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終話.ミルフィとジーク

 あの出来事からコネクト村は、ディアボロ商会とミルデアの商人達と大きな取引を成立させました。

 それからというものクラースの手によって逃亡していた大臣達が捕縛され、私達の杞憂も無くなる事件もありました。

 大きな変化はやっぱり、魔界とミルデア王国からコネクト村に移住者が増えたことですね。

 あと村で秘匿保管していたレッドダイアモンドも三十ニカラットが同数確保できたことも有って、両国に出品した結果、凄い利益が村に齎されたのも記憶に新しいですね。

 その影響も有って村は活気付いてジークの目指す発展まで成し遂げちゃいました。

 それが二年の間に起こった慌しい変化です。


 変化と言えば私とジークも。


「何を思い出しているのだ?」


 こうやってたまに一緒に寝るようになりました。

 いやぁ、付き合い始めた当初はアルリダとクレイの助言に従って一緒に寝ようとはしたんですけど……ここまで進展するのに二年掛かりました!


「この二年の忙しい日々をです。でも私と旦那さまの関係は大きく進展しませんね」


「こうして寝るのも大きな進歩と言えるな」


 まだキスの一つもしてないですよね、このヘタレのせいで。

 いえ、私からするのも恥ずかしくてできないんですけどね!

 あっ、結局ヘタレ同士かぁ。

 

「そんなんで来月は大丈夫なんですか?」


「安心したまえ、君に見せた指輪が何よりの証拠だ」


 あの日、私とジークが恋仲になってから二年目の今日……私はいつも通りメイド業務に精を出している時でした。

 ジークが夕方に帰って来て、私にローズクォーツが嵌め込まれた指輪を見せてくれたのは。

 完全な不意打ちに、少しだけ泣いちゃったのは内緒です。

 というか来月にはまだ一度しか使われていない式場で私とジークの結婚式が開かれることが決まってました。

 まぁ私に相談の一つも無かったですが、サプライズと言われちゃえば許しちゃう。


「来月はリオンも出席してくれますね」


「リオンか、わたしは彼? 彼女? には随分と苦手意識を持たれているようだが、魔女経由でどうにかな」


 初対面でお互いに顔合わせたしたのは、事故でしたからね。

 私は敢えてその事を言わず、


「友人が出席してくれるのは嬉しいですね。旦那さまの招待客が多いですけど」


 友人達に恵まれたジークに笑みを浮かべました。


「あぁ、エリオの出席は難しいそうだがな」


 唯一の肉親であるエリオが出席困難……それは彼が二十一人の女性に捕まってるからですね。

 果たして彼は生きて出られるのでしょうか? 

 最後に届けられた彼からの手紙には『た、タスケテ』っと一言綴られてるばかり。


「女性に囲まれて幸せじゃないですかね?」


「君は相変わらずエリオに厳しいな」


「私はもう義姉ちゃんですからね! いくら旦那さまの弟でも甘やかしませんよ!」


「そうだな、アイツは然るべき責任を果たす時が来たということだな」


 でも、コネクト村がここまで発展したのはエリオの尽力も有りますからね。

 逃げて来たら少しだけ匿う用意は、ジークと密かにしてありますとも。

 私はなんとなくジークの腕に包み込まれるように寄り添って、


「うーん、この安心感が堪りませんねぇ」


「そうか。君は変わらないな」


「そうですか? これでも少しは身長が伸びましたよ」


 それ以外の成長には恵まれませんでした……まさか、クラリスメイド長が持ってきた五年前のメイド服がまだ着れるなんて……。

 むむ、もう少しお肉を付けようかな? 食べても全然付かなくて悩みどころですけど。

 なんて内心で考えていると、

 

「……わたしはこの抱き心地が好きだな」


 前言撤回ですね。お肉は不要、今の状態を維持するのがベストです!

 

「ふむ……ふとした拍子に常々思うのだが、君は実は超優秀メイドなのでは? と」


「おや? ずっと言ってるじゃないですか超優秀メイドだと」


「天然ボケと鈍感が合わさり、望みもしないお見合いを計画しようとしていた事は忘れんがな」


「そ、それは! それは、お付き合いする以前の話しじゃないですか」


 もう! 昔の失敗で弄るなんて意地悪な人ですね!

 私が少し頬を膨らませると、彼は悪かったっと笑みを浮かべました。そして私に、


「実はな、今日訪れた商人見習いが追放村の超優秀メイドと成り上がり貴族! って言っていてなぁ」


 そんな面白い話をしてくれました。


「事実で面白いですね!」


「超優秀(自称)メイドと訂正しておいたが?」


「そこですかっ!? 追放村をコネクト村と訂正するべきですよね!?」


「では、コネクト村の超優秀(自称)メイドと成り上がり貴族だな」


「もうそれで良いです……本当のところ超優秀はクラリスメイド長に対する憧れと彼女のようになりたいから付けてただけです」


 だからと言って私が超優秀なのは揺るがない事実ですけどね!

 あっ、主人と恋仲になるという最大の禁忌を犯してましたね。

 

「そうだったのか?」


「えぇ、先生と一緒に私を貧民街から救いあげて、一流のメイドとして育ててくれた恩人ですからね」


「そうか。君は恩人の憧れで……わたしはてっきりクラリスのアホっぽい言動が移ったのだとばかり」


 どうしよう……何一つ否定できません。

 むぅ〜! なんだか今日はジークに揶揄われてばかりです! もうミルフィちゃんは悔しいので寝ますよ!

 私が態度と行動で示すと、ジークがそっと私を抱き寄せるではありませんか。

 ジークの温もりに包まれ、胸に抱く幸せを感じながら私は、


「お互いに着ぐるみでなければ完璧でしたね!」


「それは言うな! わたしとしても今日こそはと思っていたがね!? 君が着ぐるみで来ちゃうからぁ!」


 実は急に恥ずかしくなって着ぐるみを着ちゃったんですよね。

 でもキスもまだなのに……あっ、今日は私が原因ですね。明日はお詫びも兼ねて、勇気を出して水着を来た状態になりますが、一緒に入浴してあげますかね。

 私はそんな事を計画して、訪れた微睡に身を委ねてそのまま眠りました。

 ……翌日、私とジークは蒸し暑くなる梅雨時期に着ぐるみで抱き合いながら寝ちゃった影響か、見事に風邪を引いちゃって、二人揃って先生に看病されました。



 ーー追放村の超優秀メイドと成り上がり貴族の暮らしーー

            完




完結までお付き合いくださりありがとうございました!

次回作はハイ・ファンタジーの予定でプロットを作成中ですが、形になり次第お知らせします。

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