学園二日目
学園生活二日目、馬車を降りてすぐにナセル様に会った。
「シャノンおはよう」
「な、ナセル様、おはようございます」
かぁっと赤くなる顔。つい下を向いてしまう。
「うん、ちゃんと意識しているね、いい傾向だ。その髪型可愛いね、すごく似合っているよ」
侍女がSクラスなのだからと、朝から気合を入れて編み込んでくれた髪型。気がついてくれたんだ。
「ありがとうございます。侍女に伝えておきますね」
「カバン持つよ」
ナセル様が私のカバンを取って歩き出した。
「何してるの? 置いてくよ」
「あ! 待って。自分で持ちますから。ナセル様に持たせるわけには、」
「私のほうが力があるんだし、そこは甘えておきなさい」
隣同士で歩き出したら、みんなからの視線が痛い。
一歩下がって歩こう……いやニ、三歩下がったほうが……?
「あのさ、話しにくいんだけど。隣歩いてくれる?」
「でもね、ほら。皆さんの視線が」
「気になる?」
「はい」
「もっと視線が気になることする?」
「え? どういう」
ナセル様が近寄って来たと思ったら、耳元にチュッと音を立て耳にキスされた。
「きゃっ──」
耳から首から頭までゾワッとした。
「はははっ。いいね、その反応!」
「揶揄わないでっ!」
キスされた耳を押さえた。パニック寸前。
「ナセル様、シャノン様おはようございます。朝から仲がいいのですわね」
「ルイズ様ぁ」
助けを求めるようにルイズ様を見た。
「おはよう、ルイズ」
「ナセル様は荷物持ちになられたのですね? はいこれもお願いしますわね」
「ん?」
ルイズ様はご自分のカバンをナセル様に渡して、私の腕を組んで歩き出しました。
「私たちのカバンを持ってくださってありがとうございます。行きましょう! シャノン様」
「はい」
恥ずかしいから顔を背けてルイズ様と歩き出した。ルイズ様が声をかけてくれて助かった。こんな……こんなこと慣れてないもの。思い出したら恥ずかしくて泣きそうになった。
ルイズ様はそんな私を見ながらも、昨日のマックス王太子殿下の話をしたり、今度の王宮でのお茶会の話をしてくれた。
そう考えるとミカエルの言うとおり、学園で友だちを作るというのは大事だと思った。
******
~数日後~
「Sクラスの方々って存在感あるよな」
「殿下もいるし、王太子殿下の婚約者までいるんだもんな……隣国の王族までおられるし。もっと勉強しておけば良かったよ。入りたいよなぁSクラス」
「今度の王宮のお茶会は行くだろう? お近づきになりたいよな!」
「なりたいよ! 可愛いよなぁコレット侯爵令嬢」
「ミカエル、お前幼馴染だろ? 紹介してくれよ。コレット侯爵令嬢を狙っている奴が多いんだ!」
「ん? シャノンか、そうだな。機会があれば」
「その機会を作ってくれよ。友達だろう!」
シャノンか……。何度か話しかけようとしたのだが、殿下に阻まれて話しかけるタイミングが見つからなかった。
まさかシャノンがSクラスだとは思わなかった。僕と同じくらいの学力だと思っていた。侯爵家の力でも動いたのかもしれない。忖度か? 侯爵なら娘かわいさにするかもしれない。
そんな事を考えていたら
ん? あれはマリ? そっちには殿下やシャノンがいるのに、気がついてないのか?
「シャノン危ない、」
「え?」
サッとシャノンを抱き寄せる殿下。危機一髪。マリが躓いて持っていた花瓶の水が床にシミを作った。
マリは躓いただけで転ぶことがなかったし花瓶は無事だった。だが殿下がシャノンを抱き寄せなければ、シャノンに花瓶の水が掛かるところだった。
「きゃぁぁっ! ごめんなさい。大丈夫で──」
マリが固まっていた。殿下がシャノンを胸元で強く抱きしめていたから!
「あっ、ナセル様にお怪我は?」
「……君は誰だろうか? 私の名前を気安く呼んで欲しくないのだが」
「私はBクラスのマリ・ロルシーと言います。以後お見知りおきを」
笑顔で挨拶をしていた。マリは心臓が強いな……
「ロルシー……ロルシー子爵のご令嬢か」
「はい! そうです。知ってくださっていたんですね」
「学園にいる間にもう少し礼儀作法を覚えた方が良いようですね。花瓶の水を人に掛けるようなことはあってはなりませんよ」
「お花さんが萎んでいて、お水をあげたくて」
しゅんとした様子のマリ。
「水場はあちらです」
マリが来た道の方向を指差す。進行方向とは逆だ。
「あ! 私ったら方向音痴で、未だに学園内でも迷子になるんですぅ。ですからよろしければ今度──」
上目遣いで誘うように殿下を見るマリに
「悪いのだけど、彼女の足元にその花瓶の水がかかったようだから失礼するよ。二度とこんなことを言わせないでください。前を向いて歩くように! シャノン、足元が気持ち悪いだろうが少し我慢だ」
「あっ、ちょっと、まってくだ──」
マリが殿下に声を掛けていたが、殿下は胸に抱くシャノンに声をかけた。
「行こうか、みんなの視線に耐えるのは辛いんだろ?」
どんどんとシャノンが殿下の胸元を叩いてた。
「そう思うのなら離して下さい!」
真っ赤な顔で頬を膨らまして抗議していた。
あれ、シャノンだよな?
殿下が笑いながらシャノンに声をかけ、シャノンが頬を膨らましたまま歩き出した。
そしてすっと僕の横を通り過ぎた。え? 僕に気がつかないのか……二人の会話が聞こえる。
「もう! 恥ずかしいからやめて」
「いいじゃないか、ちょっとしたスキンシップだよ」
「怒るわよっ!」
「怒っても可愛いね、シャノン」
肩を抱き寄せ頭にキスをした。
「もうっ! 怒った。ふん!」
シャノンは殿下の手を振り払い歩き出し、その後ろを殿下が笑いながら追いかけていた。
なんだ? あの関係は……?
僕の知らないシャノンがいた。って、待て待て。シャノンは僕のことが好きなんだしあれはなしだろう!




