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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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因縁の相手の気配

 神城家の一階応接室には帰ってきたレオの話を聞くため、杏那、理世、豪、廉が集まっている。


「レオ様、欠席している女生徒たちのご様子はいかがでございましたか?」

豪がレオに問いかける。


「どの令嬢も窓のない部屋に閉じ込められていた。ずっとうなされて眠っているか、訳の分からないことをずっと呟いていたり、何かに怯えていた。暴れるせいか縛り付けられている者までいた。そんな正気を失っている様子を外に漏らすわけにはいかないと家の者が隠しているのだろう。」

レオの報告に杏那の表情は強張っていく。杏那だけでなく皆が衝撃の報告に青ざめていると豪が確認する。

「それは単なる風邪や病気ではないということですね?」

「あぁ、そうだろう。一度にこの人数が揃いも揃って正気を失うなど、呪いか何者かによる魔術の影響だろう。」


「ではその呪いを解けば、皆さん元に戻れるのですよね!?」


レオは杏那の問いかけに頷く。

「しかし、時間がかかればあの令嬢たちはいずれ命を落とすだろう。仮に間に合っても元に戻るかどうか…それに呪いの根源を突き止める必要がある。呪いの根源を絶たなければ本当の意味での解決にはならないだろう。」

正気を失った状況が長く続けば、呪いが解けても後遺症やトラウマが残る可能性が考えられるのだった。


「レオ様、もしや呪いの根源に心当たりがおありですかな?」

「閉じ込められた令嬢たちから魔王の気配がした。考えたくはないが、魔王の封印が解かれた恐れがある。」


「魔王ですか?魔王とは、その昔、この国が興る前にこの地を支配していたという存在ですよね?」

「その通り。杏那、良く知っているね。もし本当に魔王なら必ず杏那のところに来るだろう。因縁の相手だからね。」


 この太陽の国、テイアグロスの興りの起源として伝わる話はこうだ。

―当時この地を支配していた魔王は自分勝手で残忍であり、自分の望みを叶えるためなら、手段を選ばなかった。中心地は魔王を崇拝する魔術師一族が牛耳り、全ては魔王の意のままに捧げられた。当然その影響で理不尽に命を落とす者も多かった。そんな状況を見かねた太陽の女神が魔王を討伐すべく神界からこの地に降り立ち、見事に魔王を倒した。そしてこの地に温かな生命の息吹を蘇らせ、太陽の国、テイアグロスが興った。以降、この国は太陽の女神の加護の元、平和と繁栄が続くこととなった。―


 国の起源を皆で振り返ったところでレオが話す。

「国の起源の話にはいくつか逸話が残されている。優しく温かい心を持つ太陽の女神はいつか魔王が分別を持ち改心すると信じて、その魂を消滅させず、浄化の石である水晶に封じた、と。」

「では魔王復活というのは無きにしも非ずということですな…。」

「今発現している影響は若い令嬢に限定的だ。魔王の復活というよりはその力を利用して何者かが呪いをかけていると考えるのが妥当だろうが、封じられた水晶というのもそう簡単に見つかるものではないだろう。思うに、少なくとも魔王の存在を知り、復活を企む者がいると考えた方が良いだろう。」


レオたちが話をしていると、メイドが部屋をノックする。

「お嬢様、お話中失礼いたします。神殿より急ぎの通達が届いております。」

豪が扉を開き、メイドから一通の封書を受け取った。杏那が中身を確認する。

「お呼び出しの封書ね。緊急の要件があるみたいだわ。」


 神殿からの通達は仮に中身が部外者に読まれても問題ないように詳細は書かれない。いつも簡単な挨拶文と神殿行事の打ち合わせとだけ記されている。その緊急の度合いは封筒の中のカードの色で意思疎通を図っているのだった。色の種類は四種類。


金:神殿で問題発生。至急来たれよ。

赤:重要な神占結果あり、または急ぎの共有事項あり。手が空き次第、至急来たれよ。

緑:共有事項あり。次の週末に来たれよ。

青:怪しい動きなし。次回定例会にて定期報告のこと。


「カードは赤ね。皆、今から神殿に行けるかしら?」

杏那の呼びかけに皆迅速に支度を整え、神殿に向かった。


 神殿に到着すると、神殿の中で二番目に偉い神官で杏那の叔父に当たる周一の出迎えで秘密の応接室に通される。

「皆様、本日は急ぎお越しくださり感謝いたします。」

周一が丁寧に挨拶をする。

「叔父様、早速ですが本題に入りましょう。おそらく私たちが案じているのと同じ議題だと思いますので。」


「では早速、実は神占に魔王の兆しが現れたのです。もうここ数百年以上現れたことのない結果で、僕自身も信じられず神官長にも神占を導いていただいたのですが、やはり同じように魔王の兆しが現れました。それで急ぎ皆様と共有させていただくことにしたのです。」

「やはりその件でしたのね。実は学園で女生徒の欠席が増加しており、本日レオ様が休んでいる令嬢たちの様子を内々に見に行ってくださったのです。そこで魔王の気配を感じられたと…。」

「レオ様、そうだったのですか。」

「神占にも出たとなると、魔王の力が一部でも解かれたことは間違いないな。」


杏那たちは神殿に来る前に話していたことを周一とも共有する。

そして今後の動きを確認するのだった。

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