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双子魔法師、家を買う  作者: こむぎそば
第二章 暁の探究者
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第34話 研究の目的

「この人、どうしようか……」


 遺跡の事情に詳しそうな男を捕まえたものの、エルノーたちは扱いに困っていた。話を聞くには猿轡を外さなくてはならないが、口を自由にすると魔法を使われてしまう恐れがある。長い詠唱を必要とする魔法であれば止められるが、他にも魔法紋を隠し持っていた場合は危険だ。


「魔法で喋らせることはできないのか?」


 ソルフェンがなかなか恐ろしいことを言いだした。


「できないことはないけど、人体に直接魔法を使うのは危険だからできればやりたくないな。特に頭……精神をいじるのは、元に戻す自信がない」


 壊したものを直すのが難しいように、一度変質した精神を元に戻すのはとても難しい。頭は人体の中でも特に繊細で複雑なものだ。男も魔法師であるならその危険性はよくわかっていることだろう。場合によっては死よりも悲惨なことになる可能性がある。

 エルノーの言葉を聞いた男は目に見えて青ざめた。身をよじって抵抗するが、ソルフェンががっちりと拘束しているため抜け出すことは不可能だ。


「魔法薬があったらよかったんだけど。残念ながら持ってきてないんだよね」


 魔法薬の効果は一時的なため、こういった尋問には最適なのだが、今持っているのは回復系ばかりだ。

 放っておいて先に進むか迷っていると、それまで静かにしていたヨルンがおずおずと何かを差し出してきた。


「これ、あの子が持ってたんだけどさ、何かに使えないかな」


 あの子とは後ろで震えている少女、レジのことだろう。ヨルンの手には液体の入った小瓶がいくつかのせられていた。研究員から拝借したという白衣のポケットの中にも沢山の瓶が詰まっているようだ。


「あの子毒薬使いみたいで、いっぱい持ってたからとりあえず持ってきたんだ。俺には中身が何かはわかんないんだけど、どう?」


 

 ヨルンの提案によって急遽魔法薬特定会が始まった。町長たちに偽の記憶を植え付ける薬を盛ったのもおそらくレジであろう。そのような薬を調合できるのならば自白剤を持っていたとしてもおかしくない。

 まずエルノーが臭いや見た目で明らかに違うものを除外する。自然毒は特徴的な臭いを持つものが多いため、比較的特定は容易だ。エルノーがわからなかったものはエリアが魔力を探るか、少し舐めてみて判別する。解毒薬は各種取り揃えてあるため、失敗してもどうにかなる。


「あ、これかも」


 三本ほど試し舐めをしてみたところで当たりを引いたようだ。軽く頭が痺れるような感覚があった。酩酊状態で思考がまとまらなくなり、聞かれたことに深く考えず何でも答えてしまうようになる、最も一般的な自白剤だ。魔法毒耐性のあるエリアでも効果を感じる程度には強い薬のようだが、それでも三日ほどで抜けるだろう、多分。


 未だ男に怯えた様子を見せるレジを連れてヨルンにはゴミの山の向こう側へ行ってもらい、男に自白剤を飲ませる。まだ諦めずに抵抗を試みていたがソルフェンの力にはかなわず、すぐにぼんやりとした表情を浮かべるようになった。目の焦点が合わず明らかに正気ではない様に、レジを遠くにやっておいてよかったと二人は心から思った。

 

「じゃあまず、あなたのお名前は?」

「……ヴィスマ」

「この遺跡で雇われている魔法師ですか?」

「……この遺跡ではない。カーガント領主・カタラート様に雇われた魔法師であり、遺跡の調査は本来の仕事ではない」


 ぼんやりとした表情の割に喋りは明瞭だ。遺跡に配属されたことに不満があるようで、領主の指示だと主張する。わかっていたことだが、遺跡の調査は領主の肝入りであることがはっきりした。


「領主ねぇ……。どうして領主さんはこの遺跡のことを秘密にしていたの? 中央から専門の魔法師を派遣してもらった方がよっぽど早く研究進みそうだけど」

「……そんなことをしたら中央の魔法師に手柄を取られるではないか。これほど綺麗に残っている遺跡などそうそうない。古代の魔道具の技術があれば大儲けは確実だ。王家さえも我らに頭を下げることになるだろう」

「へぇ、この遺跡は何の施設なの?」

「……調査の結果ではおそらく古代の医療施設だと考えられる」

「あなたたちは何の研究をしているのですか?」

「……我々は若返りの魔道具の研究を行っている」


 エルノーとエリアは顔を見合わせてうなずいた。ここまでは予想の範囲内だ。ソルフェンも薄々勘付いてはいたようで、特に驚く様子はなかった。


「研究はどこまで進んでいるのかな」

「……理論は大体わかった。だが精霊のコントロールができない。レジは役に立たなかった」

「精霊? その理論ってやつを詳しく教えてくれる?」

「……若返るには、まず体を分解する。その成分を元に胚を再構築し、急速に成長させる。そして精霊の力によって魂を新たな器に定着させる」


「体を、分解……?」

「……一から作り直すということだ」

「それは、つまりどういう……」


 ソルフェンは珍しく困惑した顔でエルノーとエリアの方を見た。

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