!いきなり16億円持ってる異世界初心者ってなんだよ!どっかの大企業のお坊ちゃんかよ!」


クレーブスの用意した硬貨に、金銭感覚がもちろん日本人の八雲が盛大にツッコミを入れると、


「お前の世界の金銭感覚など我にはわからんぞ?」


このくらいの金でガタガタ言うなと言わんばかりのノワールのツッコミも間髪入れずに入った。


「え?俺がおかしいの?」


確かに宝物庫には、まだまだ黄金の海のように広がっていて、積み上げられた金の山がある。


「我の夫が一文無しなど、そんな恥ずかしい思いさせてたまるか!ほれ!いいから『収納』空間を開けろ!遠慮は無用だ!」


半ば強引な形で八雲は開いた自身の『収納』空間に、クレーブスとノワールがどんどん硬貨を放り込んでいくと、脳裏に『収納』内の金額が浮かび、ご丁寧に日本円換算の金額まで表示されるようになっていた。


「なんでこの『収納』、日本円換算出来るの?有能過ぎるだろ?……よ、よし……もうこれで金の心配はなくなったな。うん、なんかもう、これでいいことにしよう……」


「何をブツブツ言っているんだ?このくらいの金で腰が引けてどうするんだ」


「大金持ちに小市民の気持ちはわからないでしょうね!」


大富豪ノワールに思い切り小市民の抗議を訴えて、取りあえず現状では心配するほどのものは無くなったと気持ちを整理した八雲は、


「それじゃ世話になったな。皆にも宜しく伝えてくれ」


今まで良くしてもらったことを心から感謝する。


「は?何を言ってるのだお前は?我も、皆も一緒に行くに決まっているだろう」


ノワールの可愛く首を傾げながらの発言に八雲は固まってしまったが、


「え?……えええ!?皆って、城の皆か?」


「当然だ!あ、いやまずは我とお前だけだ。向こうで城を建てるところを決めないといけないからな!」


「へ!?建てる?城を?外の世界に?」


「だからそう言っているだろうが!」


「ちょっと待ってくれ。クレーブス、この世界には領地とか土地の所有とか、そういう制度や法律はあるんだよな?」


「ええ、貴族や王族に連なる者は領地を所領して、商人なども土地を売買していますね」


「だったら、ノワールはどこかに領地とか持っているのか?」


「馬鹿にしているのか!」


「そうだよな、ちゃんと土地を持ってて―――」


「―――このオーヴェスト全域が我の縄張りだぞ!つまり全て我のものだッ!」


オウ……まさかコイツ、馬鹿なのか?と八雲の脳裏に浮かぶ……


「ダメだコイツ!早くなんとかしないと!外に出た瞬間に侵略者だよ!戦争だよ!お前の物は俺の物法の体現者だよ!ついでに歌が超音波だったら世界も征服できるよ!助けて青い猫~!」


完全に脳内では全て我のものというノワールに、八雲はここから出た瞬間から戦争と隣り合わせの戦場生活になることが容易に想像できた。


「ノワール様、人の国では人の国の法や契約などがございます。それをすっ飛ばして略奪するような真似をしては黒神龍の名に傷がつきます」


そこで龍の牙(ドラゴン・ファング)の知恵袋クレーブスが絶妙なフォローにのり出す。


「む?なに?そうか……確かにそうだな。では土地は買うか、手に入れる方法が見つかれば、そこに城を建てるとしよう!」


戦争回避―ッ!!と八雲の脳内では脳内民衆が叫び声を上げて喜んでいた。


「では準備して出発といくか!八雲、必要な物があれば忘れないように『収納』しておけよ!」


「平和万歳!わかった!それとさっき言ったようにメイド達も場所が決まるまで城で待機な。大人数で移動してたら目立ちすぎるから」


「確かに、場所が決まってから皆を移動させるとしよう!」


そして旅支度をするため、八雲は自分の部屋に向かって歩みを進めていった。


昼になる前には八雲は準備万端だった。


と言っても身一つでこの世界に放り出され、その後すぐにノワールの本体、黒神龍に丸呑みにされて喰われてから、この胎内世界でノワール達と出会い、この世界に放し飼いにされた魔物達を相手にLevelを上げて、外に出ても充分余裕で生きていける状況まできた……金はノワールの金だが。


城の門に向かうと、そこには旅支度の整ったノワールと、見送りに来ていたメイド達、工房のドワーフ達も来ていた。


ノワールは―――


―――いつものレースクイーンみたいなスーツの上から、八雲とお揃いの黒に金の刺繍模様が施されたコートを着ている。


そのコートの背中には金の刺繍で『龍紋』が入れられている。


(なにこの傾奇者……)


見た目を引くのは間違いない美貌に高級な金刺繍入りの黒いコート、足元は黒いブーツに変わっており、ノワールの外出用の出で立ちは、これに軍帽を被せればセクシー系の女性将校にしか見えないほど凛々しい姿だった。


だが、問題はその隣にいるアリエスの表情だ。


頬を少し膨らませて、子供のように不満を身体全体で、いや闘気まで少し漏らしながら八雲を睨んでいる。


アリエスだけではない―――レオとリブラも同じような表情で八雲に涙目を向け、それらの姿を見てクレーブスは額に手を当ててやれやれといった表情で溜め息を吐き、アクアーリオとフィッツェはあらあら♪ とニコニコ笑みを浮かべて楽しんでいるのが丸わかりだ。


シュティーアとドワーフ達は、少し寂しそうな顔を見せていたが、


「外で住める場所を手に入れたら、皆を呼ぶから」


と言って励ますように諭す八雲に、持ち前の性格が明るいドワーフ達も、寂しそうな顔をしていたシュティーアも最後には笑っていた。


ジェミオス・ヘミオス姉妹は、


「僕らは元々外によく出てるから、兄ちゃんにもすぐに会えるよ♪」


「兄さま、ノワール様、どうぞお体にお気をつけて/////」


と、すぐまた会えるとそれほど寂しそうにはしていなかった。


「そろそろ行くぞ八雲!」


晴れ晴れとした笑顔を浮かべ、空間の隙間を広げるノワール―――


そんなノワールの姿に見惚れていた八雲は―――すぐに、


「ああ!―――出発しよう!」


新たな一歩を踏み出すのだった。



総集編お読み頂きましてありがとうございます!


今後も不定期ですが纏めていけたらなと思いますのでこれからも宜しくお願い致します。

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