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視線と三の倍数 〜番外編 茫漠と彷徨えるなにか〜  作者: サカキ カリイ


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1/11

サタヴァ、ヤトル、クガヤの三名は、薬草を採集し旅をしているところである。


日が落ちて来たので、一行は森の中で開けたところを野営の場所とした。


食事中、サタヴァは話し始めた。

「今日、森の散策中に知り合いに会った」


「こんな場所で良く知り合いに会えるよなあ」クガヤが干し肉を齧りながら言う。


「誰に会ったんですか?」ヤトルはスープをすすりながら聞いてきた。


「そいつはなあ…以前二人に初めて会った頃に一度話したことはあるんだが…


わからない言葉があれば意味を教えてくれていた奴なんだ。」


「ふーん…そいつは、こんな辺鄙なところで何をしてたんだ?」


「俺に話があって来たそうだ。


奴は呼んでもいないのに、突然空中から姿をあらわすんだ。


…人の姿はしていたが、人ではないかもしれん。


本人の説明によると、『自分は芸の道をゆく者の手助けをしたり、加護を与える存在だ』とか言ってたな。」


「それって…加護霊っていうやつか…!」


ここ帝国には加護霊と呼ばれている、様々な現世利益を叶える存在がいるとされている。


もちろん信仰の対象は女神様だが、加護霊はもっと身近な存在だ。


加護霊は複数いる。願いの種類により、加護を与える霊はそれぞれ異なるとされる。


もちろんその姿は通常の人間は見ることはないので、


加護霊と会う話など、普通は与太話とされる。

だが、ヤトルとクガヤはサタヴァの話を信じたようだ。


「えーっそうなんですか!すごいじゃないですか!」


「サタヴァなんか芸やるんだっけ?」


「俺は特に芸はしていないつもりなんだが、先方からみると、しているように見えるらしい。


俺の言動は奴にとっては、面白い見世物らしいのだ。


そんなことはこちらの知ったことではないが。


以前奴は、俺の行動に色々口出ししてきていた。

そのことに文句を言ったら、来なくなっていたんだがな。


まあ言葉以外のことでは、別段こちらに良いことがあるわけではない。


加護だのなんだのという神秘的な力は、大げさな言われかただと思う。」


「はあ、その加護霊ぽい人の説明とやらを聞いたけど、なんのことやらさっぱりだ。


で、そいつはいったい何の用だったんだ?」


「ここ最近の俺達の行動について、くれぐれも注意してほしいと言っていた。気をつけてもらわねば困ると。


なんでもそれは十二、十五、十八という数字に関係することらしい。」


「なんだそれ。ぜんぜんわからない話ですね。

クガヤさんわかりますか?」


「…三の倍数かな?」


三人は押し黙った。 


サタヴァが言う。

「それはなんというか、例えばヤトルんちの子供がだな、まだ小さいんだよな。


危ないものとか、怖いものとかから、遠ざけようと思うだろ?」


「そりゃあまあ、気をつけますよ。親なら。

つか、周り中でそういうものに触れないように気をつけますね。」


「あとはその、大人っぽい物事とかな…」


「例えば?」


「その、なんか色々と」


「なんですか?」


「はっきり言え!」


「…それが、それらをはっきり言ってはいけないということが、先程の数に関係するらしいんだ。」


「あおーん、ますますわからんじゃないか!」

クガヤは丸い頭をバリバリとかいた。


「はっきり言ってもらえないとストレスが溜まってしんでしまう!」


「ともあれ、俺達の言動がだな、周りの目に触れる時に、注意したほうがいいという話だったんだ。」


「そしてそれは三の倍数とやらに関係があると。

はい、わかりません。

こういう難しい話を挟んできてほしくないです、本当に。」


「俺らの行動なんか、誰が気にするっていうんだよう。誰も見てないじゃんか大体」


「まあ俺もそう思う」サタヴァは続ける。


「誰も俺達のことは気にしていないだろうし、見てもいないだろうとは思うさ。


ただ、俺は時折感じるんだ。ごく少数の僅かな者がこちらを見ている気配や視線を」


三人が黙って静かになったので、あたりを吹く風の音がはっきり聴こえた。


夜風がそっと草の間を抜けていく。


クガヤとヤトルは、息を潜め、目を凝らしながら闇の中を見つめた。


「誰も居ないぞ!」しばらくしてクガヤが言った。「誰も見ていない!」


「絶対、だーれも見てないし気にしてません!」ヤトルも言いきった。

「こんな場所にそんな気配は全くありませんって。

少なくとも僕には、そんな気配や視線、わからないですよ。しかもこんな夜中」


「それが時折こちらを見る気配を感じるんだ」


「わからん、わからん!そんな漠然とした話はわからんわ!


だいたいサタヴァ、お前がはっきり言わず、ぼんやりとしか言わないのが悪いんだ!


物事を相手に伝える時は、状態だとか、場所だとか、誰がするのだとか、詳しく言うだろ?


相手にわかって欲しいなら、まず最初にはっきり言うべきことだぞ。


店の看板出すときでも、大きい字で目立つように書くぞ、そのへんは。


俺は商人だけども、商品を売るときには、そういう表記や説明をしないと、なかなか売れないもんだぞ?


看板と言うか、この場合、タイトルと言いかえてみるけど。


ぜんっぜん言えてないじゃんか!」


「だ、だから」サタヴァはボソボソ言う。


「はっきり言うとなんか色々とまずくて…"茫漠と"言うしかない」


「だからそのへんがダメだって。


なんか俺らって今定住してなくて、あちこち行ってるじゃん。


"彷徨える"って感じだよな。


この状態ではまずいだろ、せめて場所くらいはっきり言おうよな?


いざというときに助けも来ないぞ?困るだろ!」


「そうそう!あと、誰が〜とか、何がどうなのか〜、みたいな状態の説明なども、

ちゃんと言うようにしてくださいよ。」


「何が…?」


「“なにか“」


三人は黙り込んだ。


自分達が何を話しているのか、もはやわからなくなったのだ。


だが、これはただの始まりに過ぎなかったのだ…


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