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千年の恋の物語~運命の二人~  作者: 宝槻錬果
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回収した仕掛け

 観月祭後、水宮家本家。龍也は蔵にいた。蔵は母屋から少し離れた敷地内にあり、水宮家の限られた者だけが出入りできるようになっている。蔵の中には数々の危険な術具が保管されているため、蔵を作った先祖が扉に術をかけたのだった。“水宮の血を引き、術具を使いこなせる霊力ある者”のみが開けられるように。数百年も前にかけられた術であるが、いまだに有効に機能している。そして蔵の中は少しひんやりとして薄暗い。術具を刺激しないよう環境が保たれているのだ。扉の制限が維持されているのも蔵の環境が保たれているのも水宮家の守護神の力だと言われている。


 棚には観月祭の時、弟子たちが森に設置した犬、鳥、蛇の形をした片手に収まるほどのサイズの置物が等間隔で並んでいる。これらも単なる置物ではなく、形代である。犬と蛇は昔、水宮家の先祖が捕えて形代に封じたものである。戦闘力がそれなりに高い妖怪のため、今回の一件では万が一、森神が暴走し神殿に向かって、さらにその場を収める不思議な力が現れなかった場合は、その二体を使役して神殿への侵入は阻止できるようにと予め配備したのだった。一方、鷲は龍也が妖術で作り出し、形代に封じることで必要な時に容易に発動できるようにしたものである。鷲の戦闘能力は高くはないが、人為的に作られたものだけあって有益な機能が備えられている。その機能というのが映像記憶である。龍也は鷲が見た光景を術によって覗き見ることができるのである。


 龍也は鷲の形代を手に取ると、蔵の二階に作られている術部屋へと向かった。術部屋の中央には正方形の机があり、その上には円形の魔法陣が描かれた黒い布が掛けられている。龍也は鷲の形代を魔法陣の中央に置く。更に魔法陣を囲む六か所に香炉を置いて香を焚く。鷲の形代の上を覆う形でお香の煙が広がったのを確認すると、龍也は意識共有の札を指に挟み呪文を唱える。


「我ここに命ず。深くに眠りし者よ、呼びかけるは汝の主。主の声に応えよ。汝の視界をここに示せ。」


すると鷲が見たであろう光景がお香の煙の上に浮かび上がる。龍也はその光景に目を凝らす。景色は鷲が形代から抜け出し、森神のところに向かうときの光景から始まる。鬱蒼とした森の中の景色が少し続いた後、呼び起された森神が邪気を纏って周囲の木々や草花を枯らしている光景に変わった。写し出される光景は森神の邪気でほとんど黒い靄がかかっているように見える。するとそこへ一筋の光が差し込んだ。


龍也は光の正体を探ろうと必死に目を凝らす。しかし鷲の前にいる森神の邪気が邪魔をしてその奥に差し込んだ光の正体が遮られている。龍也はなんとか手がかりだけでも、と顔を近づけて目を凝らす。


森神が光の方を振り返った一瞬、邪気の隙間からかろうじて髪の長い少女のような姿を確認する。すると次の瞬間、映像は砂嵐のようになった。実際には杏那が発現させた光と風の盾なのだが、映像で見ると砂嵐のように見えたのだ。そして映像の中で砂嵐が消えたと思うとすぐに視界は暗くなり、再び森の木々をかき分けるような映像に変わった。映像は終了し、形代の上に集まっていたお香の煙も方々に霧散した。


龍也は映像を見終わると、椅子に腰かけ腕を組み、映像を思い出しながら思考を巡らせた。


(光の正体はあの少女ということか。そしてあの少女があの場を収めた。おそらくは砂嵐が起こる中で森神を浄化したか、あるいは封印して邪気を消したと考えるのが妥当だろう。あの短時間で森神を鎮められたのなら、相当の使い手か強い力を持っているということだろう。興味本位で追い始めたが、もしかしたら一族の救いにもなるかもしれない。これは真剣に調べる必要があるな…。しかし浄化をできる少女がいたとして、あんな速さで移動できるわけがない。最新鋭の飛行機でも無理だし、飛行機ならあんな鬱蒼とした森の中には降りられない。移動の速さや状況からしても、とても人間だけの力とは考え難い。術の世界でも瞬間移動に成功したというような記録は一切ない。となると、残るは神の領域だ。神の領域、神の領域…。)


龍也は考えながら両肘を机について顔の前で手を組み、眉間に当てた。それからしばらく考え込んでふと顔を上げると一つの掛け軸が目に入った。術部屋にかけられているその掛け軸には、水宮家の守護神とされる生き物が描かれている。


その生き物とは龍である。


(そうか、この家が龍神と繋がりがあるように、神域のものと繋がりを持つ家が他にあってもおかしくはない。ただ、そういった類の話はどの家もあまり公にはしないし、表向きには昔からの言い伝えということで片づけているケースも多いだろう。しかし、どの家だ?どうやって目星をつければ良いのか…。)

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