ナセル様の誕生日会1
王宮で第二王子ナセルの誕生日パーティーが行われる。
十六歳の成人として、そして王族としての大事なパーティーは国中の貴族を招いて盛大に開催された。
本日の主役、第二王子ナセルがエスコートするのは婚約者で侯爵令嬢のシャノン・ド・コレットだった。
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え! いつの間に婚約者になったって?
それは数日を遡ったある日のこと。
「シャノンを婚約者として紹介したい。シャノン・ド・コレット侯爵令嬢。私と婚約してくださいませんか?」
真っ赤なバラを持ち正装したナセル様が家にやって来て私の前で跪いて言ったのだった。
こんな女の子なら誰でも憧れるような、ザ・王子様仕様のナセル様に見惚れてしまったのでした。
「返事を聞かせてくれないか?」
「はい。お受けします」
そう答えて花束を受け取ってその花束を抱きしめた。バラの香りに酔いそうになるくらい抱きしめた。
照れ隠しだった。顔はバラと同じく真っ赤に染まっていたと思う。
ナセル様は何度も気持ちを伝えてくれていたから、ちゃんと返事をしなくてはいけないと思っていた。
私なりにいっぱい考えた結果だもの。
「また知恵熱が出ると困るから、花束は預けようか?」
ナセル様が笑って言った。きっとナセル様も緊張していたんだと思う。ほっとした顔が窺えた。
「はぁ。良かった! さっそく侯爵夫妻に報告に行こう」
にこりと笑ったナセル様がすごくかっこよく思えた。
報告に行くと、お母様は満面の笑みで、お父様は苦虫を噛み締めたような顔で迎えてくれた。
でもお父様はこうなることを分かっていたようで、明日から屋敷の改修を始めるって言っていた。
殿下を迎えるにあたり失礼のないようにするんですって。
婿入り……本当にしてくれるんだ。
私が侯爵になることもできるけれど、ナセル様が継いでくれる方が体裁も良いし、頼りになるからナセル様にお譲りして侯爵夫人になることを選んだ。両親もそれを認めてくれた。
結局はナセル様と結婚してもし子供が産まれたら将来はその子が継ぐんだから問題はないみたい。ナセル様がそうしたいって言ってくれたし……。
ナセル様は侯爵家の領地経営などをお父様から学ぶことになり、私はお母様から侯爵夫人としての仕事を学ぶことになる。
婚約の書類はすぐに作成されて、晴れて婚約者となった。
両陛下もマックスお兄様もマルガリータ様も喜んでくださったし、ナセル様の誕生日会で正式に婚約発表するんですって。
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「ナセル・ドゥ・サレット第二王子殿下と婚約者シャノン・ド・コレット侯爵令嬢の入場です」
司会の方から紹介があり、パチパチパチパチ……と拍手で迎えられた。明らかなる嫉妬の目もあるし、喜んで迎えてくれる人も大勢いました。
お父様とお母様は……陛下たちの近くにいたので、その姿を見てホッとした。
「緊張してる?」
ナセル様に言われて
「はい」
と答えた。だってこの会場にいる人達がみんなナセル様と私に注目しているんだもの。
「何があっても私がシャノンを守るよ」
何かありそうな言い方が気になったけれど
「はい。約束ですよ」
って答えたら、腰をぎゅっと抱かれた。
その後は招待された貴族の方へ挨拶回りだ。私の誕生日会のときとは違って、おめでとうございます。の意味もちゃんと理解している。
中には私の姿が見えないのか、娘を紹介してくる人もいてナセル様は華麗にスルーしていた。
なんでか私にも息子を紹介します。と言われてナセル様は「必要ない」と低い声で言うと「そうですな」と言ってその家族は去っていった。
「全く! なにを考えているのか! 私にはシャノンがいるし他には興味がないと言うのに!」
ナセル様はご立腹のようだった。お誕生日会でナセル様とお近づきになりたく、婚約発表を知らない貴族は売り込みのチャンスだと娘を着飾ってきたのだから、そのまま指を咥えているわけにはいかないのでしょうね。気持ちは理解します。
「殿下、シャノン嬢、ご婚約おめでとうございます」
声をかけられて振り向くとミカエルだった。どおりで聞いたことのある声だと思った。
「ロンゴ伯爵家のミカエル殿か、ありがとう」
「ありがとうございます」
……なぜかハラハラするのはどうしてだろう。ナセル様の笑顔が綺麗すぎるからかしら。
「ミカエル殿はシャノンと親睦があったのでしたね?」
笑顔で応対するナセル様に、少し恐縮した様子のミカエル。
「はい。家同士の付き合いがありました」
「そうですか。それならばこの先もまた家同士付き合うことがあるかもしれないと言うことですね? その際はよろしくお願いします」
「はい。こちらこそよろしくお願い致します」
「ミカエル殿に一つ忠告しておきます。私の愛しい婚約者を邪な目で見るのはやめて下さいね」
「もう、ナセル様っ!」
それはミカエルに失礼だわ。私がミカエルに告白をしたのに。
まあ、それは撤回してもらったけれど。ミカエルをき込んではダメよね!
ギュッとナセル様の上着を掴んで止めた。
「そう? それなら私の思い違いだね。すみませんねミカエル殿」
「いえ」
「それでは失礼します。祝いの言葉ありがとうございます」
ナセル様はまたしっかりと私の腰を抱きミカエルと別れた。
「ナセル様ってば、まさか根に持っているの?」
「当然です。一時的とはいえシャノンが好きだった男だろ?」
「まぁ、そうだけど……」
否定はしない。実際そうだったから。
「早くシャノンを迎えにいければ良かったんだけどね」
苦虫を噛み締めるような顔をして悔しいんだよ。と言った。
少し甘えるように、こてんとナセル様の胸元に頭を預けると、そのまま頭部にキスを落とされた。
「思いっきり幸せにするから」
って言われて嬉しくなった。ナセル様のこときっと好きなんだろうなって思った。誕生日会が終わったら私からもちゃんとナセル様に伝えよう。
好きって言ったら喜んでくれるかなぁ。そう思ったときだった。
「ナセル様ぁ! ここにいらしたんですね! 本日はナセル様自らご招待いただきありがとうございました!」
マリさんだった。




