とある日のダンジョン配信
新連載です。
乗っ取られたダンジョンを修復していく主人公の物語になります。
多少、技術用語も出ます。
まずは第一話を読んでいただけると嬉しいです!
東京都新宿区に存在する、とある『初心者ダンジョン』。
そこで4人組の人気配信者パーティ『金獅子』が、配信用ドローン端末へ向けて配信を開始していた。
チャンネル登録者数150万人のトップ配信者グループの一つだ。
「やっほー!みんな!!『金獅子』のウェスターだ!今日は人気企画、“初心者用雑魚狩りダンジョン講座”をやってくぞー!」
配信用端末に表示された同時接続数が、みるみるうちに増えていく。
コメント欄も、一瞬で流れ始めた。
『キターーー!!』
『今日は新宿の初心者ダンジョンか』
『ウェスターニキ今日もイケメソ』
『でもここ有名すぎるダンジョンじゃね?』
『スパチャしました』
『ミライさんまだー?』
ウェスターは一度マイクをミュートに切り替え、背後のメンバーへ振り返る。
「おい、ミライ。打ち合わせ通り行くぞ。お前が剣でスライムを攻撃、その後に俺が雷属性魔法。マルスとミサは次の層まで待機だ」
「あーい。今日はいくら稼げんだろーねぇ」
ミライは気の抜けた返事をしながら、肩に担いでいた剣を軽く回した。
ウェスターは再びミュートを解除し、営業用の笑顔を浮かべる。
「それじゃあみんな!今日は“スライムの効率的な倒し方”を解説していくぞ!これから探索者を目指す人は、ぜひレベリングの参考にしてくれ!」
配信用ドローンの角度を調整しながら、ウェスターは通路奥にいる青色のスライムを指差した。
「まずは実演だ。ミライ!」
「はいはいっと」
ミライは剣を抜き、スライムへ駆け寄る。
そして──。
「はぁっ!......っと」
間の抜けた声で、ミライは剣で軽くスライムを撫でた。
スライムは「ギュイイッ!?」と情けない悲鳴を上げるものの、消滅はしない。
「このように、斬撃はスライムに通りにくい!だけど雷属性なら──!」
ウェスターが片手を突き出す。
「《ライトニング》」
放たれた雷撃は、スライムの真横を通り過ぎた。
──わざと外している。
「ギャアアアアアアッ!?」
それでもスライムは大袈裟な断末魔を上げ、全身から煙を吹き出しながら消滅した。
「見ただろ?このように初心者ダンジョンのスライムは雷属性に極端に弱い!しかも【当たり判定】が広いから、複数まとめて狩るのにも向いてるんだ!」
コメント欄が一気に流れる。
『へー、今度やってみるか』
『スライムざっこwwww』
『こんなん常識やろww』
『初心者講座助かる』
『スライム絶対殺すマンになるわ』
『次の層はよ』
ウェスターは苦笑しながら肩をすくめた。
「まぁここはチュートリアルみたいなダンジョンだからな。2層からはゴブリンの効率的な狩り方を見せていくぞ!」
『ゴブリンも雑魚で草』
『次もチュートリアルで草』
『いつからダンジョンはこんなヌルゲーになったんですかねぇ』
『風呂入ってくるわ』
『見どころは第8層かな』
「今日はそういう企画なんだって!楽しく雑魚敵を狩りながらレベリングしていこうぜ!ボスにも狙いやすい弱点があるから、最後まで見てくれよな!」
『おk』
『ミサさん映してー』
『マルス今日は喋らんの?』
『ボスもクソ雑魚なんだよなここ』
その時だった。
『──本当にそうか?』
不意に、コメント欄へ流れた一文。
「……は?」
ウェスターが眉をひそめた瞬間、配信画面に激しいノイズが走った。
ジジジジジッ──!!
「お、おい……?」
ドローン端末の映像が乱れ、ダンジョンの灯が明滅する。
直後、ダンジョンの空気が変わった。
まるで冷凍庫の中に放り込まれたような、凍える風が通路を吹き抜ける。
ウェスターとミライが顔をしかめる。
「……なに、これ」
そして、配信画面の中央に見慣れないロゴが浮かび上がった。
黒いノイズの中で赤く点滅する4文字。
その名はーー『ZSPY』。
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