王宮からの呼び出し
ナセル様とお話をしようと思っていたら王妃様から呼び出しがかかった。
それは誕生日の翌日のことで急だけど……と次の日に王宮へと向かう。両親も一緒だだった。
あの件があって以来王宮に行けなくなったから、両親と王宮に行くなんて何年ぶりだろう?
「王妃様からお話があるなんて、なんだろう?」
「シャノン、お前それ本気で言っているのか……?」
「シャノンちゃん……我が娘ながら残念な子ね」
「まぁいい。行けばわかるよ」
お父様とお母様が残念な子を見るような顔をした。
でも、分からないし、聞いても教えてくれない。
だから怖くなってきた。私何か呼び出されるようなことしたかな……
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そして王宮に着き、王妃様の元に行く。
「コレット侯爵家の皆さん、急に呼び出して悪かったわね。急ぎ、確認したいことがあったの」
そこには王妃様とナセル様がいらした。
「シャノン、まずは誕生日おめでとう。もう十六歳なんて早いわねえ」
「王妃様、ありがとう存じます」
「侯爵も良かったわね、愛娘が素直に育って羨ましいわ」
「ははは。妻に似て可愛くなりました。ありがとうございます」
謙遜してよ……王妃様の前で。恥ずかしいったらない! 下を向くしかない。
「うちのナセルがシャノンと婚約をしたがっているのは知っていると思うのだけど、もうみんな事実上、婚約したと思っているのよね」
「はあ……まあ、そのようですな」
お父様は言葉を濁していた。婚約はしてないけれど、誤解されたまま。だって、昨日の今日だし。
「シャノンに聞きます。ナセルのことをどう思っているのかしら?」
「母上! 母上がそんなことを聞くとシャノンは答えにくいでしょう。そこは私と話し合いますから失礼しますね! シャノン行こう」
「あ、はい」
ナセル様に連れ出されてしまった。止められなかったけど、いいのかな……
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「逃げられちゃったわね。まあいいでしょう。ナセルは来月誕生日なのよ」
「えぇ。存じておりますよ」
「そのときに発表していいかしら?」
「「そうなりますよね」」
「あの子のこと頼みすね」
「そろそろ屋敷の改修をそろそろ始めておきますよ」
「急がないと間に合わないわね、あなた」
「もちろん、私も私財から負担するわ」
「殿下を我が家に迎えるのだから、手が抜けなくなりますな」
そのあと、王妃と夫妻はああでもないこうでもないと話に花を咲かせた。
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「ナセル様、わたくしお誕生日おめでとうって意味だと思って、ありがとうございます。って言っちゃったの」
本当は違う意味のおめでとうだったのに、私のばか。
「そうだろうと思っていたよ。だから否定しなかったんだけどね、ごめん」
「知ってたの?」
「そりゃぁね。シャノンの誕生日で隣に私がいればそういうことだろうな。と思ってくれる貴族が大多数だよ。卑怯と思われても、これは外堀を埋める作戦なんだ」
「作戦なの?!」
「そうだよ。でも今日はちゃんと気持ちを伝えるよ」
跪くナセル様
「え!?」
そっと私の手を取り
「長くなると思うけど聞いてくれる?」
「はい」
「子供のころシャノンは王宮に来てくれて、一緒に勉強したり遊んだりしたよね?」
「はい」
「そのころからシャノンのことが好きだ。この子といつか結婚するとそのときから思っていた。あの事件があってシャノンに会えなくなったけどずっと気持ちは変わらないんだ」
「……え?」
「侯爵にシャノンと会いたいと何度も言ったけれどシャノンはあのとき、気持ちが不安定だから私たちの顔を見たら、またあの事件を思い出すんじゃないかと言われた。会いに行けないから手紙を送っていたんだ」
「そうだったんですか」
「うん。会えなくてもシャノンと繋がっていたくて。大した内容ではなかったけどね」
「わたくし知らなくて、そっけない内容を──」
「いいんだよ。ちゃんと返事を返してくれたし。シャノンが元気になるのを待っていた。ミカエル殿の存在も知っていたけど、シャノンがあの事件を忘れて幸せになれるのなら寂しいけどそれでいいと思ったりもした。でもバカなミカエル殿のおかげでチャンスが回ってきた。もう気持ちを抑える必要はなくなった。でもシャノンに気持ちを押し付けるのも違うと思っているのに今回はごめん」
「はい」
「それとマルガリータを許してくれてありがとう」
「それはわたくしが悪いのです」
首左右にを振るナセル様。
「八歳の少女が武器を持った相手に何ができると思う? 普通は体がすくんでなにも出来ないよ。シャノンはマルガリータを守ってくれた。自分も怖いのに……それなのにマルガリータがあんなバカなことを言って──」
「わたくしが不甲斐ないからです。マルガリータ様は悪くないです」
「シャノンは優しくて強い。そういうところが好きだ。私はあのときの震えるシャノンを見て強くなりたいと思った。シャノンに会えない間は勉強も武術もできる限りのことをした。私はただ一人の女の子を守りたい、それだけなんだ」
「ナセル様……」
「情けないだろう? チャンスが回るまで大人しく待っていたんだ」
「ありがとうございます。嬉しい、です」
「ん? なにが」
「わたくしはマルガリータ様になにが出来たかと、もっと違う方法があったのではないかと……足がすくんで逃げることも出来ずに、怖くてその場で抱きしめていただけなのに」
強くて優しいだなんて言われたことがないもの。そういうふうに思ってくれたことが正直に嬉しい。
「マルガリータを抱いたのはマルガリータに惨劇を見せないためだった、違う? それを咄嗟に出来たんだ、強いよシャノンは」
「……ありがとう、ございます。ナセル様……わたくしは腕に切り傷があります。それを気にして責任から結婚したいと言っているんじゃないですか……」
ぽろぽろと涙が溢れてきた。跡は残っていないけれど、ナセル様から望まれていると言われた時から気になっていたこと。
「そんなわけあるか! シャノンがただ好きなんだ。そんな誤解をしていたのか……ごめん」
ナセル様に抱きしめられて、声をあげて泣いた。あのときのことを考えて泣いたのはお母様の胸の中以来だった。
思いっきり泣いたらすっきりしたけど、ナセル様のシャツは私の涙でぐちゃぐちゃになった……
「……ごめんなさい」
「いいよ、シャツくらい。それにシャノンに胸を貸すのはこれから私だけだといいね」
頭をぽんぽんと撫でられ、ハンカチで目元を拭いてくれた。
頭をポリポリとかくナセル様。そういう仕草がマックスお兄様に似ていて少し笑った。
傷物になった私をナセル様と婚約させると言うのはあのときの事件があったから……って思ってしまうもの。箝口令が敷かれたとは言え知っている人はいるから。
「あのときのこと思い出さないようにしてたの。これで本当に前を向けそうな気がする」
ぐずっと鼻を啜ったらすかさず鼻をハンカチ越しにつままれた。
「来月の私の誕生日のパートナーはシャノンがいい。ダメ?」
「ダメじゃ、ない」
「え、本当? 嬉しいよ。シャノン! 私から母上に報告しておくから。そのあとはコレット侯爵に報告だ。忙しくなるな〜でも、嬉しい」
顔が真っ赤に染まる。勇気を出して言ったから。ナセル様がなにやら話をしていたけれど、緊張のあまり、少しも覚えていなかった。ついでにその後は熱も出て次の日は学園を休んだ。




